犯罪の世間学: なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか (青弓社ライブラリー 86)

著者 :
  • 青弓社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787233943

作品紹介・あらすじ

日本独特の秩序で法のルール以前に私たちを縛る「世間」が、その排他性を強めて犯罪を生み出している。1990年代以降の犯罪の厳罰化、2000年代以降の殺害事件や脅迫事件を「世間」の視点から読み解き、息苦しさや閉塞感が増す日本の「空気」に迫る時代診断の書。

感想・レビュー・書評

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  • 何か事件や不祥事が起こるたびに、関係のない家族のもとに押しかけるメディアや、会見を開いて姿の見えない「世間」に謝罪する人たちに並々ならぬ違和感を抱いていた。また、この国には個人も社会もないという本書のメッセージの一つは、私が海外で痛感したことの一つでもある。
    最近考えていたことが言語化されていて良かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/784215

  • 社会
    犯罪

  • 世間の目が悪い、ということですか。分かるような気もするし、そんなの今に始まったことじゃないよねとも思う。

  • かの大震災で世界から賞賛された略奪の起きない平和な日本は「世間」による犯罪抑止力により成し遂げられた。そのように、本書はいう。
    「世間」とは何かを示し(1)時間の共有(2)互酬関係(3)身分制(4)呪術性、これらを改めおさらいするとともに、そこに現れる犯罪とその犯罪者に対する罪と罰を独特の「ケガレ」と「ゆるし」の概念で説明する。また、この「世間」の圧力には裁判所ですら独立性を保てることはなく、「世間」の論理に従った、「ゆるし」の発動や、厳罰化などの対応をしてしまう。
    さらには、異常なパッシングや、一見無関係と思える有名人の行為にすら強い共感あるいは嫌悪を覚える理由として「世間」における共感過剰シンドロームをあげて、詳細に解き明かしていく。
    最後に、複数の「異常」と思われる事件を取り上げ、その発生のメカニズムを「世間」、あるいは所属意識に根をもつことを喝破する。
    他方、この本に示唆されるように、日本におけるコミュニティあるいは共同体を形成するためには欠かせない要素がみえてくる。それは、ある種の息苦しさとして近代以降日本人が捨てたと思ってきたものである、(1)密接な共同体参加者同士の付き合い(集まり、イベントなど)(2)GIVE&TAKEの貸借管理(寄付やボランティア活動など)(3)メンバーによるランク付け(共同体メンバーとしての承認・受容)(4)そして、秘密の共有(共同体内の暗黙ルールの共有など)である。また、共同体には落ちこぼれを出さない、しかし、ルールを破ったのもを排除する共同体の存続のための絶対ルールが存在するのも忘れてはいけない。

  • 世間という権力によって犯罪が抑止され,その反面で世間という秩序を乱す「抗空気罪」の存在が,耐えられなくなった人間の犯罪を誘発する。そんな日本社会の構造を形法学者が論じた本。
    学問的には微妙な気もするけど,当たってる面はありそう。
    でも途中いささか冷静さを欠いていて,厳しく天皇制を批判してみたり「九条俳句掲載拒否事件」について論難したりしているのは,説得力を減らしているような気がしてちょっと残念だった。

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著者プロフィール

日本医科大学循環器内科教授

「2018年 『高血圧の毎日ごはん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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