ひとりは大切 (新島襄を語る 2)

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  • 思文閣出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784784212798

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  • タイトルの「ひとりは大切」は、「諸君よ、人ひとりは大切なり。ひとりは大切なり」のメッセーじから。これは、新島襄が、同志社創立10周年記念式辞で、創立以来の10年間で取り上げたいこととして、退学処分にあった7人の学生について語ったときの言葉である。新島は、一国の近代化は個人の改良が出発点と考え、「各人の改良より、社会の改良、政府の改良に及ぶ」と、ひとりの重みを教育の中で重要視している。この姿勢は、福沢諭吉と大きく異なる点である(是非は別として)。福沢は、新島のような「戸毎に説き、人毎に諭す」ようなやり方は、いたって迂遠な方法と公言し、大勢を相手に制度や組織に頼んでひとからげに、あるいは機械的に社会を改造しようとするのである。

    この巻は、このような新島のひとり一人を大切にする教育姿勢について取り上げた講演録が中心となっている。印象に残った個所は次のとおり。
    ・知育は利己主義者を生みやすい。だから、キリスト教に基づく「知徳並行教育」が必要である(西洋の諺「神なき教育は悪魔を作る」)。
    ・同志社の不変のモットーは、第一に学校の礎石としてのキリスト、第二に優れた資質を備えた教師陣、そして図書と教育機器の充実。
    ・教員の心得と為すべき所は、自身生徒の率先者となり、生徒の標準となり、生徒の志操を高尚ならしめ、又生徒の気質に従い、幾分か教するところを異にし、生徒をして智進み、徳高からしめは、教員の任は大に至りせりと云うべきなり。
    ・私がもう一度教えることがあれば、クラスの中で最もできない学生にとくに注意を払うつもりだ。それができれば、私は教師として成功すると確信する。
    ・同志社は隆なるに従い機械的に流るるの恐れあり。切にこれを戒慎するべき事。
    ・教職員は生徒を鄭重に取り扱うこと。

    以上のほかに「同志社に来たVIPたち」の章で、伊藤博文、井上馨、大隈重信、森有礼、元田永孚などの紹介もあり、幕末史好きも楽しめると思う。

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著者プロフィール

同志社大学神学部元教授(1942年生)。神学博士。
専攻は日本プロテスタント史、とくに新島襄ならびに同志社史。『新島襄と徳富蘇峰』(晃洋書房,2002年),『新島襄の交遊』(思文閣出版,2005年),『新島襄と建学精神』(同志社大学出版部,2005年),同志社編『新島襄の手紙』(共編,岩波文庫,2005年)などを出版したほか、「新島襄を語るシリーズ」を刊行中。

「2016年 『自己発見のピルグリム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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