影の獄にて (ポスト選集 1)

  • 新思索社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783510673

感想・レビュー・書評

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  • 恥ずかしくも、戦場のメリークリスマスを今まで見たことがなく、坂本龍一のCDだけ持っていた。

    こちらが戦場のメリークリスマス原作本という事も知らずに、ある方が紹介されていたのを聞いて、図書館の閉架図書で見つけた。

    ローレンス・ヴァン・デル・ポストの実体験を基に描かれている。

    映画について調べていたら、今年5月〜4K修復版で上映されているとか。時間がなく劇場には行けなかったのだが、観ることができた。 原作と話が異なるのだが、デヴィット・ボウイの美しさに心惹かれ、ビートたけしが「メリークリスマス!ミスターロレンス」と超ドアップで終わる。

    映画とは違い、本作は話が少し違うのだが、細かな表現や描写が美しく訳され、光景が目に浮かぶようだ。
    原作では1章ではハラの粗暴ぶりに日本の精神的な背景があるとし、ハラのことが中心に書かれ、2章は容姿端麗で完璧なセリアズに対して、自然界に溶け込むことのできる不思議な弟とのやりとりとそんな弟への後悔の念が書かれている。
    日本軍に対して、セリアらしい闘いゆえに壮絶な最期を迎える。

    弟とセリア、そして日本人将校ヨノイの不思議な関係。
    ヨノイはセリアによって救われ、人としての心を取り戻してヨノイもまた死んでいく。

  • ローレンス・ヴァン・デル・ポストの文学作品。第二次大戦中のジャワ島、日本軍の捕虜収容所を舞台にした作品。

     三部による構成である。
     第一部「影さす牢格子」は、捕虜収容所で横暴な権力を行使した“独裁者”ハラ軍曹に関する奇妙な共感とクリスマスの思い出。
     第二部「種子と蒔く者」は美形の青年将校セリエによる告白体の手記。畸形の弟に対する裏切りの意識、日本軍青年将校ヨノイとのホモセクシュアルな交感を軸にしたストーリーである。
     第三部「剣と人形」は、日本軍の侵攻前夜のオランダ植民地ジャワ島での、連合軍将校と植民者の女性のつかのまの恋を描いているが、ジャワの自然と宇宙のリズムが強く印象に残る。

     大島渚監督が映画化したことで知られる文学作品である。だが、第二次大戦の戦火、敗走、崩壊を借景に翻弄される男女の運命を描く物語に、アンソニー・ミンゲラ監督の映画に通じるものを感じた。
     ジャワの自然の律動、南アフリカの大地…。プリミティブな手触り、そして形而上学的思索を内包した、豊穣な作品である。

    思索社版(絶版)、1101読了。

  • 戦場のメリークリスマス原作。筆者はユングと交流があり本作の影なす牢格子は日本人の半神話的姿を描き出し面白い。第2部は神秘的な弟の物語から映画ではデヴィッドボウイ扮する将校の死にまつわる話。第3部は女の生命に関する思想だがあまり面白くない。映画の元ネタは第1部と第2部だが納得。いきなり神話的スケールになるのが魅力的。

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