セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック

  • 星和書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791109913

作品紹介・あらすじ

たった2週間でつらい気持ちを解消して,堂々とした自分になれる心のトレーニング方法「セルフ・コンパッション」の実践ワークブック。
具体的な事例やエクササイズの紹介に始まり,「過去の傷を癒す」「喜びを育む」などのトレーニングセッションについて、フローチャートや数多くの実践例を交えてわかりやすく解説。
アメリカで大流行している,この“幸せを身につける方法”を明日から実践しよう!

感想・レビュー・書評

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  • 1.セルフ・コンパッションの概要
     セルフ・コンパッションとは、日本語では「自分に対する慈悲」「自分への思いやり」と訳され、伝統的な仏教の瞑想に関する脳科学や臨床心理学を通じて提示された概念である。セルフ・コンパッションは、「自分への優しさ」、「共通の人間性の認識」、「マインドフルネス(今、ここにあるものを、判断を差し挟まずに認識する)」の3つの要素によって構成される、様々な問題に対応するための実践する一連の技能・生きる姿勢と言える。
    自分が何らかの問題に直面した時、人は往々にして、「自己批判」をして、「自分だけが苦しんでいるという孤独感」を感じ、「怒りや失望などの感情に過剰に支配される」という反応を示す。こうした、問題に対する反応の逆の反応を取ることが、セルフ・コンパッションの対応方法である。セルフ・コンパッション的な反応の仕方は次のとおり。
    ・自己批判で自分を厳しく問い詰めるのではなく、自分への優しさを持って、出来てい
    る面は出来ていると認識するなど、自分の良い面にも気づき、経験を受け入れて、優し
    く温かい気持ちを自分に向ける。
    ・苦しみや失望は、自分一人だけが味わうものではなく、人間誰しも失敗し同じような経
    験をするという共通の人間性を感じ、他者とのつながっている感覚を持ち、孤独感を和
    らげる。
    ・感情をマインドフルネスによってあるがままに受け止め、感情の暴走を収める。

     より具体的な事例としては、次の様なものがある。
      (マラソンを完走するためのモチベーションの上げ方)
        ・自分に厳しくする場合「弱気になるな、負けるな、完走できなかったら失敗だ」
        ・セルフ・コンパッション「大変なのはよくわかる。でもきっと完走できる」
      →自分に厳しくすることでモチベーションを上げる方法は、失敗恐怖につながる。
      →完走を目指して練習することと、練習しない自分を嫌うことは異なる。前者はセルフ・コンパッションで勇気づけられるし、後者は、自分に厳しくすることで恐怖感をもとに動こうとすることであり、自己否定につながる。
    こうした概念に基づき、各種ワーク・瞑想を含めた一連の態度・技法がセルフ・コンパッションである。
     先述のとおり、セルフ・コンパッションは、伝統的な仏教の瞑想(慈悲の瞑想)に由来したものである。また、瞑想による効果について脳科学で研究し、効果が科学的に検証・研究されてきたのが、セルフ・コンパッションの手法である。実際に、脳科学的手法により、仏教徒の僧の脳の分析や、コンパッションのワークが脳に与える研究がなされてきた。それらの研究により確認された効果は次項のとおり。

    2.セルフ・コンパッションの効果
     セルフ・コンパッションは、誰でも身に着けられるスキルであり、科学的にその根拠、効果が実証されている。
     ・科学者たちが「思いやり回路」と呼ぶ神経のつながりがあり、そこで思いやり、温かさ、
    愛情が作り出されている。
     ・セルフ・コンパッション・トレーニングをすると「思いやり回路」が強く成長する。そ
    の変化は脳画像上でみて分かるほど。
     ・「思いやり回路」は脳の中でも情動に関わる重要な回路の一つで、喜びと幸せの気持ちを作り出す。この回路をセルフ・コンパッション・トレーニングで活性化すると、不安、抑うつ、怒りが和らぐ。
     ・コンパッション・トレーニングを1日30分14日間行うと、脳が有意に変わって、より向社会的になり、他の人を思いやる行動も増える。
     ・コンパッション・トレーニングを8週間行うと、気質やパーソナリティが有意に肯定的になる。
     ・科学的調査によると、幸せの指標が一番強く脳に現れていたのは、コンパッションを集中的にトレーニングした仏教僧侶だった。

    3.似た概念との違い
    (1)自尊心とセルフ・コンパッション
     自尊心は自分自身をプラスに評価するが心だが、他者との比較の概念が含まれている。結果、自己の優越性を求めることになり、他者批判や他者の評価を懸念する様になる。
     セルフ・コンパッションでは、他者を自分の下に位置づける必要はなく、失敗に対する不安も小さくなる。
    (2)わがままとセルフ・コンパッション
     わがままとは、自分の思うままに振る舞うことであり、自分や社会を変えていくための努力をしたがらない。セルフ・コンパッションは、今の自分を受容したうえで、自分が成長して人生をよくしていくことが価値のあることだと思えており、成長のための努力の要素を含むものである。
    (3)自己憐憫とセルフ・コンパッション
     自己憐憫では、自分が被害者で自分には人生をどうすることもできないと考える。セルフ・コンパッションでは、自分の弱さと強さの両方に目を向けるので、望めば新しい力を身に着けられ、何かを成し遂げられると考える。
    (4)自己中心性とセルフ・コンパッション
     自分の事だけを考え、他者への思いやりを欠く自己中心性に対し、セルフ・コンパッションでは、自分への思いやりとともに、他者への思いやりを豊かにする。

    4.本書の特徴
     本書は二部構成になっている。第I部では、セルフ・コンパッションの概要、「自分への思いやり」が何故大切なのかを説明している。第II部では、プログラムの実践編であり、セルフ・コンパッションをはぐくむための実践トレーニングの方法が記載されている。フローチャートで自分がどのワークを実践していけばよいかが分かる様になっているのが特徴である。また、本書のトレーニング方法については、英語の音声ガイドがWebページ上に公開されており、その音声ガイドを聞きながら、実践を行うことも可能である。本書では、1日30分、14日間のトレーニングを継続するだけで、脳も、心もはっきり変わるとうたっている。本書で紹介される方法は、上述のとおり、厳密で科学的な手法を用いた研究によって、効果が証明されているとのこと。
     (本書で掲載されているワークの概要)
    ① セルフ・コンパッション・ボディスキャン
    マインドフルネスの瞑想で、現在の身体の感覚を理解するワーク
    ② セルフ・アクセプタンス
    マインドフルネスにより、身体と思考のマインドフルネスを通じて、自身の身体の状態や思考を無理なく受容し思いやりで包むことで、心の平静を保つワーク
    ③ 苦しさを抱きしめるワーク
    人間は誰しも苦しみを感じるものであることを踏まえ、苦しみを受け取る方法として他の人からコンパッションを受け取る、または自分で自分にコンパッションを送るワーク
    ④ 過去の傷を癒すワーク
    過去の傷の痛みを感じると共にコンパッションを呼び起こすワーク
    ⑤ 更に深く探るワーク
    ④でうまくいかなかった時に、より深く探り、苦しみの根底の原因を理解するためのワーク
    ⑥ コンパッションが難しいときにするワーク
    セルフ・コンパッションをやっていて、逆に葛藤が生じてコンパッションを送れない、受け取れないときに、それらを妨げているものに気が付き受容するワーク
    ⑦ 自然なコンパッションを呼び起こすワーク
    脳の「思いやり回路」のエクササイズとして、他者へ送ったり、自分で受け取ったりするワーク
    ⑧ 喜びを育むワーク
    マインドフルネスで、「今・ここ」にある幸福を感じるワーク
    5.感想
     「完璧を求める心理」を読んで、過剰適応をする完璧主義で問題となる「失敗恐怖」と「他者の評価懸念」を和らげるうえで、セルフ・コンパッションを高めることが課題解決につながると紹介されていたため、関心を持ち読んだ。読んでみて、自分がモチベーションを上げるときには、徹底的な自己批判「負け犬はどぶに濡れて死ね」という言葉で、鼓舞して頑張って来たことに気づかされ、モチベーションや失敗に対して自分に厳しくする方法しか持っていなかったことを改めて認識した。セルフ・コンパッションの方法でも頑張れるということに気が付き、新しい方法を得て、目からうろこが落ちた。様々な人から励ましを頂きながら生きてきたにもかかわらず、そうしたコンパッションに頼ることは弱いコトだと思って、今まで生きてきたということに気が付き、愕然とする。自分は強くならなくてはならないから、慰めや励ましに頼ってはならないなんていう、凝り固まった観念が自分の中に存在しているという事実を認識することができた。
    実際に14日間のコンパッション・トレーニングを実施してみたら、睡眠の質が良くなり、また気分の落ち込みや認知のゆがみも抑えられ、落ち着いた気分を味わえる様になってきた。自分には、このセルフ・コンパッションの瞑想があっていたみたいだ。このため、今後もこのワークを継続し、日常にも取り込み、コンパッションを高めて生きていきたいと思う。
    尚、瞑想にも目的や手法が色々ある様で、自分に合ったものと出会うのが難しく、自分に合っていないと逆に悪い効果が出ることもあるとのことなので、ワークを実践する時には、その辺りの留意が必要だと思う。そうした瞑想のやり方や、種類、付き合い方などについては、「悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門」(幻冬舎新書 魚川祐司、プラユキ・ナラテボー著)を参照することをお勧めする。

  • つらいことがあったとき、すぐに相談できる相手がいるならいい。実際は、相談しようと思っても、相手が忙しかったり、相談する相手がいなかったりして、なかなか難しい。
    そこで、自力でどうにかできないかなと思っていたところ、セルフコンパッションに辿り着いた。
    セルフコンパッションとは自分への思いやり。
    脳には思いやり回路があり、何かで思いやりの気持ちを体験すると、その回路がオキシトシンと天然の鎮痛剤ともいえるオピエートを分泌して、気持ちを温かくしてくれるそうだ。
    実践では、この思いやり回路を使って、ストレス、不安、抑うつ、そのほかのネガティブな感情をやわらげていく。
    感情をあるがままに受け入れる心のトレーニング。
    この習慣をぜひ身につけたい。

  • 幸せでありますように。健やかでいられますように。安全でありますように。愛されますように。妨げるものに聞く。何歳の自分か。妨げるものにかわる解決策を知っている自分がその理由を理解したことを伝える。トレーニングを積んだ専門家と一緒にやる。>どうやって探すか?

  • 良本。セルフコンパッション(自己肯定感)を育てるための具体的なワークが掲載されていて、それを実際に行ながら読み進めていくことで、少しずつ自分の中にあるシコリのようなものが解れていく感覚がある。

    - 過去のトラウマとなった出来事を経験していた時の幼い自分に会いに行き、その子を受容し、抱きしめてあげる。

  • 医学部分館2階心理学 : 146.8/DES : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410170883

  • 自分はクリスティフネフの、『セルフコンパッション』、『マインドフル•セルフ•コンパッション ワークブック』を読んでいたのでどうしてもその本との比較になってしまうが、この本も良書だと思う。

    特筆するところでいうと、
    過去の痛みを癒す際には、コンパッションを体験しないと反芻しているだけで痛みが強くなる
    コンパッションが難しい時の章に書かれていた疾病利得の話や自己批判を手放さない理由等は大事なところだと思った。

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著者プロフィール

現役の心理療法士で,禅師ティク・ナット・ハンの弟子。アンティオック大学の講師で,モーニングサン・マインドフルネス・センターの設立者の一人。数百の学会,セミナー,大学で講演を行い,セルフ・コンパッションのメリットを発見できるように,専門家から一般まで世界中の聴衆に教えている。

「2018年 『セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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