黒田三郎詩集 (現代詩文庫 第 1期6)

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  • 思潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783707059

感想・レビュー・書評

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  • 最近、気分的に小説を読むのがおっくうになってしまって、詩を読んでいます。
    随分、昔になりますが、(私が中学生の頃だと思います)岩波ジュニア新書『詩のこころを読む』、(これは変色していますが、ブックオフにいかないで、まだ家にある一番古い本の一冊です)で知った黒田三郎さんの「夕方の三十分」が入っている詩集『小さなユリと』がもう一度読みたくなって、再購入しました。(この詩文庫も昔おこづかいをはたいて、買ったけどなくしました)

    前置きが長くなりましたが、すごく懐かしく全部読みましたが、やっぱり一番よかったのは、「夕方の三十分」。
    ユリちゃん以外の詩ははっきり言って、私にはかなりむずかしかったです。
    黒田さんは、かなりお酒が好きなお父さんだったようですが、ユリちゃんはやっぱりすごく幸せでしたよね。

  • 「路傍の乞食が/私は乞食ですと/いまさら声を張り上げているような/みじめな世界」友人が中原中也や坂口安吾と並べて紹介していたのを受けて手に取ったのだが、本当に素晴らしい言葉の数々だった。戦後の日常にしっかりと足を付けていながら、それでも心が真っ直ぐに立てそうもない不器用さ。高尚さや美麗さなどは嘘臭いと背を向けて、己の弱さを一心に暴き続ける事で存在そのものの輝きを剥き出しにする。それは瞬きの輝きだから美しい。寄る辺なき者たち、帰る場所を亡くした者たちが集うことのできる、そんな言葉がここにある。君もおいで。

  • 冬をまく否マフラーをまきつけるきみに黒田三郎詩集を ――正岡豊

    黒田三郎の詩と評論を収めた一冊。
    生活の中での失望と希望、社会の中での不信と反骨。何物も信用しないという頑なさの中で、しかし、では本当に確かなものは何なのか、と不器用に問い続ける著者の後ろ姿が見えるようだ。
    失望に失望を重ねても、生活は続いて行くということ……私は<私>から逃れられず、明日もまた<私>として生きていくしかないということ。

    詩人としてのイメージしかなかったため、評論もとても素晴らしいことに驚き、かつ嬉しくなった。

    『「ことばへの不信」それはたれをも信用しないということであった。「ことばだけでは信用できない。目の前に一杯の御飯が出なければ」というさもしい根性であった。美しい風景さえ、そのときは美しくなかった。「ことばへの不信」などという評論をことばでかくという矛盾にさえ僕は気がつかなかった』

  • この本を知ったきっかけは新聞で友部正人さんが紹介していてから、
    それから気になる本のひとつだった。
    今日、手にした。
    言葉がいとしい。
    いとしい言葉の数々、ああ・・・

  • 「ああ/ここにこうして/僕は/かつて血を流した野を/友を/敵を/憎悪を/恐怖を/どこへやったのか/血にまみれたあらゆるものを」
    日々の生活を描きながら、黒田さんの視る景色はまるで特別性を孕んでいる。

  • 「道はどこへでも通じている 美しい伯母様の家へゆく道 海へゆく道 刑務所へゆく道 どこへも通じていない道なんてあるだろうか/それなのに いつも道は僕の部屋から僕の部屋に通じているだけなのである 群衆の中を歩きつかれて 少年は帰ってくる」(道)

    「ああ あんなにも他愛なく/僕自身によってさえやすやすと/欺されてしまったのに/僕には/僕を欺すことさえ出来ない/なんて」(ああ)

  • 1冊目は、「荒地」を代表する詩人のひとりである黒田三郎の詩集を紹介します。「荒地」は戦後の日本の現代詩の起点になった雑誌で……というのは、頭には入っていますが、詩史に詳しいわけでもなく、やめておきます。
     荒地の同人たちは、皆が戦後にふさわしい詩を作ろうという意気込みを持っていたようですが、それぞれの詩人の個性は、全く違うものでした。
     現代詩といえば、難解なイメージを持つ方が大半だと思いますが、この黒田三郎の場合は、平易な言葉で書かれていて、難解なイメージはありません。また、現代詩は、現実生活から遊離しているというような感想を持つ方もいるかもしれませんが、彼の詩は、現実に深く根ざしています。過剰なくらいに。
     詩集「ひとりの女に」は、恋愛詩の傑作ですし、自分の子供との生活を描いた「小さなユリと」も、どこか哀しくも暖かいものを感じる素晴らしい詩集です。
     一作だけ引用してみましょう。
    「僕はまるでちがって」(「ひとりの女に」より)
    僕はまるでちがってしまったのだ
    なるほど僕は昨日と同じネクタイをして
    昨日と同じように貧乏で
    昨日と同じように何にも取柄がない
    それでも僕はまるでちがってしまったのだ
    なるほど僕は昨日と同じ服を着て
    昨日と同じように飲んだくれで
    昨日と同じように不器用にこの世に生きている
    それでも僕はまるでちがってしまったのだ
    ああ
    薄笑いやニヤニヤ笑い
    口をゆがめた笑いや馬鹿笑いの中で
    僕はじっと眼をつぶる
    すると
    僕のなかを明日のほうへとぶ
    白い美しい蝶がいるのだ

     彼の代表作でもある、美しい恋愛詩ですが、その背後には、とんでもない虚無感が広がっているように感じられるのです。彼の詩は、そういった虚無感を背景にしながら、庶民的な日常を送る一人の男の哀しさや美しさを描いていて、まさにそこが、僕が好きなところでもあります。「夕暮れの町で 僕は見る 自分の場所からはみ出してしまった 多くのひとびとを」で始まる詩に出会ったとき、まさにこれは自分のための詩だと思ったものです。

  • 小学校低学年の時この本に載っている詩を教科書で読んだ。
    何十年経ってもフレーズが忘れられず、探し出した。
    美しい、懐かしい、哀しい風景が、夏の陽炎のように心にずっと残る本。

  • 「時代の囚人」「ひとりの女に」等の詩集を所収してあります。手記とか年譜がないと読み解きはできない部分もあるかも。

  • 高校時代の授業を通して出会った詩集。思い出深い本です。

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