現代思想 2022年11月号 総特集◎森崎和江―1927-2022―

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791714377

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  • 女の本屋 > 森崎和江さん追悼 ちづこのブログNo.156 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/article/show/10418#gsc.tab=0

    青土社 ||現代思想:現代思想2022年11月臨時増刊号 総特集=森崎和江
    http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3729&status=published

  • 2022年に逝去された森崎和江さんの仕事を振り返る総特集。森崎さんの仕事を見渡すには、よい入門書でした。私は恥ずかしながら森崎さんのことを全く知らなかったのですが、このような方のようです:

    ①朝鮮から引き揚げた植民二世
     朝鮮への原罪意識を持ちながら、戦後民主主義に湧く日本において、自分たちが侵略行為を働いてきた朝鮮人を内包する論理を有していないことに対する違和感を持ち、ポストコロニアリズムという単語が登場する前から、自分の言葉を紡いできた。
     朝鮮に対する郷愁と、罪の意識の反転として、日本とは何か、日本人とは何かの問いを持ち続け、日本各地を旅し聞き書きを行う。特に、炭鉱とからゆきさん(九州から海外に働きに出て行った女性たち)(→主に、農村共同体から周縁化された人々"流れ者"に興味関心を持つ。)に関する著作が有名。

    ②母として
     妊娠中に自分の中に別個体が生きているにも関わらず「わたし」という人称を使って話し続けることの違和感と、いのちを産むことを巡る語彙の不足に、ことばの海の中の女性の歴史的な孤独を感じる。この独創的な思索に、感動した人は私だけでないんだということが、寄稿を読んでいて分かった。つまり森崎さんは、ジェンダー(→その後エコフェミニズムへ)という単語が現れる前から、自前の言葉で語ってきた人でもある。
     また、この発想は、概念の世界にとどまり他者を想定しない権威的な共同体に対する反論の拠り所として機能するようになったり、生を一代限りの自己完結ではなくいのちの連鎖の中に見出す思想などに受け継がれ、発展していく。

    (感想)誠実な人だと思った。自分の中に浮かんだ違和感を丁寧に掬い上げ、考え続ける。私がここにさらっと書き出したよりも遥かに大きな広がりを持つ思索の旅であった。

    様々な寄稿者が、森崎さんの独自性、影響力などポジティブな面も、思考の限界や批判も(つまり残された世代が検証し議論を重ねないといけないという意思表明も)、それぞれの立場から考察していて面白かった。私の興味あるテーマと重なるところが多いので(ジェンダーと流れ者としてのアイデンティティの問題)、関連分野の気になる寄稿者を知ることもでき、読みたい本もまた増えた。

    *****

    ◎通読
    ○斜め読み
    ※斜め読みのところはコメントしませんが、いずれも興味深かったです。

    目次
    ◎言葉の住処、思想の原基ー単行本未収録選(「戦後民主主義と民衆の思想」が特によかった)
    ○ともに生きる思想
    ○炭鉱労働精神に宿るもの
    ○歴史を聞き書く
    ◎ことばを産むひと(姜信子と松井理恵の寄稿が特によかった)
    ◎植民地主義へのまなざし(玄武岩、石原真理の寄稿、つまり全部とてもよかった)
    ○討議
    ○〈南〉と〈北〉から描く地図
    ○地域に生きる/地域を生きる
    ◎フェミニズムと産の思想(上野千鶴子と中村佑子の寄稿が特によかった)
    ○人間中心主義を超えて

  • 【総特集】森崎和江

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著者プロフィール

森崎和江(もりさき・かずえ) 1927年朝鮮大邱生まれ。福岡県立女子専門学校(現・福岡女子大学)卒。詩人・作家。谷川雁・上野英信・石牟礼道子などと「サークル村」をおこし、文化運動・大正炭坑闘争を闘う。執筆活動・テレビなどで活躍した。主な著書に、『まっくら』『奈落物語』『からゆきさん』『荒野の郷』『悲しすぎて笑う』『大人の童話・死の話』『第三の性』『慶州は母の呼び声』など多数。詩集に『かりうどの朝』『森崎和江詩集』など。2022年、95歳で死去。

「2024年 『買春王国の女たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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