名将たちはなぜ失敗したか

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794212146

作品紹介・あらすじ

野村克也はなぜ阪神でダメだったのか。戦力的にもっとも恵まれた巨人から名将がでないのはなぜか。森、仰木、上田、広岡、古葉、権藤など、特筆すべき采配を振るった監督を取り上げて、彼らの敗因と名監督の条件を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 先日、戦国合戦の通説を覆す、という、この本の著者の本を読んで大いに楽しませていただきました。工藤氏の書かれた本は初めてであったので、図書館で検索してみたところ、この本に出会いました。

    「名将」と書かれているので、てっきり戦国武将と思いきや、この本で取り上げられていたのはプロ野球の監督についてのお話でした。

    最近の私は、プロ野球鑑賞はかなりご無沙汰していて、最近は交流戦というせパリーグが対戦する期間がかなり長いようですね。昨晩テレビで偶々、原監督を見て懐かしい気持ちがしました。なんせ私は彼が東海大相模高校で活躍していた頃を知っていますからね。

    この本の面白かった点は、プロ野球を私がよく見ていたころに活躍された、監督や選手、記録に残った試合等が採りあげられてことです。この本が書かれたのは今(2015)から10年以上前です。

    記録に残った試合の裏話についても書いてあって面白かったです。歴史について詳しい著者と思っていましたが、プロ野球も相当詳しそうですね。掘り出し物に出会えた気分です。

    以下は気になったポイントです。

    ・要するに、野村監督のID野球の実体は「阪神をカモにした野球」で、IDに無防備だった「阪神がいなければ成立しない野球」であった(p11)

    ・95年、日本一を達成して、野村はめでたく契約延長、球団に頼み込んで息子をドラフト三位で指名してもらった。それまで野村は長嶋親子を徹底的に批判していたので、言行不一致も極まった(p16)

    ・六人もの継投を六試合も連続して成功させた野村は、継投の名人と言える(p19)

    ・ファンが、広岡を名将としない理由として、自分を選んだ球団フロントと対立した、さらに、正論を主張するものの、それにともなう摩擦、失敗についてのファンの疑問に答えていない(p29)

    ・阪急の上田監督は、4万人に近い観衆やテレビラジオのファンを無視して、一時間以上も抗議をした、41歳、すでにシリーズ三連覇を達成していたのに(p37)

    ・仰木マジックというわれるが、彼に見分ける眼力があ
    るわけでなく、旧戦力を使わないだけ(p47)

    ・1988.10.19のロッテ対近鉄のダブルヘッダーは、パリーグ史上、記録に残る試合である。近鉄は、世界共通の「野球規則」に従って勝てばいいのではなく、興行上の都合で決められた「ローカルルール」によって、第一試合は9回までに勝たなければならない、第二試合は4時間以内に勝たなければならなかった(p52)

    ・パリーグが時間制限を撤廃して、延長12回まで行うとしたのは94年から。ダブルヘッダーの第一試合の試合制限も12回になった。88年の試合から5年もかかった(p58)

    ・84年に森が西武のコーチをやめたときも、巨人フロントは森の入団を考えたが、監督の王が同意せず復帰できなかった(p61)

    ・広島の古葉監督は、他球団が知るようになったスパイ野球、フロントとの確執、により、名将の肩書がなくなってしまった(p76)

    ・74年、監督に就任した長嶋は、川上がチームに残すようにアドバイスした、ベテランコーチ陣、すべて切った。これが名将への道を遠ざけた(p130、137)

    ・あれだけカリスマ性がある長嶋が、参謀やコーチに恵まれないのは、人材がいなかったからではなく、彼が「他人の話に耳を傾けない」から(p132)

    ・原が以前の4番打者(川上、長嶋、王)と違ったのは、三人が打者として晩年に四番としての誇りを失う前にバットを置いたのに対して、原は故障に悩み、四番から外れベンチを暖めと、もがき苦しんだ末にバットを置いたこと。持病のアキレス腱がなければ、ホームラン数(382)は、長嶋(444)に匹敵しただろう。この屈辱が原の監督として他の三人と異なること(p150、152)

    ・星野は、企業のトップの懐に飛び込んで、心をつかんでしまう。マスコミやファンを味方につける演技もうまかった(p173)

    ・凡庸な監督の見分け方、1)ローテンションを守らない、2)打線が固定しない、3)愛の鞭が好き、4)選手を育てない=選手を見る目と決断力なし、5)好き嫌い激しい、6)投手が打たれたのを、捕手のせいにする、7)負けるとミーティング(p224)

    2015年6月7日作成

  • (単行本 - 2003/5/20)

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著者プロフィール

横浜生まれ。明治大学卒業。ラジオ局に入社後、アナウンサー、ディレクターとして野球、ラグビー、サッカー等を取材。1989年度日本経済新聞・テレビ東京共催ビジネスストーリー大賞受賞。1992年度NHK「演芸台本コンクール」佳作入賞。2012年度東京千代田区主催ちよだ文学賞受賞。『信長は本当に天才だったのか』『プロ野球 誤審の真相』『プロ野球  球団フロントの戦い』『プロ野球 最高の投手は誰か』(以上、草思社)、『Jリーグ崩壊』(総合法令出版)、『小説安土城炎上』(PHP文庫)など多数。

「2017年 『文庫 戦国合戦 通説を覆す』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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