- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791775385
作品紹介・あらすじ
水木しげる、中沢啓治、高畑勲から、こうの史代まで。
戦地から引き揚げたもの、空襲を生きのびたもの、被爆者として生きるもの……。戦争で生き残った表現者たちは個別の方法でそれぞれの経験の物語を作り上げてきた。かれらが描いた戦争・戦後とはいかなるものか。そして、これからの世代はどのように語り残していくべきか。これから先もずっと読まれ、観られ続けるべき作家、作品たちを精緻に読み解く。
感想・レビュー・書評
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著者が2011年から2022年にかけて取り上げた戦争記憶とポピュラー・カルチャーをめぐる論文に、書き下ろしの第1章を加えた一冊。水木しげる、加藤泰、中沢啓治、別役実、大林宣彦、高畑勲、こうの史代らの作が論じられる。文学作品は取り上げず、映画・マンガ・アニメーションの描く「戦争」「原爆」に焦点化されている。
読みながら、なぜこの本が面白く感じられないのかをずっと考えていた。確かに著者は手際よく整理されたたくさんの情報を教えてくれる。基本的な目配りを怠らず、関連作品や先行研究も押さえられている。
にもかかわらず、この本には「分析」と「思考」が欠けている。取り上げられた作品のストーリーの解説はそれなりになされているが、具体的な細部に関する関心や、作中に張りめぐらされている記号や表象のネットワークを浮上させ、その論理を見出していくというタイプの議論が欠けているのだ。だから、どうしても記述が表面的なものとなり、「この本と共に考えた」印象が残らない。読後感が福間氏の一連の著作と似た感じなのは、そうした著者の記述のスタイルによるものだろう。
いちばん勉強になったのは大林宣彦を論じた箇所だが、単に自分が知識不足だったせいだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示