ひきこもる心のケア―ひきこもり経験者が聞く10のインタビュー (世界思想社)

制作 : 杉本 賢治 
  • 世界思想社
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本棚登録 : 37
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790716655

作品紹介・あらすじ

ひきこもりとは何か?ひきこもりのベテランが、支援のプロと語りあう。ジャーナリストのルポでも経験者の体験談でもない、ひきこもり問題への第三のアプローチ。

感想・レビュー・書評

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  •  50代の「ひきこもり」経験者による、自立支援に携わる支援者・医師・研究者などへのインタビュー集。書名に「心のケア」とあるが、著者もインタビューの受け手も大半は「ひきこもり」を個人の「心」の問題などではなく社会構造の問題(新自由主義下での競争と排除に起因する)として捉えているので、(監修者が示唆しているように)このタイトルは適当ではない。劣悪な企業社会への就労をゴールとするような「支援」への疑問・批判意識は通底しているが、いみじくも著者が自認しているように、当事者と支援者の非対照的な「権力関係」への「違和感」(p.171)は依然として埋められていない。個人的には、結局のところ「ひきこもり」は、人間関係や社会関係というよりも経済的自立の可能性の問題が本質だと思うので(極論すれば自立できるだけの収入があるのならば「孤立」は問題ではない)、支援における経済的アプローチの視点が欲しかった。

  • (モノローグ→自分に閉じた対話
    ダイアローグ→他の人に自分の話をしてみようという試み)

    p.110
    村澤 ダイアローグというと大げさに聞こえますが、少しでも他者を意識するということが大切だと思います。ある男性は、毎晩お酒を飲みながら過去の嫌な思い出を思い出していたというのですが、ひきこもりの人の集まりに出てからはテレビを見ながらお酒を飲んで、「このネタをメンバーに話してみよう」と考えるようになったといいます。
    (中略)
    杉本 実際に対面して話をするということだけではなくて、会ってないときに相手のことを考えているということもダイアローグということですね。
    村澤 この人の場合、テレビを見るという行為の意味が、自分だけの楽しみから、具体的な誰かに喜んでもらうというネタを探す行為に変わったわけです。そうやってダイアローグに開かれていくことが、過剰にコントロールされた世界へ閉じこもっていくモノローグを打ち破るのだと思います。

    再帰性からの解放
    p.111
    杉本 誰かに何かを伝えようという思いが何かを変えるということですね。
    村澤 そうですね。他者と気もちを分かちあおうと思える機会ができることはとても大切だと思います。

    p.135
    発達障害というのは生まれもつ脳のパターンであり、生まれつき得意と苦手の差が激しく、でこぼこがあるというのが今の考え方ですし、私もそう考えています。そうするとどの時代にもそのような人はいたはずで、そういう個人の能力を活かす社会があり、社会との関係でうまくまわっている時代は診断というものをつける必要はないわけです。結局、今の社会システムではご本人を活かしきれない。そういったときに診断をつけて、お互いのズレを修正する。そのために言葉があるのだと思います。でも現状は、あたかも障害が個人の問題であるかのようにされてしまっている気がするんですよ。

  • この本がどういう層に向けて書かれたものかは分からないが、ひきこもり当事者が読むべき本ではないと感じた。ひきこもりは世間が思っている以上に他人から理解されたがっている。しかしこの「インタビュー対象の専門家たちの目を通して見たひきこもりの姿」を知らされることで、きっと一生理解されることはないのだろうという一種の諦めが生じてしまうのだ。

  • 聴き手が当事者というところに期待があったんですが、専門用語について質問するなど、むしろ相手の持論を紹介するにとどまってしまい…。話し言葉をそのまま文字にしたのか読みづらさも。また、心のケアというタイトルなんで仕方ないんですが、10人とも話し手の選出が偏ったことも、似た話が連続するように思えまして。画期的な内容になる要素はあるように思うんですが…。

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