グローバルな物語の時代と歴史表象: 『PACHINKO パチンコ』が紡ぐ植民地主義の記憶
- 青弓社 (2024年2月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784787235329
作品紹介・あらすじ
在米コリアンのミン・ジン・リーの小説『パチンコ』とそれを原作にした「Apple TV+」のオリジナルドラマシリーズ『PACHINKO パチンコ』は、海外で大きな反響を巻き起こし、ドラマは第2シーズンが2024年に公開を予定している。
本書は、『パチンコ』が描く1910年代から80年代までの在日コリアン家族の波乱に満ちた人生を読み解くことで、戦前から戦後までの日本の風景、在日コリアンの苦難や差別、物語に通底する植民地主義の暴力性や記憶を掘り起こす。
また、『パチンコ』の歴史表象や在日表象から、日韓の歴史認識問題、歴史修正主義の台頭、グローバルなメディア市場で歴史が物語として流通するポリティクスを検証する。
表象にとどまらず、生産・消費・規制・アイデンティティという5つの文化の回路からドラマ『パチンコ』を精緻に分析して、東アジアでの歴史対話とコミュニケーションの新たな可能性を指し示す。
【目次】
序章 グローバルな物語としての『パチンコ』――小説からドラマへ 玄武岩
第1部 国際シンポジウムの記録
第1章 『パチンコ』と在日コリアンの「社会資本」――歴史とフィクションのはざま(基調講演) テッサ・モーリス=スズキ
第2章 座談会 ドラマ『パチンコ』から考えるグローバル・メディア時代の記憶と忘却
テッサ・モーリス=スズキ/鄭炳浩/姜信子/金敬黙
コラム1 『パチンコ』第1シーズンの歴史考証の諮問団に参加して 李成市
コラム2 複数の声が集まる現場から 伊地知紀子
コラム3 私が『PACHINKO パチンコ』を制作したくなかった理由 スー・ヒュー
第2部 『パチンコ』を読み解く
第3章 ドラマ『PACHINKO パチンコ』の「在日」表象を可能にしたもの ハン・トンヒョン
第4章 植民地時代を描くことの難しさ――創作者の立場から 深沢 潮
第5章 ドラマ『PACHINKO パチンコ』が映し出す世界と「Zainichi」の生――猪飼野の路地からみえる「世界」 伊地知紀子
第6章 二つの『パチンコ』の歴史の語り方――登場人物と警察の関係に注目して 宮地忠彦
第7章 描かれた朝鮮人虐殺と描かれていないこと 小薗崇明
コラム4 コ・ハンスはどのように済州島から日本へ渡ったのだろうか 髙鮮徽
コラム5 徳寿丸で自決したソプラノ歌手と尹心悳 武藤 優
コラム6 朝鮮人社会とキリスト教、そしてパチンコ玉の人生 藤野陽平
第3部 『パチンコ』と歴史表象のポリティクス
第8章 世界は『パチンコ』をどう観たか――三言語・アジア・移民の物語 李美淑
第9章 なぜ日本では『パチンコ』がはやらなかったのか 倉橋耕平
第10章 『パチンコ』とOTTナラティブのリアリティー――受容者資源論との接点
イム・ジョンス
第11章 歴史のグローバルな占有を超えて――ラムザイヤー論文と『パチンコ』の距離
趙慶喜
コラム7 記憶のグローバル化とドラマ『PACHINKO パチンコ』 松井理恵
コラム8 小説『パチンコ』と対照的な、マーク・ラムザイヤーの在日コリアン論文の語り 宮地忠彦
あとがき 玄武岩