児童虐待の社会学 (世界思想ゼミナール)

著者 : 上野加代子

• 世界思想社教学社 (1996年11月1日発売)

作品紹介・あらすじ

いま、児童虐待が社会問題の一つとして私たちの前に提示されようとしているのはなぜか。日米の議論の展開を追い、児童虐待問題の今日的な成立をフーコーから読み解く。

感想・レビュー・書評

[ozean-schlossさんの感想 · 2009年3月28日]

家族社会学の専門家により書かれた、
児童虐待を社会学的に考察された書。


本文全体を通して、
従来の「社会問題から言説が作られる」に対して
「言説から社会問題が作られる」という立場から
児童虐待の問題が述べられていることが特徴。
そしてこのような視点による考察から、
実態以上に児童虐待の件数・深刻さが認知される、
児童虐待の通報が過剰になり
行政レベルでの処理が追いつかなくなる、
政策の不十分さから、政策に反対の声が上がる、
などの問題が指摘されていた。


従来の「社会問題から言説が作られる」については
本文でほとんど述べられておらず、
その点で実態分析が不十分な感じもあるが、
児童虐待の問題を考える上で
見落とされがちな点を指摘する良書だと思われる。

著者プロフィール

徳島大学総合科学部教授
『児童虐待のポリティクス』明石書店（編著）2006年
『児童虐待の社会学』世界思想社　1996年

「2006年 『21世紀アジア家族』 で使われていた紹介文から引用しています。」