- Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794221803
作品紹介・あらすじ
決起将校に「国家革新」の覚悟はあったのか。人事、組織、将校の心理、戦場の環境、戦略方針。情緒性を排し、この首都最大の騒乱を戦史としてとらえて評価を下す!
感想・レビュー・書評
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2.26事件に対して持っていた,純真な青年将校の悲劇というイメージを覆してくれた本。
士官学校の文化や当時の軍人を巡る環境まで掘り起こされたことで事件が一気に身近になった。
決起将校らの無計画な行動は手厳しく批判されているが,このような評価こそ,彼らへの真の理解だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2・26は参加した青年将校たちの国家改造や昭和維新を追求する華々しいイズムにスポットが当たりがち。しかし、本書は彼らの生々しい動機にスポットを当てる。
中尉時代までに陸軍大学校へ入学できるか否かで分かれる人事に対する不満。テロが日常となり、現役軍人がテロ行為の計画や予告をほのめかしても罰せられない風潮。さらに5・15をはじめとして、実際のテロ実行者が激励の手紙を大量にもらえる程の世論の後押し。または満州や朝鮮国境での独断先行の容認実例など。
第1師団の大陸への移駐が迫るなか、青年将校たちが彼らの言うところの「義挙」の誘惑に駆られる様子が、現代の価値観で生きる者にも想像しやすく描かれている。
2・26を語るうえである程度避けて通れないだろうが、筆者はずばずばと辛口な人物評をしていくので、読者によって本書自体の好みが分かれそう。出典が不確かな記述が多いが、当時の空気感がイメージできておもしろい。
本書の終盤で、一見クーデター的な2・26の本質を中世僧兵の強訴に見出している。政権奪取や政府の転覆まで求めなかった中途半端な行動に対して、わかりやすい説明になると思う。