不安障害の認知行動療法 (2)

  • 星和書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791105205

作品紹介・あらすじ

「社会恐怖」は、社会生活の中で、人が自分をどう評価するかということに恐怖を抱き、赤面、発汗、震えなどの様々な症状が表れる不安障害のことである。本書は、治療者向けガイドと患者さんのためのマニュアルで構成されており、精神科医及び臨床心理士は実践に直結し、患者さんは治療を受ける際の手引きや病気の理解に役立つ。社会恐怖克服のための必携書。

感想・レビュー・書評

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  • 不安障害のいろいろな症状の説明と、それへの認知行動療法の適用に関する3部作の2部目。この部では社会恐怖について、症状について書いた後、治療者向けの解説、そして患者向けのマニュアルを記している。自分は最初の症状と、最後の患者向けアニュアルを読んだ。

    この本で、もっとも役立ったのは「広場恐怖」と「社会恐怖」は一見似た症状だけど、原因は全く違うよ、ということをすごくわかりやすく書いていてくれること。

    「判別のために臨床で役立つものは、もしその恐ろしい状況にまったく1人でいたとしたら、彼らが困るかどうかを患者さんに尋ねることである。広場恐怖の患者さんはこれをぞっとするような話だとみなすが、社会恐怖の患者さんは、もし誰も周りにいなければ何の問題もないと言うだろう。(p.13)」

    広場恐怖傾向の人を見てると、いろいろ振る舞いは違えども…実は人が好きなんだろうな~、と思う瞬間が結構あって。でも、組織との付き合い方は決してスマートではない。それが不思議ではあったのですが…要はなにかあったとき「助けてくれる人がいなかったらどうしよう」という不安が先にあるからああいう動きになるのか、とすごく納得した。

    社会恐怖は、突き詰めると「誰か人が襲ってきたらどうしよう」。だから人のいない所へ(過剰に)行こうとして、それがある種の問題行動になる。

    広場恐怖を持つ人も社会恐怖を持つ人もどちらも「自分に好意的に対応してくれる人」を求める傾向が強いから社会性の高い人からは同じに見えるだろうし、恐怖症傾向のある人同士でもその違いに違和感は持ちつつもそれ以上つっこんで考えることはなかった。
    しかし、こう分かりやすく書いてくれるとわかりやすいし対応もしやすい。公私ともに役立つ記述だった。


    社会恐怖は「誰かが襲ってきたらどうしよう」と過剰反応する症状。当然、そうならないように自分を変えていきなさい、と患者向けマニュアルにも書いているのですが、それが具体的で現実的。

    社会に参加するためには「自己主張」しなければならない、ということで、患者向けマニュアルには「自己主張」についての節(p.139-)があります。そこで誤った自己主張として「自己主張不足」と「攻撃性」を挙げ(p.140)、適切な自己主張をするための方法を具体的に挙げたうえで、
    「自己主張的な選択肢を選ぶことは、攻撃的な態度や自己主張的でない態度で行動するよりも、しばしばずっと困難です(p.150)」
    とその選択が簡単ではないことも認めていきます。

    そして、こちらが健全な自己主張をしても相手がそれを拒否するような状況でも、それをあきらめろとも主張を押し通せともいわず、「自己防御の技術」として具体的な手法(上手に聞き流したりとか無視したりとかも含む)を伝授しようとします。

    根本的に社会にも、それを変える力が自分にあることも期待していない社会恐怖傾向の人は、問題解決が困難になるとその社会ごとほり出しさらに社会的困難を負うことがしばしばあります。
    そうなりにくくするための、いい意味での「グレーゾーン」を用意しようとする。興味深い一冊でした。


    このシリーズの1つ目(パニック障害についての一冊)と同じく、治療者向けの部分を一般人が読むことは困難で、読めるところが少ないという意味ではもったいない感がある本ですが、内容は確かでまた納得して行動しやすい。
    気になるところがある人には一読を薦めたい一冊です。

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