本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788781245
感想・レビュー・書評
-
1970年代のことだが、マラッカ半島に水爆で発破をして運河を掘る計画があったそうな。アメリカ、そして日本が主導していた計画である。もちろん、そんな無茶な計画は実現しなかった(水爆を使うという無茶は置くとして、いくらマラッカ海峡が混雑するとは言え稼げる距離が短くてペイしないのだろう。ただ今では中国まででてきて運河計画は完全に死んでないみたい)わけだが、この本はその計画に触発されて、過去より東西の十字路として翻弄されてきたマラッカ海峡の歴史を語ろうというもの。
あまり古代の歴史記録が充実していないインドシナではあるが、資料を丹念にあたって通史的に説かれている。しかし歴史書と言うよりは、タイトルにあるとおり「物語」として細かいことは気にせずに読むべきスタイルという気がする。1980年当時の左翼テイストは気になるが、時間を置いてそれを眺めるのも一興。
・マラッカには海洋交易文化と内陸水田耕作文化が2層をなしていると。前者は原住マレー人、後者は後から来たインド系で支配層の文化になっていたと著者は見ている。
・マレー半島には耕作可能な地域が少なく人口はまばらだった。そのため、商人や錫鉱山、ゴム農園の労働者としてやってきた中国人、インド人が人口の大きな割合を占めるようになり、モザイク国家マレーシアの原型となった。一方、スマトラ・ジャワ、特にジャワは食糧生産地帯であり、華僑・印僑の割合は少ない。
・シンガポールが通商国家として栄える地理的・歴史的背景がなんとなく分かる。本当に物流の大動脈に位置しているのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示
全1件中 1 - 1件を表示