- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794212764
作品紹介・あらすじ
1942年から45年まで、ヒトラーのお気に入りの秘書として第三帝国の心臓部で働いていた女性が、ヒトラーの素顔や側近たちとの交流を、若い女性の視線で書き記した臨床感あふれる手記。戦後まもない時期に書かれ、50年の時を経てはじめて公開された貴重な証言である。
感想・レビュー・書評
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映画「ヒトラー最後の12日間」を見ていたので、映画をなぞる感じで読み進んだ。最初の森を歩く場面とか、最後の地下壕の中とか、映画そのままの記述、いや映画が参考にしているんだからあたりまえなのだが、映画はこの手記の空気が現われていたんだとわかった。本だと地名も書いてあるので、地図で確かめながら読んだ。
解説では、1947年から48年にかけて、トラウデン・ユンゲが手記を書いたものがほとんど修正のないまま載せてあるといい、最初と最後に「アンネの伝記」の作者メリッサ・ミュラーがトラウデル・ユンゲの履歴を補足した文を加えて出版されたとあった。
実際、このミュラーの解説文でこの秘書官が秘書になるまでの家族の状況とか、そしてヒトラーが自殺してから出身地であるミュンヘンにたどり着くまで、そしてその後の人生などが分かった。
それによると、ミュンヘンに住んでいたがとにかくベルリンに行きたくて「総統官邸の秘書」として採用されて、総統のところへ”派遣された”のだが、やはりこのヒトラーの秘書で終戦を迎えた、ということがトラウデル・ユンゲさんのその後の人生を大きく左右しているのがわかった。
また映画でゲッペルズ婦人が「ナチスの無い世界で生きるなんて考えられない」と言って子供を殺したのだが、映画だとナチス社会に心酔しているように見えた。だがこの本では、「うちの子たちは、恥と嘲笑の中で生きていくよりも死んだ方がましなのよ。戦後がどうなろうとも、ドイツという国にうちの子供たちの生きる場所はないわ」という記述があった。
1942年に秘書となったあと、1943年6月19日に、職場結婚ともいえる、ヒトラーの世話係・従卒をしているハンス・ユンゲと結婚している。始終顔を見ていた同僚、という感じだが狭い空間で親しくなったのを秘密に出来ず、それなら結婚してはとヒトラーから進められて結婚に至ったとある。結婚の幸せはボーデン湖畔での休暇の4週間しか続かず、その後ハンスは入隊し44年に戦死した。
ハンスはヒトラーのお気に入りだったがハンス自身はヒトラーの身辺から離れたいと強く思っていて、それはあまりにヒトラーの思考の世界に影響を受けてしまい、何が自分の本質で何が他人からの精神的感化だったのか、わからなくなってしまうのではないか、というのに気づいた、数少ない1人だったとある。
解説では、終戦後20年くらいは、ドイツでは戦争に触れないという空気があり、心の落ち着きがあったが、60年代も末になると戦争の検証がされるようになり、またヒトラーの秘書としてその遺書もタイプしたことからインタビューの依頼がかなりあり、恋人の死などもあり、抑鬱状態が続いていたとあった。
インタビューによる映画からの引用だと思うが、解説の最後では、
「私は世間から身を引き、罪悪感、哀しみ、悩みを内にぐっと秘めていました。ところが突然私は時代の証言者として関心を引くようになったのです。そのことが私の罪悪コンプレックスを混ざって、ひどい葛藤に陥りました。というのは、そのような会話では罪の問題などまったくどうでもよく、ただ歴史上の事実だけが重要です。ですから、弁解の必要もなしに報告できたのです。こんな事情がもっと私を苦しめました。そして考えることももっと多くなりました。」
2002 ミュンヘンで発行
2004.1.18第1刷 2004.3.10第2刷 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お気に入りの秘書から見たヒトラーの最期までの日常。ここに描かれてるのは私が学んだ悪の権化ではなく、悩める人間ヒトラーの一面と彼を煽る取り巻きの面々。ヒトラーが自分の周りにお気に入りしか置かなかった所が某国のトップとかぶって仕方なかった。秘書いわく、自分は裏方の一員でしかなく舞台上で何が行われてるかはわからない。この一節は普遍的で心に響いた。
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ヒトラー最期の12日間の原作?だったと思う。
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「ヒトラー~最期の12日間~」の原作
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1942-45年、ヒトラーのお気に入りの秘書だった女性の回顧録。
ハンナ・アレントのいう「悪の凡庸さ」そのもの。あまりにも身近なところから見るとヒトラーもただの人以外の何者でもないという恐ろしさ。
ヒトラーとその側近の非人道的な犯罪の認識も非難も改悛も、一切一言も言及されないというのもちょっとおぞましいが、歴史的文書であることは確か。
ヒトラー最後の数時間の描写はなるほどという迫真のものがある。
ちなみにこの女性、戦後もなんら裁判にかけられたり、罪を問われたりすることもなく生き延びて、今も自ら罪の意識はないとか。それでいいのかって気がするけど。 -
2010年5月12日
<Bis zur letzten Stunde>
装丁者/藤村誠 -
こんなに近くにいる人も、ヒトラーのほんの一面しか見ていないんだなぁ。ますますわからなくなってしまう。