現代思想 2021年11月号 特集=ルッキズムを考える

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791714216

感想・レビュー・書評

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  • 他人から外見で判断されてちくちく、もやもやしてこの本を手に取ってみた。

    良くも悪くも外見からその人の価値を図ろうとすることがルッキズムだと思っていたから、個人的な興味はかなり日常的な場面だったのかも?と気づいた。だから、人種や障害に関する評論が多く感じた。この辺りはあまり理解できなかったけど、普段意識していなかったんだな。

    『美ーこの両義的なるもの』の3本がもやもやを少し晴らしてくれた気がする。
    ⚪︎良くも悪くも、外見について言及されると評価されている気持ちになり、それが落ち着かなかったのかもしれない。
    ⚪︎美しくなることを、自分という素材をよく見せるために適切な手段をとることができる、と捉えると美は『身体』的というより『能力』(スキル)とも言える、現代は後者にシフトしつつある。
    ⚪︎多様な美が認められるようになったとて、美しさの基準が増えただけで、外見から価値を図ることそのものが行われなくなっているわけではない。

    サピオセクシュアルなんて言葉があるけど、それは人を判断する際に知性に重きが置かれているって状態で、ルッキズムと大して変わらんよなと、人を判断する際に外見以外のある要素のみを用いることも受け入れられないはずよなあと。ある一要素で理不尽な扱いを受けることは正当化されないだろうけど、そうでなくて他人を判断する程度の話であれば仕方ないのかなあという気持ちになった。

  • 美容・ファッション・芸能人への目線等々、日頃から私自身が「それどうなん?」って思ってたことについて問題意識を持って論じられてて、とても興味深く読めた。
    全論読んで自分で思ったのは、「体型や年齢をポジティブに受け止める社会は、下手したら容姿に頓着せず生きる権利を否定する社会になりうる」ってところへの問題意識は、内心に密かに持ち続けていこうって事。
    ボディポジティブ等の記事を見るときとかに、出来る限り「そうではない人への目線が差別的になってはいないか?」って自問自答していきたいね……

  • 新概念としてのルッキズムが構築されつつある近年で、何がルッキズムたらしめるのか、一人一人が想像するルッキズムはどう違い、どうして不正なのかを、著者一人一人が設定し、解説している。良書。

  • 自分はルッキズムときいて、SNSの流行や広告が外見至上主義を助長してるような最近の風潮を思い浮かべたが、それは1つの側面でさらにジェンダーの問題や就職活動における不平等など、問題は多岐に複雑になっていると知った。

    例えば足が長い、細いではなく"健康的"、体型が痩せていなくても"ファッションに気を使う"などの美の基準をどんどん増やしていくことが解決策としては現実的なんじゃないかと個人的には思った。(それが新たな階級を生み出すだけ、根本的解決には至らない、など反論はあるが、自分は"自分の見た目を自分で良くしようという力"も慎重に使われればプラスになる、と考えているので)

  • ルッキズム
    雇用、成績評価を本来機会均等でなければならないが、外見でそれが判断され不利益が生じる現象

    レイシズム
    優勢のものが劣勢のものを支配すること

    セクシズム
    他人に対して、性別を理由に、排除や制限などの不利益を不当に及ぼすことをいう。 女性差別や男性差別などがある。

    マイクロアグレッション
    些細なことが言われた当人にとっては重要なこと

    ボディシェイミング
    人の見た目を馬鹿にしたり、批判したり、意見を言ったりすること

    前景化、後景化
    ある部分に焦点が当たったらその部分が「前景化」していると言い、その部分に焦点が当たらずに認識されるときに「背景化」していると言います。

    セメンヤを男性性と強制化し、テストステロン数値の異常値であるという理由で大会への出場を制限している背景に、過去から継続して黒人に対しての恐怖や身体的な脅威からくる劣等感から差異化を図ったことが言える。セメンヤの記録は歴代4位の記録であり、圧倒的とは言い難いが、黒人であることを理由に差別的な形になっていると感じた。

    大坂なおみの日清食品のcmでホワイトウォッシュされているのは、背景に、見る側が見たいという欲望が背後に存在し、私たちと同一であると訴えたかったからではないか。

    90年代は男性はみるがわの立場にいる状態が普遍的であったが、20年代に入り、男性の美容だったり、ジェンダーへの理解度が深まったことで、見られる側になっていった。今までは見た目の判断が女性に限定されていたが徐々に二元論的な部分が緩和され男性もそのような立場に位置づくこととなる。

    見られる側の立場になったことで
    より一層、外見への偏見が加速するとともに
    その状態は女性にも波及し、男性が綺麗しているのであれば女性はもっと意識しなければならないとならなくなってしまった。

    フィアレスな組織
    不安や恐れがない組織

    アンガーマネジメント
    怒りについて企業コンサル等の指導がされている。
    科学的に6秒以内に反応してしまうと怒りに変わりやすい。

    感情知
    自己や他者の感情を認識あるいは理解したり,自己や他者の感情を制御したりする能力を表わす概念である。

    感情資本

    感情資本とは、文化資本のひとつである身体的資本として、感情管理の特定のスタイルを『自然に』身につけた人間が、より有利な社会的位置を『個人的に』獲得するかにみえるような事態を招くものである」

    記述語
    評価語
    評価的表現については
    言われた本人がどう感じるか、道徳的に不適切なものであるかを見極める必要がある

    人を傷つけない容姿の揶揄
    指令的に言わない。
    例えばデブではなく、お腹が島のようだ的な

  • ・ルッキズムは単に外見だけではなく、他の様々な差別とも交差する
    ・「美」の基準を複数にすること

  • すごい良い。書き手が「心を護るべくこの本を読んでいる人」を想定しているのも良かった。

  • 2022/3/21

  • ルッキズムというと「女性の外見的な差別」という括りでしか考えがありませんでしたが、LGBTQ、障害者の逆差別(「障害者に見えないよね〜」)、男性のエステ・・・など多岐にわたり、かなり前から議論されていたのだと知りました。読書会のために読みましたが、かなり奥が深く興味深い内容でした。

  • 【特集】ルッキズムを考える

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著者プロフィール

1976年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。現在、東京理科大学教養教育研究院准教授。主な著書・論文に、『「社会」を扱う新たなモード』(2022年、共著、生活書院)、「『ルッキズム』概念の検討」(『和歌山大学教育学部紀要(人文科学)』No.71、2021年)。

「2022年 『マイノリティだと思っていたらマジョリティだった件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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