現代音楽を考える

  • 青土社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791763689

感想・レビュー・書評

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  • 以前図書館から借りて読んだ本書を、購入し直して再読。
    かつても感じたことだが、ブーレーズの文章は非常に読みにくい。もしかしたら翻訳も良くないのかもしれないが、恐らく原文自体、持って回ったような言い回しや無意味な気取りなどに充ち満ちており、ブーレーズに文才はないなと思う。
    しかし、ブーレーズはドビュッシーやシェーンベルクあたりと同様に文人気質、というか一流の知識人という自覚があって、しかも音楽史上、自分は特別な存在だという自負にあふれている。そうした性格上のいやみさが、冒頭の無意味な一人ダイアローグから明白に現れている。
    私はそもそも、ピエール・ブーレーズの作曲はあまり好きではない。聴いていて退屈なのだ。楽譜を見たら凄く精緻で感銘を受けるのかもしれないが、単にリスナーとして彼の音楽に対峙したとき、格別な感動も衝撃も受けた試しがない。
    それでも、この本に表明されたブーレーズの思考は精密であり、真剣に読解し、気合いを入れて批判しなくてはならないのだろうと感じている。
    どうやら、彼の作曲法思想は、クロード・レヴィ=ストロースの「構造主義」に強く影響されているようだ。音楽要素を幾つかの視点から解析し、表にまとめあげるところなんか、レヴィ=ストロースの流儀そのものである。
    ブーレーズは音楽とは芸術であると同時に「学問」である、と語る。
    確かに「学問」であれば、レヴィ=ストロースばりの構造主義分析は有効でないとは言えない。ただし、それはそのまま「芸術」の創作行為と合致できるのかどうか、というと、私にはどうも疑わしく思われる。
    学問的知解の方法論と、とりわけ音楽のような生理的・感情的な受容の側面がつよい「芸術」の生成手法とは、そう簡単には結びつかないような気がするのだ。
    ロマン主義的な「感情」を知的構成によってほぼ完全に駆逐するのがブーレーズの企てなのかもしれないが、それならシュトックハウゼンやヘルムート・ラッヘンマンの音楽の方が面白いし、「感動的」な面をさえ持っている。
    だから私はブーレーズのこのような思考に批判的にならざるをえないのだが、私も好きなレヴィ=ストロースの影響圏内にありながら、彼はどこで間違ったのだろうか。
    この問題は是非とも解決したいところだが、なにしろ本書はあまりにも読みづらい。そして私も、まだまだ「音楽」について考えを整理できていないのだ。

  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90182864

    (推薦者:人間発達文化学類 嶋津 武仁先生)

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著者プロフィール

(Pierre Boulez)
1925年生まれ。フランスの作曲家、指揮者。第2次世界大戦後の西欧前衛音楽界で指導的役割を果たし、また20世紀音楽を中心に傑出した指揮活動を展開。フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)創設者、初代所長。日本語訳に『意志と偶然』『魅了されたニューロン』(法政大学出版局)、『ブーレーズ音楽論』(晶文社)、『参照点』(書肆風の薔薇)、『クレーの絵と音楽』『ブーレーズ作曲家論選』(筑摩書房)、『現代音楽を考える』『標柱』『ブーレーズは語る』『エクラ/ブーレーズ』(青土社)、『ブーレーズ-シェフネール書簡集1954-1970』(音楽之友社)、『ブーレーズ/ケージ往復書簡1949-1982』(みすず書房)がある。2016年1月5日逝去。

「2020年 『ブーレーズとの対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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