古代太上天皇の研究

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  • 思文閣出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784784218875

作品紹介・あらすじ

太上天皇とは、譲位した天皇のことである。太上天皇の存在は「大宝律令」に規定されたことに始まり、奈良・平安時代以降多くの天皇が譲位し、太上天皇となった。王位継承が譲位によって行われ、また前君主の地位が国家の基本法に規定されたことは、世界的にも類例は少ない。
 本書は、奈良時代から平安時代にかけての太上天皇を考察の対象として、律令法上の規定、『六国史』などの史書に見える実態や、上表文などに見る天皇や臣下との関係を分析。太上天皇の成立背景・存在意義から、譲位後の天皇や臣下との関係に迫り、太上天皇の地位の歴史的変遷を解明するとともに、太上天皇が、皇位継承や天皇の正当性の問題に深く関わる様相を明らかにした。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、奈良時代から平安時代にかけての太上天皇を考察の対象として、律令法上の規定、『六国史』など史書に見える実態や、上表分などに見る天皇や臣下との関係を分析し、太上天皇の成立背景、存在意義から、譲位後の天皇や臣下との関係に迫り、太上天皇の地位の歴史的変遷を解明するとともに、太上天皇が、皇位継承や天皇の正当性の問題に深く関わる様相を明らかにしている。
    本書によると、当初の太上天皇の存在意義は、草壁皇統への確実な皇位継承を期するため、存命中に皇位を継承予定者に伝え、その後は皇位を伝えたことをもとに、在位中の天皇の正当性を保証し、また前天皇として新天皇を後見することであったという。そして、草壁皇統が絶え、平安時代に入ると、当初の太上天皇の存在意義は失われ、太上天皇の性質が変容していったことが論じられる。
    日本史において太上天皇、すなわち上皇というと、どうしても院政が思い起こされるところであるが、本書は、院政に至るまでの太上天皇の在り方に着目し、太上天皇という存在の起源や意義、古代における太上天皇の実態、性質の変遷等を明らかにしており、天皇制度を理解し、考える上で重要な材料を提供しているといえる。

  •  第三部 平安時代の太上天皇

    第七章 平安時代初期の太上天皇
    はじめに                           
    第一節 延暦の太上天皇 
    (一)桓武天皇期の転換点
    (二)延暦二十四年の内侍宣      
    第二節 平城太上天皇  
    (一)平城天皇の譲位
    (二)平城太上天皇宮の機構      
    (三)その後の平城太上天皇      
    第三節 譲り合う天皇・太上天皇 
    (一)嵯峨天皇の譲位
    (二)太上天皇と上表     
    (三)天皇・太上天皇間の上表 
    おわりに                           
     
    第八章 清和太上天皇期の王権構造
    はじめに
    第一節 太上天皇と摂政 
    (一)藤原基経の摂政辞表
    (二)藤原基経の左近衛大将辞表
    (三)藤原基経の太政大臣任官
    第二節 太上天皇と天皇 
    (一)清和太上天皇と陽成天皇間の上表
    (二)太上天皇の礼制的待遇  
    第三節 宇多太上天皇の場合 
    (一)清和太上天皇と宇多太上天皇との相違点
    (二)太上天皇の意思伝達  
    おわりに

    補論 古代日本における公卿上表と皇位
    はじめに                           
    第一節 「上表」とは 
    (一)「表」の字義
    (二)日本令の上表規定  
    (三)太政官の関与――『令集解』諸説の検討  
    第二節 日本における上表の事例                
    第三節 公卿上表と皇位継承
    (一)皇太子の地位確認の上表        
    (二)祥瑞出現に際しての上表――改元をめぐる天皇と臣下
    (三)即位・立太子請願の上表
    おわりに                      

    終章 本書の成果と展望  

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著者プロフィール

1972年青森市生。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了、同博士後期課程単位取得退学。博士(文学)(東北大学)。東北大学大学院文学研究科助手・助教、東北大学百年史編纂室教育研究支援者などを経て、現在、花園大学文学部日本史学科准教授。

「2017年 『古代太上天皇の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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