アメリカ建築のアルケオロジ-

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  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791752751

作品紹介・あらすじ

天を衝く摩天楼・地を這う砂漠の建築、アメリカ建築の意味するものは何か-。ライトからヴェンチューリ、ジョンソンにいたる、先進的アメリカ建築の多彩な展開を、アメリカン・ドリームの崩壊と、父性原理喪失の表象として捉え、精神分析学を援用しつつ検証する。全く新しいもう一つのアメリカ文化論。

感想・レビュー・書評

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  • 現代建築テロ以前以降でははっきしいって辟易した、精神分析用語の濫用が、この本では美しく各々の建築家たちのライフストーリーを繋げる解釈の糸として機能している。役には立たないけど、既知の建築家たちをゴシップ的に読み直すにはすらすらいけるしいいんでは。

  • 本を取り上げたきっかけは、私が最も好きな建築家であるフランクロイドライトの師匠だったルイスサリヴァンに関する記述があったから。彼は1900年からの晩年の時期に仕事が激減し、アルコール中毒で死亡したというのが意外だった。作者はそれをサリヴァンの「神秘主義」を表現した建築スタイルが、「より理性のきかない狂気と幻想の澱み」の中に入り込んだアメリカによって軽々と乗り越えていったとしている。つまり、スウェーデンボルグやエマソンなどに影響を受けた自然と密接に関係した宗教観と神秘主義に支配されたサリヴァンは過剰な装飾へ走っていくが、アメリカ自体は「アメリカ的な神話を失い、西欧という規範を失い、新しい「アメリカ」になろうとしはじめていた。」としている。

    次章のフランクロイドに関する考察でも、ライトは父親が家を出て行ったことによって「女家長」である母との結びつきを断ち切ることができていない「半分だけ生きている」状態の中で神秘主義に走っている、とした。そしてその神秘主義によって生まれる幻想の究極形がブロードエーカーシティだとしている。

    このように、本作は後の章もヒューフェリス、ブルースガフ、ロバートヴェンチューリ、フィリップジョンソン、と20世紀を代表するアメリカの建築家を例として挙げ、神秘主義、宗教、精神分析、などとの関係を論じ、最後にはアメリカの現代建築は蔓延する精神分裂症によって影響されている、というおよそ建築とは無関係と思える論旨を展開している。

    本書には裏づけに乏しいロジックの飛躍と思われる部分も多々ある。特に、ヴェンチューリの作品集では「母の家」の母親が玄関に座っている代表的な写真が必ず挿入されている、これは「不在の父親、父親的な母、そして母を演じる息子」を表している、という点は強引に思える。「母の家」なのだから、母親が座っている写真が使われているのは極自然だと思うのだが、、、

    一方、ほとんどのロジックは「なんとなく分かるような気がする」と思えるもので、この独自な視点は非常に面白い。この作家は建築と社会状況を結びつけた同様の本を書いているが、どれも作者自身の神秘主義・幻想が書かれていそうな題名で、今後もこのような日本人離れした建築論を展開してほしい。

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著者プロフィール

1959年生まれ。建築評論家。多摩美術大学教授。

「2013年 『破局論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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