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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791105694

作品紹介・あらすじ

シリーズ最終巻。前半は、症状や各種治療を最新のエビデンスに基づいて明快に解説。後半は、治療者向けガイド、患者さん向けマニュアルになっており、現場ですぐに使える効果の高い認知行動療法プログラムを紹介する。患者さん向けマニュアルは、治療を受けてもらう際の手引きとしてだけではなく、病気を理解するためのガイドブックとしても優れたものである。

感想・レビュー・書評

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  • 認知行動療法の不安障害への適用について書いた3部作の第3冊目。この本では強迫性障害とPTSDへの認知行動療法の適用について書いている。

    強迫性障害は、読んでいて「まだよくわかっていないところの多い障害なんだな」という印象。
    それを強く感じたのが、その鑑別診断の項。
    「患者さんの観念や行為が、自我親和的であったり、患者さん自身にとって愉しい場合はOCD(=強迫性障害)の診断にはならない。(p.4)」
    極端な例を言えば「乗りたい電車に乗るために電車旅行する」みたいな不合理極まりないことをしている鉄オタは、周りからみると意味不明でその振る舞いが社会的生活を困難にしているかもしれないけれど「患者さん自身にとって愉しい」行為なのでOCDではないのです。

    患者にとって、その行動はやりたいわけではなく、おかしいとも思っている。でも、侵入的に入ってくる思考によってやらざるを得なくなり、それが生活を困難にしている。
    そして、本人にとっても「しんどくて嫌なのにやらざるを得ない」行動を他人がわかるか、といえばやはりそれは困難なこと。その仕組みもいまいちよくわからない。きつい障害です。


    PTSDも、特定の記憶が侵入的に入ってくる、という意味で共通項がある、ということもあってか、同じ本の中に収められています。
    また双方、「何かを回避している」ということが本人の困難につながっている、という観点も同じなので、その回避している対象(強迫性障害であれば特定の価値観、PTSDであれば特定の記憶)に少しずつ慣れる曝露法が、認知行動療法のコアになるらしい。


    3部作を通して読むと、昔の「神経症」というあいまいな分類だったものがかなりわかってきて、だからこそこういう3冊の本に分けてそれぞれの障害とその対処法を考えられるようになっているんだな、ということは理解できた。
    ただ、逆に言えば不安障害と認知行動療法を理解しようとしたら、少なく見積もっても「だいたい3冊分」くらいの知識が必要、ということでもある。不安障害しかり、認知行動療法しかり、それぞれの入門書を読んでもどこか納得しきれないとこがあったんだが…そりゃ、必要となる知識の一部しか拾ってないんだから、不足感のようなものがあって当然だな、とも。

    疑心暗鬼になってる不安障害の人に「騙されたと思ってやってみろ」というような側面が認知行動療法の入門書にはある。だからこそ、その身のまわりの人がより深く認知行動療法や不安障害について知り、本人の行動を一定範囲で理解しつつサポートする。そうしないと、本人が安心して認知行動療法を含む治療に取り組めないのかもしれない。
    そんなことを考えさせられた3部作でした。

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