文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-2)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218797

作品紹介・あらすじ

世界史の勢力地図は、侵略と淘汰が繰り返されるなかで幾度となく塗り替えられてきた。歴史の勝者と敗者を分けた要因とは、銃器や金属器技術の有無、農耕収穫物や家畜の種類、運搬・移動手段の差異、情報を伝達し保持する文字の存在など多岐にわたっている。だが、地域によるその差を生み出した真の要因とは何だったのか?文系・理系の枠を超えて最新の研究成果を編み上げ、まったく新しい人類史・文明史の視点を提示した知的興奮の書。ピュリッツァー賞・コスモス国際賞受賞作。朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代に読んでいたら卒論の視点がもっと深くなったのでは...と。図書館に必ずあったもんなぁ

  • ヨーロッパが抜きん出た理由

    肥沃三日月地帯は伐採などにより土地が痩せて食料生産が続かなかった。
    ヨーロッパは肥沃三日月地帯に気候が近くて雨が多いので、自然が再生しやすく食料生産が拡大できた。

    中国も条件はヨーロッパに近かったが、1400年代の政策により外国への船団の派遣中止で勢力を拡大できなかった。政権が統一されていたため外国への進出が止まった。
    ヨーロッパは大航海時代に他国に進出して植民地化を行った。中国と異なり統一支配されていなかったので外国に進出するような挑戦的なことを支持する支配者もいた。それによりコロンブスも航海に出ることができた。

  • 詳しく評価できるほど理解できたかは怪しいが、文字の重要性や、孤立した状況に置かれると一度手に入れた生産様式を放棄することがあること、ニューギニアとオーストラリアのように、近くでも気候が違いすぎて伝播しないなど、膨大な知識量のみならずそれを張り巡らせたネットワークのように、組織化できてることのすごさよな。

  • 食物生産、家畜、土地の広がりが東西か南北か等の要素が複雑に絡み合って人間の社会性の進化が導かれることを学べた。

  • ヨーロッパ大陸がひと足先に他の大陸よりも有利な発展を遂げたことは議論された。「ではなぜ同じユーラシア大陸にある中国ではなかったのか」という疑問について、エピローグでごく簡単にまとめている。こちらの方が新たな知見が得られた気がしたので、個人的にはエピローグが1番良かった。

    また、本書のタイトルは『銃・病原菌・鉄』とあるが、ほとんどが病原菌と食傷生産について書かれており、銃と鉄についてはそれほど触れられていない。しかし口当たりの良さや覚えやすさを考えると、良いタイトルをつけたなと感心する。

  • 世界は侵略と征服の歴史。結局は文明を発展させた地域が銃と病原菌と鉄で発展の遅れた地域を支配してきて今があり、これからも続く。

    では地域による差はどのようにして生まれたかを明快に説明したのが本書。

    ・農業に適する原生植物が近くにあったかどうか
    ・家畜化に適する動物がいたかどうか
    ・大陸が東西に長いか、南北に長いかは文明の伝播速度つまり発展速度に大きく影響する。

    本書でユーラシア大陸が他の大陸より有利な条件で発展したところまではすんなり理解できたが、
    ではユーラシア大陸の中で中国やインドではなく西洋文明が覇権を握ってる理由に対しての説明は薄い。
    時の中国の指導者が対外航海を禁止したから、だけなのか。
    もっと知りたくなるという意味で良書。


  • 本書を一言で要約すると、今日の人間社会のありようがかくも多様なのは、大陸ごとの食糧生産と哺乳動物の家畜化の開始の時期と伝播のあり方による。ある意味決定論もしくは環境要因論的な要素によるものであり、人種や民族の優劣に基づくものではないということだろう。
    いち早く食糧生産や哺乳動物の家畜化などを実現した地域の人間が狩猟採集社会から定住型生活に移り、人口を増大させ、アメリカやアフリカ、オーストラリアの諸大陸を征服したという流れは一般的ににもよく語られているところである。
    一方、著者はこの要因を、ユーラシア大陸が東西に広がっていることから食糧生産や家畜化の伝播が比較的スムーズに進んだ(=緯度が大きく異なることがないために農作物や哺乳動物の移動にさほどの困難を伴わない)ことに対して、その他の大陸では南北に長いことが要因により食糧生産並びに家畜の伝播が遅い、もしくはできない(=赤道をまたぐような緯度の変化は、農作物や哺乳動物の移動を困難にする)ことが要因であることを示唆している。
    そして、哺乳動物を家畜化した農耕民は、狩猟採集民に対する最大の武器を手に入れた・・。それが病原菌だという。農耕民は哺乳動物との濃厚な接触により、様々な感染症に対する免疫を身につける。この病原菌は、やがてヨーロッパ人が大陸に行き着くたびに現地の人々を壊滅的に追いやった。
    巨視的な視点で描かれ、豊富な示唆に富んだ書。

  • 第3部が非常に良かった。
    2部までの人類と食料生産の流れを、さらに発展させて言語と技術にまで派生する。その流れからの大陸毎の話(4部)がまた再度読み直したくなる深さだった。

    著者も文章内で言うように、反論の余地や考察の意味、分類することの弊害を感じているが、そこを加味しても人類史を多視点から考察する意義は非常にあると思う。
    20年以上前の本だが、今も褪せることはない。
    研究もさらに進んでいるだろから、続編や他の人類史系の本を読みたくなりました。

    というより僕自身が人類史にとても興味があることを認識させてくれた本です。
    何故か。
    →長い尺度でみた今の人類のあるべき姿を思考できる。
     問と新たな視点をもらえる。
     当たり前を壊し再構築してくれる。
    上記3つに意義を感じた本です。

  • 狩猟採集生活から農耕への移行、道具の進化、文字の発達、文化が伝播する方向、地理・環境の影響…
    文系でも理系でもない本。
    優劣などなく、ただそこにあるのは環境因なのだ、と。

    これは、とてもとても穿った見方なんだろうと思っているけど、語弊を恐れずに言ってしまえば、近代以降世界が小さくなって人種の行き来が大幅に増えて白人優位主義のようなごく一部の人の中にある差別意識への警鐘でもあるように読んだ。我が国我が人種こそが一番優れているというナショナリズムへの警告であるように感じた。
    長い長い地球の歴史を1年に例えたとき、ホモサピエンスの歴史はたったの1、2分でしかない。その中でも文明が発達したのは数秒。そのたった数秒が何に左右されたのか。ミトコンドリアDNAを辿ればたった一人の女性に行き着くことが示すものは…
    今まで読んできたこと、学校で学んだ知識、いろんな物事がぐるぐると駆け巡った。それらを静かにあるべき場所に納めてくれた本だった。

  • なぜ、同じアフリカに起源をもちながら、ヨーロッパ人は多くのものを持ち、それ以外のものたちは持っていないのか。

    そこに人種的な優劣はなく、ただ食物生産性に優れた地域に住んでいて、それゆえに集権国家が誕生した。文字や文化が発展し、疫病に対する抗体をもつことができ、銃火器を発達させることができた。

    つねに人は、その時々の利益を考えて行動するため、日本の戦国時代に伝来してきた銃は、島国ゆえの文化により衰退して失われ、黒船来航によってその選択は不利益となった。

    中国の強すぎる中央集権国家にも同じことがいえる。
    ヨーロッパ諸国は周りに小国が乱立し、それゆえに互いを牽制し合って技術を発達させていった。
    そういった、地理的要因、環境的要因に恵まれていた。

    未来は不確実性に満ちている。江戸幕府を開いた徳川家康が、250年後に黒船来るから銃火器の技術残しておこうよ、とは言わなかったように。
    それを考えれば、ある特定の人種だけ先見性に優れているというのも不思議な話なので、本書を読んで大いに納得した。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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