- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784790717645
作品紹介・あらすじ
韓国の男子高校で教える著者が、学び、実践してきたフェミニズムとは?
生きるための「男フェミ」宣言。
2018年に刊行後、韓国各紙で話題になり、「幸せな朝の読書推薦図書」や「今年の青少年教養図書」にも選定された「本格男フェミ入門書」。初の邦訳。
▶上野千鶴子さん(社会学者)推薦&解説!
「男なのに、フェミニストです」とか「男のくせにフェミニストなの?」とかいうのを聞くと、その他人ごと感にイラッとする。そうだよ、あんたのことだよ、これはあんたに宛てたメッセージだよ、と言いたくなる。
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ流に『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』というなら、フェミニストでないひとたちをどう呼ぶか?
セクシスト(性差別主義者)というのだ。
セクシズムって男と女の非対称な関係のことだから、これから自由なひとはいない。このなかでは、ひとは加害者であるか被害者であるかのどちらかだ。いや、もうひとつ、忘れてた。傍観者っていうのがあった。……
韓国から、こんな男性フェミニストの本が生まれたとは感激だ。
女にも男にも、誰にも、被害者にも加害者にも、そして傍観者にも、ならないでほしい。
(上野千鶴子「解説 『82年生まれ、キム・ジヨン』の夫、それとも息子?」より)
▶本文抜粋
三五歳の私に、ほかの男たちが尋ねる。
「男なのにフェミニストだって? 男のくせになんで女の肩を持つの?」フェミニズムを知っている人や勉強したことがある人も遠慮がちに尋ねる。「男はフェミニストとして限界があるのでは?」
はじめて出版依頼を受けたとき、私も同じようなことを言った。「私がですか? 男がフェミニズムの本なんか出せませんよ」……
私は男子高等学校の教師である。私の職場の半径二〇〇メートル内には、すぐにでも男性ホルモンで爆発しそうな完全なる「雄」八〇〇人が生息している。教室では、悪たれ口を叩き、力自慢に余念がないが、そこに悪意はない。なぜそんな行為をするのかと聞くと「とくに理由はない」という答えがいちばん多く、以下「面白いから」「強く見えるから」の順である。一生を通して性欲がもっとも充満している時期といわれるが、何の脈絡もなく「セックス!」と叫ぶやつもいる。しごく自然な欲望だが、ああいうかたちで出てくるのは残念である。……
男たちに提案したい。声を上げる女性を抑圧する時間で自分を振り返り、フェミニズムを勉強しよう。時代が読み取れず、淘汰されることのないようにしよう。一緒にフェミニストになろう。失うものはマンボックスで、得るものは全世界となるだろう。
(「プロローグ」より)
感想・レビュー・書評
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自分が「性別差別主義者(セクシスト)」だと気付かされる本だった。
本の中には具体的な事例がたくさん登場し、
●女性が夜道を歩くことを怖がることを理解しない男性
●男性同士でいじりあう
など、自分も無意識に差別的な行動をとっていたと身につまされる部分も多い。
男性は既成世代(日本でいうところのテレビに出てくる失言議員とか、パワハラ上司とか?)と本質的に変わっていないという指摘は重く、ひょっとしたら自分は変われないのかも知れないという絶望感すらあった。
それでも、作中の「男だからよくわからないんです、学ばないと」ということばの通り学ばないと平等は実現されない。そして、フェミニズムは男性をも楽にするとも書かれており、男性が学ぶ意義も大いあると勇気づけられた。 -
著者「女性でもないのに、なんでフェミニズムを」
後輩「男だからよくわからないんです、学ばないと」
著者と、フェミニズムを学ぶ後輩との会話だ。その返答は、著者を目覚めさせた。自分も学ばなければならない、と思った。
近年、ジェンダーギャップ指数、ジェンダー不平等指数、ガラスの天井指数の結果において、韓国と日本は似たり寄ったりだった。ところが、最近、韓国で声を上げる人たちが増えた。その声はかき消されることなく、海を渡った。そして、今わたしの手元に、この本ががある。
家族のために、朝から晩まで家事や育児や仕事やそれら全部をこなす妻たちや、女性の管理職が少ない職場で働いていたり同僚の男性たちよりも低賃金で働かされていたりする女性たちは、その境遇に疑問を抱かない。それが当たり前だから。
そうだろうか。本当に当たり前なのだろうか。
本書は、立ち止まって考える時間を与えてくれる。「女性だから」という理由で受け入れているわたしたちが、もし間違っているとしたら?
女性の問題は、男性の意識を変えないと変わらない。だから著者のような男性のフェミニストが率先して、女性の気持ちを代弁してくれたり、支えてくれたりするのは、本当に心強い。 男性の言うことにしか耳を貸そうとしない人も、世の中にはいるから。
ぜひ、身近にいる男性に、この本を紹介してほしい。あなたの話に耳を傾けてくれる男性なら、きっと驚くはずだ。女性の友人がいることと、女性の人生を知ることとはまったく別だということに。あなたたち女性のことを、まだまだ理解できていなかったことに。
わたしは、フェミニストでもなんでもない。だけど、わたしみたいなフェミニストでもなんでもない女性たちが読むと、世界がひっくり返るような本である。少なくとも、価値観は大きくゆさぶられた。
p24
ワンオペ育児と家事労働の沼でもがく人にとって、家庭は職場よりひどい労働の場かもしれない。抜け道がいっさいない人生、休憩時間が許されない日々。
p28
どの社会においても女性が男性よりたくさん働いている。家事労働が深刻なほど女性のほうに傾いているからである。より多く働くが、より少なくしか賃金をもらわないからだろうか。女性の労働はささいで副次的なものとしてあつかわれる。国家は必要によって「産業の担い手」という名目で女性を召喚し、利用価値がなくなると、真っ先に労働市場から追い出してきた。開発独裁時代の韓国がそうであり、軍国主義時代の日本がそうであった。ヨーロッパも産業革命と世界大戦の時期、女性に労働を呼びかけたが、すぐに用途破棄を敢行した。
p54
フェミニズムは膨大な学問だった。数千年間つづいた矛盾と、数百年間受け継がれた悪習、そして、数十年積まれた知識があった。活字をはじめ、絵、映像、証言など無数の資料があった。
p88
ジェンダーギャップ指数は、経済・教育・健康・政治の四つの分野で同国の男性を基準値とし、女性と比較したものである。相対的数値が反映されるため、ほかの国の女性と比べたら高くても、自国の男性の権益水準によっては順位が低くなることもある。ひとり当たりGDPが七五〇ドルにとどまるルワンダが毎年上位を占める理由である。
p94
女性の所得が男性と同じくらいになれば、すべての費用を半分ずつ負担するのが自然になるのではないだろうか。育児を女性に任せっきりにしなければ、父親と子どもの絆が深まるのではないだろうか。
p97
「お前がそんなことをしても何も変わらない」「ひとりでどんなに頑張っても変わるものはどうせ何ひとつない」などと言う人が多ければ多いほど社会は暮らしにくくなる。「私は男だから、女の人生は知らなくてもいい」と思う人が多ければ多いほど、世の中は廃れていく。
p130
男性フェミニストとして機能したいなら、日常の最前線に立ち、男と対話しよう。
p146
男をフェミニストにする最初の地点は、母親の人生に対し、自責の念を抱くことにあると信じてやまないから。
p153
二〇一七年の今年の本の投票では作家ウニュさんの『戦うたび透明になる』が一位となった。「仕事、恋愛、結婚、役割にしょっちゅうムカッとする女の話」と紹介されている本である。この本を読んでいた四週間、多くの人が涙を拭い、考え方を変え、闘士として生まれ変わった。
《読書案内》
1『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
→フェミニズム入門書としてもっともよく知られている本のひとつである。ユーチューブで二五〇万回以上再生された映像を文字に起こした。
2『子どもと話す マッチョってなに?』クレマンティーヌ・オータン
3『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』遥洋子
4『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ
5『ヒョンナムオッパへ-韓国フェミニズム小説集』チョ・ナムジュ、チェ・ウニョン、キム・イソル、チェ・ジョンファ、ソン・ボミ、ク・ビョンモ、キム・ソンジュン
→三、四〇代の女性がフェミニズムをテーマに書いた短編小説集である。
6『エガリアの娘たち』ゲルド・ブランテンベルク
→ユーチューブにある再生時間一〇分のフランス短編映画『抑圧されるマジョリティ(Oppressed Majority)』を先に見てから読むとさらにいい。
7『失われた賃金を求めて』イ・ミンジョン
8『全然大丈夫じゃないです』チェ・ジウン
9『女の誕生-大韓民国で娘たちはどのようにして女性らしい女性として作られるのか』ナ・イム・ユンギョン
→『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んでから、この本を読むと、すばらしいシナジー効果が得られる。
10『あなたがずっと居心地悪ければいいと思います』ホ・ンスンウン
11『しごく私的なフェミニズム』パク・ソヒョン、オ・ビンナリ、ホン・ヘウン、イ・ソヨン
12『街に立ったフェミニズム-女性嫌悪を止めるための八時間』コドゥンオ他四一人、韓国女性民友会編、クォン・キム・ヒョニョン解題
13『ワニプロジェクト-男だけが知らない性暴力と新しいフェミニズム』トマ・マテュー
14『パリで過ごした一時間-性暴行とその後の人生を描いた実話』キャリン・L・フリードマン
15『敏感でも大丈夫-不愉快なタッチやぶしつけな質問に憤怒しているあなたのための温かくストレートな助言』イ・ウニ
16『それは全然ささいなことではありません』
17『とても親密な暴力-女性主義と家庭内暴力』チョン・ヒジン
18『母親の誕生-大韓民国で母親はどうやって作られるか』アン・ミソン、キム・ボソン、キム・ヒャンス
19『母親になって後悔する-すべての女性が母親になる必要はない』オルナ・ドーナト
→社会が母親と父親に求める期待値は天と地ほどの差がある。男性はベビーカーを押して家の外に出ただけでいい父親になるが、女性は一晩中、一睡もせず、子どもの面倒を見ていても、もし子どもが病気にでもなったら、悪い母親になる。父親なんてやってられないと言っても冗談で済まされるが、母親なんてやってられないと言うのは禁句である。母性はあまりにも崇高だから、そこそこの苦痛ではなかなか声を上げられない。
20『あなた方は春を買うが、私たちは冬を売る』社会法人性売買被害女性支援センター「サリム」
21『姉さん、いっしょに行こう』アン・ミソン
22『おめでとう』パク・グムソン
23『あの男はなぜおかしくなったのだろう』オ・チャノ
24『マンボックス-男らしさに閉じ込められた男たち』トニー・ポーター
25『女嫌い、女が何かした?-キムチ女からママ虫まで日常化した女性差別と嫌悪を告発する』ソ・ミン
26『フェミニズムの挑戦』チョン・ヒジン
→「韓国フェミニズムの教科書」と評価される本で、大学の作文授業や討論授業の教材として広く使われている。代表的な男性フェミニストのソ・ミン教授はこの本が自分をフェミニズムの世界に招いたと明かした。私もそうである。人生でもっとも大きな影響を与えた本を選べと言われたら、この本を選ぶだろう。
27『女ぎらい-ニッポンのミソジニー』上野千鶴子
28『バッド・フェミニスト』ロクサーヌ・ゲイ
29『それでも、フェミニズム』ユン・ボラ他一一人
30『韓国男性を分析する』クォン・キム・ヒョニョン、ルイン、オム・キホ、チョン・ヒジン、チュヌ、ハン・チェユン
31『両性平等に反対する』クォン・キム・ヒョニョン、ルイン、リュ・ジニ、チョン・ヒジン、ハン・チェユン -
『私は男でフェミニストです』
「男だからよくわからないんです、学ばないと」
自分とは無関係だと思って学ばないでいることは、苦しい立場の人々の声から耳を遠ざけることになる。
「その人の事情も知らず適当なことを言う人」にならないために
#読了 #君羅文庫 -
男性がどのようにフェミニストであることができるか、的な内容。巻末の読書案内までめいっぱい充実している。前半はなかなか読んでいて苦しい話が多いが段々テンポが良くなり一気に読めた。
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お母さんの記録を読むだけでも涙が溢れてきた。最近フェミニズムを勉強していて、これは女性だけに限らず、すべての人に必要な考え方なのだと思った。
マイノリティの代表である女性の権利を主張することはマイノリティの人権を守ることの第一歩になるのだ。 -
フェミニズムって誰のもの?
男でも女でも社会活動するすべての人が無意識のジェンダー差別を受けているのであれば、フェミニズムはその全ての人のためのものである。この本はそう教えてくれた。
自分が女性あるというだけで、キャリアのブランクを経験せず、夜道を恐れず、夢をあきらめないでいられる社会。男性であるというだけで涙を堪えなくて済む、育児の楽しみや家事の疲れを知る機会を奪われない、そんな社会。女の子がエンジニアを、男の子がネイリストを目指したって何にもおかしくない社会。自分が好きだから選択し、探索できる社会。そういう社会を私も全力で目指したい。
フェミニズムは簡単じゃない。だからといって、どうしたって諦めていいものではない。みんなで闘っていかなきゃならないんだ。 -
男性のフェミニストの方の本を読む機会はあまりなかったので興味深かった。
「女性は歴史上、もっとも長く、そしてもっとも人口の多いマイノリティである。この問題を解決せずには平等も平和もない。」という言葉にハッとした。 -
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
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韓国は生きづらそうだ
https://www.hokkaido-np.co.j...
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/668027?rct=s_books