非営利法人の消費税インボイス制度Q&A-事業ごとの影響と対応―

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  • 税務研究会出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784793127229

作品紹介・あらすじ

●公益法人、社会福祉法人、NPO法人等の非営利法人は、消費税の免税事業者であることが多く、その関係者にはインボイス制度を知らないという方も多数見受けられます。
●しかし、令和5年10月にインボイス制度が導入されると、非営利法人から物品の購入やサービスの提供を受ける事業者は、インボイスの交付を受けられなければ仕入税額控除ができなくなります。一方、免税事業者との取引が多い課税事業者である非営利法人の場合は、インボイスの交付を受けられないことで消費税の負担が大きくなります。このように、インボイス制度の導入は、非営利法人の経営環境にも大きな影響を与えることが予想されます。
●本書は、非営利法人のインボイス制度への対応に向けて、消費税の仕組みや非営利法人の仕入税額控除の特例計算、特定収入の範囲などの基本的な項目を押さえつつ、非営利法人における就労支援事業等、委託販売(地場産品販売店等)、健診機関・予防接種機関などの具体的な事業ごとのインボイスの取扱いと対応について検討しています。また、電子インボイスの保存や帳簿の電子化などの電子帳簿保存法対応についても解説します。
●非営利法人のインボイスの取扱いや対応について知りたい方におすすめの一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 非営利法人におけるインボイス制度対応について書かれた書籍。他に類書を見ないだけに非常に意欲的な内容だ。主として免税事業者対応が多かった。この点、シルバー人材センターで顕著な問題が出てくるのは今後の大きな課題となるだろう。
    P253
    (2) シルバー人材センターにおける影響と対応
    ① シルバー人材センターにおける影響
    イ会員と免税事業者
    上記(1)④のとおり、シルバー人材センターの各会員は、シルバー人材センターからシルバー人材センターが受注した業務を下請けとして請負又は委任を受けて役務の提供を行い、その役務の提供の対価すなわち課税資産の譲渡等の対価として配分金の支払を受けることから、給与所得 者ではなく消費税法上の個人事業者に該当します。
    一方、各会員の行う業務は、臨時的かつ短期的な就業又はその他の軽 易な業務に係る就業であるため、年間の課税売上高が1,000万円を超えることはほとんどないものと考えられ、ほぼ全員が免税事業者に該当す ることになります。
    (略)
    ③シルバー人材センターにおける対応
    本則課税の適用を受ける課税事業者であるシルバー人材センターにおいては、課税仕入れ等の大部分が会員への配分金の支払となるため、インボイス制度導入による税負担の増加は、これを放置すると法人の存続基盤を危うくするほどの問題です。しかし、その事業の形態上、 シルバー人材センターとして対応できる範囲は限られます。
    イ適格請求書発行事業者への登録要請の適否
    課税事業者が、インボイスに対応するために、免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することはできます。
    ただし、会員はほぼ全員が免税事業者であり、課税事業者になるメリットは全くないことから、登録は困難であると思われます。
    ロ取引条件の見直し
    インボイス制度の実施後の免税事業者等との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者である会員に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分(経過措置により仕入税額相当額の80%又は50%に制限される分)について、会員の仕入れや諸経費の支払に係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格を引き下げることができます。
    現実的にはこの対応にならざるを得ませんが、再交渉が形式的なものにすぎず、取引上優越した地位にある事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となりますから、注意する必要があります。
    したがって、会員との間で、取引価格等について再交渉する場合には、その事業の内容も踏まえて十分に協議を行い、仕入側の事業者の都合のみで低い価格を設定する等しないよう、注意する必要があります。
    ハ 特定費用準備資金の活用
    公益社団法人又は公益財団法人において、将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用に係る支出に充てるために特定費用準備資金を保有することが認められています(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則18)。
    このため、公益目的事業の収支が黒字である場合には、上記イ若しくは口の対応を整えるまで、又は法令改正等により影響が緩和されるまで、インボイス制度導入後の消費税の負担増加の支出に充てるため特定費用準備資金に積み立てて、これに対応することが考えられます (公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律5⑥)。
    P259
    ① 本部と支部の合算
    各支部において収入及び支出の事務を行い、記帳を行っている場合であっても、最終的に決算書、法人税、消費税等の申告は、本部と各支部を合算して処理を行います。
    公益社団法人及び公益財団法人においては、公益認定に当たって、支部の事業、経理は本部と一体のものとして、公益目的事業比率、遊休財産額の見込みなどを計算するとともに、各事業年度に係る計算書類は法人全体のものを作成して提出しなければならないため、この運営形態になります (公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律4、5八・九、公益法人制度等に関するよくある質問(FAQ)問Ⅲ-1-①)。
    ②支部を別法人として処理
    支部は人格のない社団等として、本部からの交付金や支部独自の会費により本部とは独立して運営、経理を行い、本部の決算書、法人税、消費税等の申告に含めないで処理します。
    ③支部を別経理、申告のみ合算
    ②と同様に運営を行いますが、法人税又は消費税の申告のみ、本部と支部を合算して処理します。

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著者プロフィール

田中 正明(たなか まさあき)

1960年兵庫県生まれ。
1992年税理士試験合格。
1993年税理士登録。
1998年神戸にて税理士事務所開業。
2010年行政書士登録。
現在、TKC近畿兵庫会会員。

【主な著書】
『Q&Aでわかる社会福祉法人の税務』
『介護事業のここが知りたい運営と経理の実務』(共著)(以上、税務研究会出版局)
『〔改訂新版〕新しい社会福祉法人制度の運営実務 -平成29年施行社会福祉法対応版-』
『[改訂第二版]社会福祉法人の会計実務』(共著)
『公益法人の会計と税務』(以上、TKC出版)ほか

「2022年 『非営利法人の消費税インボイス制度Q&A-事業ごとの影響と対応―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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