文庫 名編集者パーキンズ 下 (草思社文庫 バ 1-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794221339

作品紹介・あらすじ

アメリカ文学がもっとも輝きを放った時代、『華麗なるギャッツビー』『日はまた昇る』『天使よ故郷を見よ』などの名作をつぎつぎと世に送り出し、一時代を築き上げた名編集者パーキンズ。世界恐慌や第二次世界大戦の社会不安、作家との死別、家庭の不和や悲劇に直面しながらも、たゆむことなく仕事に向かい続けた人生だった。出版に情熱のすべてを賭けたパーキンズの仕事と人間像を描きだす。全米図書賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • フィッツジェラルドやヘミングウェイ、トマス・ウルフを見出した編集者の生涯。力作。

  • ひたすら悲しかった。ある批評で、作家として推敲することや、物語を
    構成する能力を欠き、パーキンズがいなければ作品を発表することが
    出来ないと酷評されたことで、トマス・ウルフはパーキンズと袂を分か
    つことになる。

    ウルフがパーキンズに投げつける理不尽で攻撃的な言葉に、きっと
    パーキンズは傷ついていたのだろう。プライベートでは5人の娘を
    授かったパーキンズにとってウルフは自分の息子のような存在でも
    あったのだから。

    それでもウルフにとって、パーキンズは特別な存在だった。ウルフの
    日記の引き裂かれたページにはパーキンズに宛てて「あなたに会う
    まで、わたしには友人がいなかった」と書かれていた。

    本書を元に映画化された「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
    がトマス・ウルフとの関係に焦点を当てたのも分かる。ふたりは作家と
    編集者との関係以外にも、息子と父であり、生徒と教師であり、長い
    時間を過ごした友人でもあったのだもの。

    続くフィッツジェラルドの死もパーキンズにとっては衝撃が大きかった
    のだろうと思う。それでも、トマス・ウルフが37歳の若さで結核性脳炎で
    亡くなったことの打撃は計り知れない。

    晩年のパーキンズには以前の情熱は失せていたのではないのかな。
    若い作家を発掘し、作品を世に出し、読者に届ける。編集者としての
    仕事は連綿と続いているのだが、フィッツジェラルドやヘミングウェイ、
    ウルフの作品を世に知らしめようとした時のエネルギーは残っていな
    かったと思う。

    作家志望の若者から持ち込まれる原稿は引きも切らなかったけれど、
    作品を選別する勘さえも鈍っていたようだ。

    上下巻合わせて、パーキンズ本人の手紙や作家たちからパーキンズに
    宛てた手紙、パーキンズ本人を知っていた人々に取材して書かれた良書。

    自身が手掛けた多くの作家、友人の死を見送り、名編集者は1947年に
    肺炎により62歳で死去した。

    パーキンズがいたからこそ、私たちは今でも『偉大なるギャツビー』『武器
    よさらば』などが読めるんだよな。作家と読者の架け橋となった名編集者
    に感謝を。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00236134

  •  彼の不完全さを示す証拠は、これまでのところ、芸術家に不可欠なある要素がウルフ氏ではなく、マックスウェル・パーキンズにあったという事実である。彼の本にあらわれている統合力や鋭い洞察力は、この芸術家の内面から出たものでもなく、形式や審美的統合性にたいする彼の感性によるものでもなく、すべてチャールズ・スクリブナーズ・サンズのオフィスから生まれたものなのである。

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