文庫 ふたりの老女 (草思社文庫 ウ 1-1)

  • 草思社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220943

作品紹介・あらすじ

飢餓の冬、仲間は老女たちを姥捨てにした。そして2人の必死の旅が始まった。人間の生きる力と古老の知恵を語り継ぐアラスカ・インディアンの感動の伝説。

感想・レビュー・書評

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  • 北方民族の民話、神話に興味があったので手に取ってみたら、これはアラスカインディアンの一族のグループ、グウイッチン・グループの中で語り継がれてきた物語だった。

    狩猟、採集の生活ということは、獲物を求めて移動する生活になる。大きな獲物のムースの群れに行き合わなかったりすれば、グループは飢餓に陥る。そこでグループのリーダーは、真冬の最中に、老人ふたりを残して移動すると決める。
    80歳のチディギヤークと、75歳のサ(星という意味)は、こうして残された。サは、死を受け入れないと、半ば諦めていたチディギヤークを説得する。かつては男のように狩りを楽しんだサは、文句ばかり言う老人だったことをやめ、その知恵で生きようと決心する。ふたりは痛む体に鞭打って、夏のキャンプ地だった川へと向かう・・・。

    淡々と語られる物語を、想像力を動員して読み進むと、老女が置かれている状況がどんなに過酷なものか驚く。食べるものや、極寒で生き延びる知恵、自然のスケールの大きさ。それでもだんだん光のさす方向へと向かう物語は、最後に素晴らしい結末を迎える。
    地味な本だが、大人も子どもも、ぜひ読んで欲しい物語だと思った。これは英雄の物語でもあるし、老人の持つ知恵の物語でもある。作者は現在も、狩猟、採集の生活を続けながら執筆しているという。
    余談ながら、草思社文庫のラインナップを見ると、面白そうな本がいくつかあった。

  • 「無力とは何か」実家の母が年一で読むというその理由が深く納得させられる内容だった。

  • 厳しい冬、アラスカ先住民族の部族全滅の危機に晒された人々が老女二人を置いて移動する事に。置き去りのされた二人が力を合わせて生き延びる物語。
    『老い』に胡坐をかき部族の人々に養われるのが当然と思っていた二人が突然厳しい環境に放り出され、死を受け入れるのかと思いきや蓄えた知識や技術を使い老体を鞭打ちながらも生き抜く姿はとても力強かった。

  • どんな歳でも、諦めずに自分で終わらせないこと。繰り返し読んで蓄えておきたい。

  • "アラスカの先住民の伝説。日本では楢山節考という映画があったが、生きていくために生活している集団での、口減らしのために老人を切り捨てる過酷な世界で生き延びた二人の老女の話。
    生きていくために必要な知恵が随所にちりばめられている。
    例えば
    感謝の気持ちを忘れていては、いずれ見放されることになる。
    リーダーとの対立がどんな結果をもたらすか。
    その結果を恐れて自分を引くのか?あるいは、自らの正義を貫くべきか。
    見捨てられた仲間との和解。

    いずれも、こうあるべきだという説教めいたことではなく、淡々と語られる物語。

    選択肢は、いくつもあり、何が正しかったかはわからない。
    でも、二人の老女がとった行動は、困難な道であるがゆえに、生きることの意味、人生とは何か?という深い問いかけが生まれてくる。"

  • アラスカ・インディアンの部族で、足手まといになる老女二人を置き去りにしたが、その二人がとてつもない頑張りを見せて見事生き残るという話である。
    うん、すごくおもしろかった!
    こういう、見くびられ疎まれた老人が活躍する話は大概おもしろいとは思っているのだけど、しかしその中でもおもしろかった!

  • 北方に住む人びとの伝説。人間の持つ生命力の強靱さに圧倒される。

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著者プロフィール

1960年アラスカ生まれ。アラスカ原住民の作家。伝統的な狩猟・採集生活をしながら執筆活動を続けている。『ふたりの老女』は母メイより聞いた伝説を書き留めた作品で全米で大反響を起こした。

「2014年 『文庫 ふたりの老女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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