樹のうえで猫がみている

著者 :
  • 思潮社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783731719

感想・レビュー・書評

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  • 素敵なタイトルの本だと思い手にとって、
    表紙を見て買ったこの本を、
    開いたのは10年以上経ってからだった。

    驚いた。ほとんど詩を読んでこなかったもので、
    読み方が分からないなぁと思いながら
    なんとなく読み進めるしか出来なかった。

    途中「水漏れ」という詩に、とても共感した。
    最後の2行に、たまに感じるわだかまりのある気持ちを
    見事に言い表しているような気がした。

    著者は、好きな男と、娘たちと、猫たちと、
    日常を感じながら生活しているように思う。
    ひとときよぎった感情も、
    何年も生きてきた中で感じた感情も、
    日常を通した言葉として現れているようだった。

    著者の「性悪猫」という本を見つけたら、
    次はそれを読んでみたい。

  • 何気ない日常を描いている作品も多いなか、ときどき声にならない叫びが混じってる。
    私にはちょっと女性性が強すぎるように思ったところもあったけれど、愛を欲しがるその叫びは忘れられないのも確か。

  • 詩歌

  • 詩集の頁を繰っていると言葉に強く惹かれて書き写したくなる詩に巡り合う。しかしどうしたことか、ここには自分の身体をそういう行為に突き動かす気持ちにさせてくれる詩がない。もどかしさが、ひたひたと満ちてくる。

    「ああわかる」という気持ちと「ああ理解できる」という気持ちの間にある境界線を越えられない、といえばよいだろうか。ここに並んだ言葉には、前者の共鳴のような響きを呼び起こす作用が、自分には働かないのだ。一方で、後者の論理性に流れゆく切っ掛けを含む言葉はいくつもある。それはそれで楽しいのではあるけれど、何か取り残されてしまったような心持がしてしまうのだ。

    それは一つには、この言葉たちが一人の女性の身体と分かち難く結びついてしまっているためであると思う。詩の言葉には、たとえそれば多分に女性性に根付くものであると感じさせるものであっても、ジェンダーの境を越えて脳内に侵入してくるようなところがあるように思う。しかしここにある言葉たちは、身体同士の符丁のやり取りを要求し、その合言葉が不一致であると見るや言葉の裏側にあるものを脳の中に届く前に自ら破棄してしまうような機能がある。言うならば、この詩の言葉たちは余りにも読者に女性であることを要求しているように思う。

    もちろん、その破壊行為を経た残滓のようなものから元の姿を想像する位のことは男である読者にも許されてはいるけれど、それは余りにも左脳に頼った読み方であるように思う。

    そうしてもう一つ、あるいはそれは今書いたことを言い換えているに過ぎないようにも思うけれど、この言葉のかたまりにはいずれも見えない跳躍があって、その着地点にこの言葉を成した人の比較的無垢の感情が置かれているということに対する、オートマティックな警戒心の為でもある。

    日常の中に生きることの喜びを見い出す才能を著者が持っていることは、佐野洋子が指摘しているように疑いようもなく、その探り出す過程、視線の動きには大いに感じるところがあるのだけれど、その言葉の着地点と自分の気持ちの置きどころは中々重ならない。もちろん、ぴたっと重なる読者もいることは理解できるし、重なる人にはブレーキを掛ける心理が働かないどころか共鳴を生むだろうことも想像できるけれど。警戒しながら、その言葉に沿っていくような気持ちに自分はどうしてもなってしまう。

    逝ってしまった時を、場所を、人を思う、そんな気持にも似た感情だけは確かに伝わってくるのだが、それをどうすればよいのか持て余す。目の前で理由もなく鳴き続ける猫をみるような気持ち。

    追)佐野洋子さん、今頃、やれやれと仰っているのでしょうか。ご冥福をお祈り致します。

  • 図書館に入るのを待ち。

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著者プロフィール

漫画家・エッセイスト・詩人。
東京都世田谷区に生まれる。1969年『COM』5月号にてデビュー。
『com』廃刊後は『ガロ』にその後は発表の場を移す。
結婚育児による休筆ののち1978年に復帰。作品の数々は、女性漫画と称され、その後の女性たちに大きな影響を与えた。
漫画、詩、エッセイの多方面で活躍。『しんきらり』『性悪猫』『ゆらりうす色』『空に落ちる』『しあわせつぶて』
『樹のうえで猫が見ている』『愛のかたち』ほか作品多数。2009年5月没。

「2021年 『ねこのふしぎ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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