- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791759842
作品紹介・あらすじ
9・11以降、壮大に構築することは罪悪なのか。超高層ビルが瓦礫化する現場を目撃し、廃墟トラウマと虚無感に苛まれる建築家たち。大震災とテロの記憶を思索の中心に据え、構築することの意味を根源から捉え直す-。建築思考の可能性に賭ける熱き提言と分析。
感想・レビュー・書評
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資料番号:010481539
請求記号:523.0/イ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミノル・ヤマサキが気になる。20世紀を生きた日系アメリカ人の建築家であり、「プルーイット・アイゴー団地」や「ワールド・トレード・センター(WTC)」を代表作として持つことで知られているが、僕にはこの二作が歴史的にきわめて面白い素材のように思える、というのも、このふたつの建築はある意味では非常に似ている一方、まったく正反対の価値を担わされているからで、そしてそれはモダンーポスト・モダンという時代区分を考える一つのきっかけになるんじゃないか。今のところ、両方の象徴的な建築で、象徴する事件と関わっているという「史実」からの単なる思いつきの域を出ないのだけれど、でも、少なくとも今まで僕が読んできた範囲の建築の通史においてミノル・ヤマサキという人は紹介されこそすれ詳述されているのは見たことないのであって、ひとつの面白いネタではあるのでは、と友人と話していて、そういえば飯島洋一が少し触れていたよ、とのことでそれが収録されたこの本を読んだわけです。飯島洋一の言及は、自身の現代建築に対する意見つまり20世紀建築のモニュメント性に対する云々、に引きつけてなされたもので僕の興味の方向性とは少しちがうものだったが、どうやらWTC崩壊以前の建築史におけるミノル・ヤマサキの肩身の狭さは証明されたので、佳しとしよう。