- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784783510673
感想・レビュー・書評
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ローレンス・ヴァン・デル・ポストの文学作品。第二次大戦中のジャワ島、日本軍の捕虜収容所を舞台にした作品。
三部による構成である。
第一部「影さす牢格子」は、捕虜収容所で横暴な権力を行使した“独裁者”ハラ軍曹に関する奇妙な共感とクリスマスの思い出。
第二部「種子と蒔く者」は美形の青年将校セリエによる告白体の手記。畸形の弟に対する裏切りの意識、日本軍青年将校ヨノイとのホモセクシュアルな交感を軸にしたストーリーである。
第三部「剣と人形」は、日本軍の侵攻前夜のオランダ植民地ジャワ島での、連合軍将校と植民者の女性のつかのまの恋を描いているが、ジャワの自然と宇宙のリズムが強く印象に残る。
大島渚監督が映画化したことで知られる文学作品である。だが、第二次大戦の戦火、敗走、崩壊を借景に翻弄される男女の運命を描く物語に、アンソニー・ミンゲラ監督の映画に通じるものを感じた。
ジャワの自然の律動、南アフリカの大地…。プリミティブな手触り、そして形而上学的思索を内包した、豊穣な作品である。
思索社版(絶版)、1101読了。 -
戦場のメリークリスマス原作。筆者はユングと交流があり本作の影なす牢格子は日本人の半神話的姿を描き出し面白い。第2部は神秘的な弟の物語から映画ではデヴィッドボウイ扮する将校の死にまつわる話。第3部は女の生命に関する思想だがあまり面白くない。映画の元ネタは第1部と第2部だが納得。いきなり神話的スケールになるのが魅力的。