文庫 ドイツ現代史の正しい見方 (草思社文庫 ハ 1-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224651

作品紹介・あらすじ

ヒトラーによる権力掌握はドイツ史の必然だったのか?
第二次世界大戦が起こった真の理由とは?
独自のヒトラー論で知られる歴史家ハフナー(1907-1999)が、
ドイツ現代史の分岐点となった数々のトピックスを取り上げ、
「歴史のイフ」を考察した刺激的な一冊。
ドイツ現代史のポイントを、同時代人としての視点を織り込みながら解き明かす。



序章 歴史はつねに創作される

第1章 ローマ帝国の巨大な遺産
ローマ帝国が実質的に滅んだのはいつか
国民国家の誕生がローマを滅ぼした
ローマ時代と現代は似ているか

第2章 人工国家プロイセンの興亡
またたくまに消えた大国
純粋理性国家の強みと弱み
「軍隊が国家を所有した」の実像
「人こそは最大の宝」
軍国プロイセンのあっけない終焉
軟弱なロマン主義国家への変貌
プロイセンからヒトラーは生まれなかった

第3章 ビスマルクのドイツ帝国建設
最初は統一を断念していたビスマルク
歴史の分岐点となった普仏戦争
ビスマルクの天才的トリック
買収されたバイエルン王

第4章 セダンの勝利の呪縛
君主制の終焉がはじまった日
その後の独仏関係を決定づけたセダンの戦い
軍事的耽美主義に蝕まれた指導者たち

第5章ヴェルサイユ条約の逆説
福音が悪夢に変わったのはなぜか
「ドイツの欠点はフランスより二千万人も人口が多いこと」
なぜドイツは条約を拒否しなかったのか
ワイマール共和国の悲しき船出

第6章 ヒトラーはなぜ権力を手にできたのか
誰がワイマール共和国を殺したのか
うわべだけの戦後復興
ワイマール憲法の二面性
ドイツ人はヒトラーに何を期待したのか
政権をめぐる奇妙な三角関係
国防軍と労働組合
ヒトラー、全権掌握

第7章 第二次世界大戦はいつはじまったのか
一九三九年九月は決定的なポイントではなかった
宣戦布告後も続いていた宥和政策
ヒトラーに反旗を翻したポーランド
世界戦争への道を開いた各国の誤算

第8章 ドイツはなぜ間違ったか
ドイツ史を貫く非理性主義の系譜
国家の究極の目的は自己保存
大きかった政治的無分別の代償

第9章 ワイマール憲法が失敗してボン基本法が成功した理由
憲法をめぐる理想と現実
予想外の成功を収めた基本法
運にもタイミングにも恵まれていた基本法
楽天家のワイマール憲法、人間不信の基本法
有権者の権利を制限する
国家は政党である
再統一は地方から

第10章 奇跡の老人アデナウアー
七十歳を過ぎて大舞台に登場
ヒトラー以前のドイツを体現する政治家
「西側陣営の言いなり」という非難
ビスマルクとアデナウアー
ドイツ帝国百年の歴史から得られた教訓

感想・レビュー・書評

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  •  『ヒトラーとは何か』がとても面白く読めたので、本書を手に取ったが、ナチズム関係以外はあまり知らなかったドイツ近現代史の勘所を、著者ならではの切り口、グイグイと進む語り口に魅せられて一気に読み通した。

     第二章「人工国家プロイセンの興亡」では、フリードリヒ大王やオーストリアとの角逐くらいの知識くらいしかなかったプロイセンの特異性を改めて知ることができたし、第三章「ビスマルクのドイツ帝国建設」では、華々しい偉業と思っていたドイツ統一の裏事情が生々しく描かれていて、面白すぎである。

     各章興味深いテーマであるが、圧巻はやはり第六章「ヒトラーはなぜ権力を手にできたのか」であろう。ドイツ国民が総選挙でなぜナチスに投票し支持を与えたのか、大統領ヒンデンブルクが嫌っていたヒトラーをどうして首相に任命したのか、そうした問いに対して、ハフナーは明快で説得力のある答えを与えてくれる。

     歴史学的には著者とは異なる考え方や説が当然あるだろうと思われるが、歴史の見方、捉え方が明確に打ち出されていて、清々しく読むことができた。

  •  『図説 プロイセンの歴史―伝説からの解放』で有名なハフナー氏による歴史エッセイ。古代ローマの時代から、プロイセン王国とドイツ統一を経て近現代に至るまでのプロイセン・ドイツ史を概観した内容。
     わたしは上記の『図説 プロイセンの歴史』を読んだことがあるのだが、プロイセン関連の部分では概ね共通したものになっているように感じた。ハフナー氏は『図説 プロイセンの歴史』の他にも『ヒトラーとは何か』を書かれているが、この『ドイツ現代史の正しい見方』はそれらの著書を読む際の入門書となると思う。
     ただ、巻末の訳者あとがきで、ビスマルクによるドイツ統一と日本の明治維新の動きとを比較しようと試みられているが、個人的に無理があるように思えてならなかった。

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著者プロフィール

セバスチャン・ハフナー(Sebastian Haffner)
1907年生まれ。ドイツの著述家、ジャーナリスト。ナチス政権下の1938年にイギリスに亡命し、「オブザーヴァー」紙で活躍。第2次大戦後、ドイツに戻り、政治コラムニストとして「ヴェルト」紙、「シュテルン」誌などを拠点に活動。著書に『ヒトラーとは何か』(草思社)、『ドイツ帝国の興亡』『裏切られたドイツ革命』(ともに平凡社)、『ナチスとのわが闘争』(東洋書林)などがある。1999年没。

「2020年 『文庫 ドイツ現代史の正しい見方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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