清少納言を求めて、フィンランドから京都へ

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  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794225283

作品紹介・あらすじ

セイ、あなたと私は驚くほど似ている――。

遠い平安朝に生きた憧れの女性「セイ」を追いかけて、
ヘルシンキから京都、ロンドン、プーケットを旅する長編エッセイ。

仕事にも人生にもうんざりしたアラフォーシングルのフィンランド人「私」は、
長期休暇制度を使って日本へ旅立つ。目的は「清少納言を研究する」ため――。

うだるような京都の夏の暑さ、ゴキブリだらけの「ガイジンハウス」、
同居人たちとのドタバタ劇、博物館や図書館での資料探し、
東日本大震災による精神的混乱、深夜のバーでの友との語らい、
この世のものとは思えないほど美しい桜、女性が生きていくことの困難さ……。
新しい人生へと旅立つ期待と不安を、鮮烈に描いたデビュー作!

■目次
Ⅰ 始まり。十月
   清少納言について知っていること
Ⅱ エスポー。冬から夏
   長期休暇――助成金――研究――傲慢と恐怖――引っ越しと出発
Ⅲ 平安京へタイムスリップ
   美と歌の世界
   平安時代の女たち
   仮名文字
Ⅳ 京都。九月
   暑さ――同居人たち――町
   『枕草子』とは何だったのか。様々な伝本
Ⅴ 京都。九月。第二部
   歌舞伎――石庭――坐禅――能――芸者たち
   空っぽの部屋、つまり平安時代の調度品
   後宮、つまり女たちの世界
Ⅵ 京都――九州。十月
   庭園――宇治――比叡山――金運稲荷たち――列車の旅――美容院にて――手蹟テスト――苔庭にて――セイ、あなたが見える
   宗教と食事について
   セイ、あなたはどう思われている?
   友だちノート、つまり清少納言って誰?
Ⅶ 東京――京都。十一月
   大都市――日文研塹壕――ヴォーグ
   嫌味なセイとムラサキ――二人の宮廷女房の争い
Ⅷ フィンランド――ロンドン。冬
   ものづくしの秘密
   ヴァージニア・ウルフと女性事情――セイ
   四十二人のセイ――訳書
   脱線とセイの後継者たち――文学、映画、音楽
Ⅸ 男たちと恋人たち
   恋人との逢瀬
   平安時代の男たち
   セイの男たちと子どもたち
Ⅹ 津波――タイ
Ⅺ 京都。四月
   桜――もののあはれ――兼好と私
   源氏狩り
   和歌テスト
Ⅻ 京都。五月
   坐禅――舞踏――レイのバー
   春画よ、セイ
   宴会と酒飲みについて
   セイの運命
XIII 脱ぐこと、纏うこと
   最後の質問、つまり『枕草子』とは何だったのか?
XIV 終わり――始まり。ノルマンディー。八月から九月

謝辞
あとがき
親愛なるミア・カンキマキさん――訳者解説
参考文献

感想・レビュー・書評

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  • ミアさん、あなたと語りたい。
    ミアさんが見つけたセイについて。
    そしてミアさん、聴いてほしい。
    ミアさんも考えたこと。
    たとえば、セイには本命の恋人がいたのかってこと。いたとするならば、それはいったい誰だったのか……
    たとえば、なぜムラサキが日記にセイと『枕草子』を批判するようなことを書いたのか……、そういうことを。
    セイやムラサキの足跡を辿りながら、想像をいっぱい膨らませて、私が探したあてたセイのこと。
    ミアさんには、ありえないって笑われるだろうけど、そんなことを思いつくままお喋りしたい。
    そうしてお喋りに疲れたなら、吉田ケンコウさんのところへ寄り道してまったりするの。
    一息ついたら、セイの憧れの人でもあったミチナガを敵情視察しなくちゃね。
    あとは……うふふ、ムラサキのお墓の前で、「あなたの日記のおかげでセイが有名になりました。ありがとうございます」なーんて、イヤミを言っちゃったらバチが当たるかしら?

    ああ、フィンランド語や英語が話せたら。もしも書くことができたなら、あなたに手紙を送りたい。
    セイの『枕草子』を、太陽のように朗らかな定子が楽しんだように。定子を一途に愛した一条天皇や藤原伊周、藤原斉信、源経房などの輝く貴公子たちが『枕草子』を面白がったように、ミアさんの綴った物語のようなエッセイは、私にとっての『枕草子』だった……、そう伝えたい。

    平安時代のセイを追いかけてやってきた京。平安の都での賑やかで幸せな日常。『源氏物語』を称賛するヴァージニア・ウルフの書評を求めて旅立ったロンドン。東日本大震災後にタイで過ごした物憂いな時間。
    ミアさんの経験したこと、感じたことが、ありのまま綴られた文章が好きだった。時折チクリと刺さる皮肉もあるけれど、でもそれをユーモアでくるっと包み込んで笑いに変える、それはまるで『枕草子』のセイのスタイル。
    知っているはずのセイの言葉たちが、ミアさんの文章に溶け込むと雰囲気を変え、なんとも軽やかに光りだす。なんてここには「をかし」が溢れているのだろう。こんなふうに古典を自分のものにしていきたい。心からそう思う。
    きっと「をかし」が溢れる楽しい『枕草子』を読んだ貴公子たちも、こんな爽快な気分だったに違いない。もしかしたら、ミアさんが帰国2日前の午前2時(という時間からして!)頃に、バーで出会った最初で最後の『枕草子』を完読した日本人男性って、セイと仲良しだった源経房が挨拶に現れたのかもしれないよ~、なんてね。

    ミアさんの見つけたセイの姿は、まるで田辺聖子さんが『むかし・あけぼの』で描いた清少納言そのもので、それは私の大好きな清少納言像でもあった。
    それから最大の問い、セイがなぜ『枕草子』を書いたのか。ミアさんが平安の都を自転車で駆け巡り、図書館で『枕草子』とセイについての数少ない史料を読み解き、そうやって導きだした答えは、山本敦子先生の著書から私が知ったものとほとんど同じだった。セイへの想いの深さと洞察力の鋭さには脱帽する。
    でも、それ以上にミアさんの感性にハッとさせられたのは、「もののあはれ」がどのような感情なのかをミアさんの言葉で描いていること。この箇所は圧巻だった。感動でぞくぞくした。

    平安時代のセイを追いかけて言葉も何もかもわからないまま京都へやって来たミアさん。ミアさんが徐々にセイへと近づいていくことで、セイはミアさん自身と重なりあっていく。セイに語りかけることはミアさん自身に語りかけること。そうやってミアさんは自分の生き方を見つけていく。

    ミアさんは悩み苦しみながらも、自分の決めた道を進まれたんですね。とってもかっこいいです。ミアさんのその後のご活躍を「訳者解説」で知りました。これからもミアさんの本を読んでいきたいと切に願っています。

    • 地球っこさん
      Minmoさん、こんにちは♪

      はい、読み終わりました(’-’*)♪
      しばらくぼーっと余韻に浸ってます。
      HPなどの情報もありがとうございま...
      Minmoさん、こんにちは♪

      はい、読み終わりました(’-’*)♪
      しばらくぼーっと余韻に浸ってます。
      HPなどの情報もありがとうございます。

      ミアさんの挑戦にはとても元気をもらえましたし、ミアさんとセイの生き方には胸が熱くなりました。
      ミアさんのおかげで、『枕草子』もちゃんと読みこみたいと今、強烈に思ってます。
      あと『徒然草』も、もちろん『源氏物語』も。そして道長や行成、実資の日記も!
      なんというか、古典との付き合い方にも気づけたように思います。
      とてもいい本に出会えました。ありがとうございました!

      たしかに、ちょっと読みにくい部分もありました。
      でもセイからヴァージニア・ウルフまで話は広がっていき、最後はミチナガで締めるなんて、とても面白かったです♪
      早く次の作品が読みたいですね。
      2022/06/18
    • myjstyleさん
      地球っ子さん こんばんは。
      サクッと読了された地球っ子さんが羨ましい。
      レビューを拝見して、ますます読みたくなりました。

      こちらの...
      地球っ子さん こんばんは。
      サクッと読了された地球っ子さんが羨ましい。
      レビューを拝見して、ますます読みたくなりました。

      こちらの図書館では人気が高く、予約したのは去年の10月ですが、
      まだ、前に60人ほど待っておられます。
      手元に来るのはいつになるのでしょう。
      2022/06/21
    • 地球っこさん
      myjstyleさん、おはようございます♪

      ちょっと読みにくいところもありましたが、とても充足感
      に満たされた読了感でした。
      オススメの作...
      myjstyleさん、おはようございます♪

      ちょっと読みにくいところもありましたが、とても充足感
      に満たされた読了感でした。
      オススメの作品です(’-’*)♪

      とはいえ、60人待ちですかー
      myjstyleさんの手元に届くのは、紫式部の大河ドラマが始まる頃だったりして!

      こちらは一人待ちですぐに読めて、わたしの後は誰も予約されていなかったようで、今も図書館に飾られてます……笑
      (こちらのみなさーん、もう少し平安時代にも興味を持ってぇ 笑)
      2022/06/22
  • 「シャイだけど優しくて、いつものんびりリラックスして、それが私のフィンランド人のイメージでした。でもやっぱり、悲しい人は悲しいんですね」
    主人公ミアの悲哀に満ちた冒頭の言葉を目にした瞬間、映画『かもめ食堂』のセリフが頭をよぎった。

    内向的な彼女が憧れの「セイ」(清少納言)に呼びかけるくだりは恋文を覗き見しているみたいで気恥ずかしくなった…と同時に彼女の胸の高鳴りがこれでもかと伝わってきた。(たとえ会話が出来ても、ややこしい性格のセイは本当のことをアナタに話してくれるかしらん?と何故か挑戦的に見ていた…)

    『枕草子』を意識した文体。京都行き(厳密には大阪行き)の航路で「京都」よりも「平安京」に向かうことを強調。セイに親しみを感じるというより、もはや心酔している…
    しかし豊富な知識が反映されたミアの解説/考察に引くどころか、気づけば恥も外聞も忘れて聞き入っていた。今風と言うべきか、ユニークな解釈が初心者をも惹きつけるんだな。(『枕草子』と言うと、自分は「春はあけぼの」くらいしか記憶に生き残っていないから…)

    京ライフの幕が開いてからも無論セイへの呼びかけは止まず、寧ろどんどん熱を帯びるばかり。(「あなたの時代には歌舞伎座はなかったのよね」と、ひょんなことから鑑賞した『義経千本桜』を余すことなくレビューしたり…)
    一方で京ライフのマンネリ化が進み、途中眠い目を擦ることもしばしば。それでも1年間に及ぶ魂の交信を経てどのような終わり(或いは始まり)を迎えるのか、どうしても知りたくてページをめくり続けた。

    "「Ci sei?」。これはイタリア語。意味は「あなたはそこにいる?」よ"

    セイをめぐるミアの旅は東京、ロンドン、果てはタイにまで及ぶ。(タイは研究のためではなかったが)ここまで来ると読者は事の成り行きをひたすら見守るしかない。片や外界に興味を示していたセイならどこへでも文句なしについて行ったのかも。しかし「旅も良いけど早く解き明かしてよ」という手招きに応じるかのように、結局はどの旅も京都に帰着しちゃうのだが。

    『かもめ食堂』では悲しみに暮れるフィンランド人女性の側に(食堂のお手伝いをすることになる)マサコさんが寄り添った。
    それより少し時間を要したが、ミアも幸せに前進できたんじゃないかな。幸福度が高い国の、一人の悩める女性を繋ぎ止めたのがわが国のセイであって本当に良かった。

  • 単調な人生に飽きてしまったフィンランド人のアラフォー独身女性、ミア。かつて夢中になった『枕草子』の作者、清少納言の研究をする、という名目で、一年間の長期休暇を使い、京都にやってくる。

    教科書で「古典」として「習う」対象だった『枕草子』。それを日本から遠く離れた現代のフィンランド女性が、自分と重ね合わせて共感し、清少納言に対して親友のように「セイ」と呼びかける。彼女の視点は、日本人の私にはとても新鮮に映った。

    ミアはきっと内向的な性格なのだろう。日本語でコミュニケーションをとることができないという理由はあるものの、積極的に周りの人を巻き込んでいく、というよりは、少しずつ環境になじみ、人になじんでその魅力に気づいていく。
    紫式部と比べて圧倒的に情報が少ない清少納言について、そして彼女がかつて住んだ京都という街について、身体全体で理解しようとするミアの様子を見守るうちに、いつのまにか昔から知っている友達のような親しみを感じていく。

    本書は、『枕草子』を読み解きながら清少納言の生涯を追うことをメインとしつつ、京都での生活や文化体験を紹介するガイドブックの役割も果たしている。ちょっとよそよそしい部分もあるけれど、食べ物はおいしく、自然が美しい京都の描写は、土地になじみのある私にとっても新鮮な魅力にあふれている。
    彼女はまた、2011年の東日本大震災も京都で体感している。情報がない中での圧倒的な不安と恐怖、周りの人たちの反応について、日本人だとなかなか言葉にできない部分も率直に語っており、当時の生々しい貴重な記録となっている。

    「高慢ちきで自分の才能をひけらかす鼻持ちならない女性」というイメージが強かった清少納言だが、本書を読むと、印象ががらりと変わっていじらしくさえ感じる。読み終わった後は清少納言が大好きになっていること間違いなしの一冊である。

    • たなか・まさん
      この本、面白かったなあ。今日読み終えました。
      この本、面白かったなあ。今日読み終えました。
      2022/02/13
    • b-matatabiさん
      同じタイミングですね。感想を楽しみにしています。
      同じタイミングですね。感想を楽しみにしています。
      2022/02/15
  • この本を登録してから1年ぐらい経過。焦って読み始めましたが、ポップな表紙とは裏腹になかなかボリュームがありますΣ(´∀`;)

    『2000年代のフィンランドは900年代の日本からとても遠い。時間的にも地理的にも文化的にだってお互いにとことん離れている。』
    著者は、清少納言・枕草子・ひいては平安時代を知るために、はるばる京都へ行き、感じたことを清少納言のように書き綴り、図書館や博物館などで調べ物をして、本にまとめていきます。

    私のイメージだと枕草子は「春は〜」の暗記穴埋め問題でしかなかったのですが、より深みのある存在に変わりました。1000年以上前の感性が現代にも通じているということ・平安時代の和歌文化・自然美を求める価値観・外国から見た日本・もののあはれ…。
    学生のときとは違う切り口で考えられて嬉しいです。

    今年の桜は、早めに咲くのかな〜。
    なんだか待ち遠しいです。

    2024.2

  • タイトルを見て、「おぉ、これは絶対おもしろいやつだ」と感じた。紫式部や『源氏物語』ならまだしも(それでも驚きだが)、清少納言を求めて、はるばるフィンランドからとは!

    本書は著者ミア・カンキマキさんのセルフドキュメンタリー。40代独身で、子どももおらず、自宅と職場を行き来するだけの生活に嫌気がさした広告編集者の「私」は、一年間の長期休暇制度を利用して、憧れの日本に滞在することを決める。目的は「清少納言、『枕草子』を研究して本にまとめること」。折よく助成金まで取得でき、いざ京都へ!

    そこからは京都での暮らし、交友録、日本文化への関心、たまに(?)している研究が日記風に記載されていく。そう、これは「心に触れたことを書いていく」清少納言に倣った、著者による『枕草子』なのである。『枕草子』のおもしろさはリストアップにあると見る著者の清少納言への理解はとても深い。著者は清少納言を「セイ」と呼び、まるでメンターであるかのように問いかける。途中途中で挟まれる『枕草子』の引用も効果的だ。

    著者のカンキマキさんは、次第に清少納言を自分に重ねていく。訳者の末延さんは、『枕草子』を直接引用するのではなく、著者のカンキマキさんがフィンランド語に訳したものを現代日本語にバックトランスレーションした。その結果、清少納言の感性が1000年以上経った今も古びておらず、現代女性にも深く共鳴するものであることが浮かび上がっている。確かにカンキマキさんの言うように、もしヴァージニア・ウルフが清少納言を知ったら、きっと大いに喜んだことだろう。

    日本でも『枕草子』は一般にはほとんど読まれていないだろう。海外は言わずもがなで、清少納言が紫式部と混同されたり、『枕草子』の英訳Pillow Bookが、春画のpillow booksと同じであることから、殊更に性愛と結びつけられ、清少納言を娼婦と解説する専門家もいるらしい。

    実のところ、私は清少納言が好きである。賢く、機転がきき、ひたすらに定子を愛した清少納言。たとえ末は没落していたとしても、きっと強く、幸せに生きたに違いないと思っている。おそらくは田辺聖子さんの『むかし・あけぼの』がそのイメージ形成に一役をかっている。紫式部が日記の中で、「したり顔」で「さかしだち」してるのが気に食わないと清少納言を批判したのを知ったときも、むしろ紫式部に腹が立った。

    最後にカンキマキさんは、清少納言が『枕草子』を書いたのは何故かという問いに、ある回答を出す。それが文学者の山本淳子さんが著書『枕草子のたくらみ』で出した結論に近いものであったことに驚いた。無性に旅をして、文章を書きたくなる一冊。

    • Minmoさん
      地球っこさん、こんばんは。

      おお、清少納言ファンがここにも!山本淳子さんの『枕草子のたくらみ』、いいですよねー。ぜひぜひ、田辺聖子さんの小...
      地球っこさん、こんばんは。

      おお、清少納言ファンがここにも!山本淳子さんの『枕草子のたくらみ』、いいですよねー。ぜひぜひ、田辺聖子さんの小説もチェックしてみてください。

      『枕草子』を直接引用する手もあったと思いんですよね。でも、それをしなかったのは、やはり読者にもミア・カンキマキさんのように、清少納言をより身近に感じてほしかったからなのかなと思います。ものすごく意訳されているという感じでもないです。ちなみにウェイリーの話も本書で出てきますよ。
      コメントありがとうございます。
      2022/05/23
    • 地球っこさん
      Minmoさん

      ウェイリーのことも出てくるんですね!
      早く読みたいです。
      図書館は予約1人待ちで、がまんできないなぁ。本屋さんにあるかなぁ...
      Minmoさん

      ウェイリーのことも出てくるんですね!
      早く読みたいです。
      図書館は予約1人待ちで、がまんできないなぁ。本屋さんにあるかなぁ。あー、悶々。

      田辺聖子さんの小説も読んでみます。
      どちらの本も楽しみです。

      山本淳子さんは『源氏物語の時代』朝日選書を読んで、大ファンになりました。
      もし機会がございましたらぜひ。こちらもとても感動しました。
      2022/05/23
    • Minmoさん
      地球っこさん

      ウェイリーはブルームズベリーつながりで、ウェイリー版の源氏物語は読んでいるヴァージニア・ウルフが枕草子も読んでいるのかという...
      地球っこさん

      ウェイリーはブルームズベリーつながりで、ウェイリー版の源氏物語は読んでいるヴァージニア・ウルフが枕草子も読んでいるのかという流れで登場します。読んでいてほしい!というカンキマキさんの願いには同感。

      山本さん、そちらの本のほうが知られてますよね。実はまだ読めてません。そうか、やはりおススメなのですね。読みます!
      2022/05/23
  • フィンランド文学情報サイト / KIRJOJEN PUUTARHA
    http://kirjojenpuutarha.pupu.jp/artikkelit/arti_163.html

    清少納言を求めて、フィンランドから京都へ ミア・カンキマキ(著/文) - 草思社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794225283

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【本ナビ+1】フリーアナウンサー、宇垣美里 『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』 時代を超える物語の力 - 産経ニュース
      https...
      【本ナビ+1】フリーアナウンサー、宇垣美里 『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』 時代を超える物語の力 - 産経ニュース
      https://www.sankei.com/article/20211030-YALCS2GEZZJIHGE26ONHTTO4Q4/
      2021/10/31
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』ミア・カンキマキ(末延弘子・訳): 推しとの歳の差、1006歳 - トーキョーブックガール
      ht...
      『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』ミア・カンキマキ(末延弘子・訳): 推しとの歳の差、1006歳 - トーキョーブックガール
      https://www.tokyobookgirl.com/entry/asioita-jotka-saavat-sydamen-lyomaan-nopeammin
      2022/02/22
  • 清少納言を慕い研究するフィンランド女性の日本滞在記。
    吉田山近くの外人ハウスを拠点に京都を巡り歩き、千年前の都に想いを馳せる。ただ資料探しに行って「文章も展示も、その大部分が日本語でしか書かれていない」ことに落胆する。
    清少納言に対する低い評価を、中宮定子の父藤原道隆と彰子の父道長の政治的確執の影響とする資料に驚き、ヴァージニア・ウルフが源氏物語に夢中になりながら、清少納言を読んでいないことを悔しがる。過小評価される清少納言を友人として「セイ」と語りかけ、和書の英訳を含む英文資料を駆使して擁護しようとする著者の清少納言に対する思慕の深さは、現代と平安京の時の隔たりを忘れさせる。
    「セイ、 あなたの時代ではあなたは注目の的だった。あなたの声は宮廷サロンに圧倒的に、揺るぎなく、他を押しのけて響き渡っていた。ところが、今日、スポットライトを浴びているのは誰? ムラサキ、ムラサキだけなのよ。 道長さん、もしこれがあなたの狙いだったとしたら、お祝いするしかないわね。 軍配はあなたのチームに上がったのだから。」
    また、枕草子に倣い感興の赴くままに綴られた「もの」リストも楽しく共感を覚える。
    「愛さずにはいられないもの」
    竹林。竹の滑らかさ、涼やかさ、軽やかさ、爽やかな青々しさ、まっすぐさ。見上げるほど高いのに軽い感じ。竹林は精霊たちが活動している場所みたいだ。当然、身軽に空を飛ぶ僧侶たちのことも想像した。隠れた庭園の緑の苔の絨毯と松の雲のような葉群。それを誰も見ていないときにゆっくりと撫ることができること。竹林を見ながらいただく一碗の抹茶と菓子。

  • 表紙のイラストを見てピンときた。この本をアニメーションにしたらおもしろいんじゃないの?セイ(清少納言)とミア(作者)を主人公にして。

    そう考えてこの本を読み進めると、枕草子に関しても新たな発見があった。「清少納言って、今で言うところの映像作家的視点の持ち主だったんじゃないの?」
    森羅万象のうち自分がいいと思えるものを、自分がいいと思う角度から切り取って簡潔に文章化する技術。それによって定子のサロンは鋭敏な感性と知的なやり取りにあふれた芸術的空間に見えるようになった(歴史的事実は異なるものであっても)。これはミアがセイの一連の文書を実態以上に素敵に見せようとする「広告」だと位置づけした結論とも符合する。
    清少納言が残した「ものづくし」などの映像的文章と、ミアが枕草子を追ってフィンランドから京都をはじめ各地を巡るロードムービーとをクロスカッティングさせ、最後にセイとミアとが時代と国の違いを越えて運命の出会いをするというアニメ作品を、本当に見たくなった。

    もちろん496ページもあるこの本の具体的な内容はそれだけじゃない。詳しくは他の方のレビューに任せるとして、1点だけ書きたい。
    清少納言はよく同時代の(同時期ではないが)宮廷女房だった紫式部と比較される。日本では、日本人特有の感性とも言える“判官贔屓(ほうがんびいき)”の視点から清少納言を支持する意見がある。ところが西洋をはじめとして多くの外国では、この負けた方を、負けたがゆえに支持する判官贔屓という概念は理解されにくい。つまりほとんどの外国人にとっては勝者こそが正義であり、分(ぶ)があるのだ。だったらミアは日本人のように判官贔屓という概念を理解したうえで清少納言が好きになったのだろうか、と当初は考えた。だがそうじゃなかった。ミアは枕草子のなかに清少納言を“勝者”とみなせるだけの十分なものを見つけ、清少納言の優位性を具体化しようとした。すなわち、既存の多くの枕草子論の逆向きからのアプローチだ。そしてその展開はミア自身や、ひいては女性の多くにも応用される。本当は(清少納言のように)勝者と呼べるだけのものを充分持っていながら、誤解や、人間関係の巡り合わせの悪さや、多数派への迎合の拒否などで日陰に置かれている多くの人の心を救うポテンシャルを、ミアは枕草子から読み解けると強く思い続け、その結果、セイとミアとの合作のようなこの作品へと結実したのだ。

    ちなみにミアは清少納言をセイと呼ぶのに対して、紫式部をムラサキと呼んでいる。外国人にとってMurasakiは発音しにくいのでは?とも思えたが、フィンランド人にとっては意外となじみやすいのかもしれない。だって作者のファミリーネームもKankimäkiカンキマキだしね。

  • もうこれは、星5つではとても足りない。10くらいつけたい。
    読了後、あまりに感動して号泣してしまった。そんな本はめったにない。
    年が明けて早々こんなに素晴らしい本に出会えて幸せ。今年は良い本に出会う運が良いのは間違いない。

    まず、フィンランドの現代女性が清少納言に、「枕草子」に共感してのめりこめるということ。文学の持つ力に恐れ入る。
    ミアさんの、編集者として、物書きとしてのアプローチの仕方、情熱のかけ方のすごさ。1年の休暇を取って京都にやってきて、一度フィンランドに戻り、ヴァージニアウルフが「源氏物語」について「ヴォーグ」に書いているとの情報を得てそれを調べにロンドン→再び京都へという足跡。その後3.11の震災があり、タイへ逃避行するもまた京都に戻る。

    ちなみに彼女はわたしと同世代で、本好きで編集の仕事に携わっていた。そして2010~2011年はまだ独身だった。
    そしてこれは何という偶然かと驚いたのだけど、2011年の3月11日、わたしもまた、京都にいた。福岡の友人と京都で落ち合い、京都一泊旅行を楽しんでいたその日に大震災のニュースを聞いた。わたしたちは、すぐそばにいた!

    本書の中でミアさんは、終始、「セイ(清少納言)、〇〇だったの?」と質問したり語りかけたりするのだけど、最後に、セイはコピーライターだった! と発見する。

    P460
    「あなたは広告編集者、つまり、商品の聞こえをよくする、嘘はついていないけれど、どこかを強調したり、省いたりして、手にとる人たちが「をかし」と声を上げて買ってしまうような、実際よりもよく聞こえるようにすら書くコピーライターだった! セイ、あなたは大文字で、定子のサロンは「素敵!」と更新するのよ。」

    P465
    「つまり、あなたは若い定子に仕えるために宮中に上がった。あなたは定子をひどく敬愛し、定子はあなたに憧れていた。あなたたちは親しくなった。定子の父親が亡くなり、叔父が権力を握ろうとしはじめ、すべてが変わった。叔父は天皇と12歳にも満たない自分の娘である彰子を結婚させた。彰子の入内の支度はこれ見よがしに豪奢だった。徐々に皆が彰子につくようになる。あきらかに権力が交代した。誰だって負け組に残りたくなかったから。定子は内裏の外で過ごす時間が多くなり、ますますふさぎ込むようになった。あなたはサーカスの猿のようにその場飲ん雰囲気を保とうとし、渡り廊下でジョークを飛ばしたり、聞こえるように笑ったり、殿上人たちを惹きつけたり、すべてがどんなに素敵ですばらしい――をかし――か熱く語った。とりわけ、自分や他の人たちの恋人たちについてたくさん書いているのも、愛が、愛こそが余計なことを忘れさせてくれるから! テンションを上げて、暗くならないように、あなたはベストを尽くした。そして定子は亡くなった。あなたができたことは、定子の栄華を書き尽くすことだけ。あなたの本の「誠実な」印象の最後の仕上げは、あなたの秘密の日記を人の目にさらすつもりはなかったと断言することだった。抜かりはなかった。
    セイ、あなたは中宮の宮廷道化師だった。シェイクスピアの道化師たちのように心配なさそうにみえて、そのくせ見にふりかかった悲劇についていつもいちばんよく知っている道化師。セイ、あなたは守護道化師だったのよ。命を賭けて書き、弾丸を受けるために中宮定子の前に身を投げる守護道化師。定子の守護者、それがあなただった。」

    そしてミアさんは、実際に12単衣を1枚づつ着せてもらいながら(京都にある12単衣フォト体験のようなものだと思う)、セイに人生の選択肢の可能性を訊ねながら、彼女の人生と自分の人生を重ねていく。
    ここはこの本のハイライトでありクライマックスだと思う。

    そう、この本はドキュメンタリーでありノンフィクションだけど、ミアさんの物語になっている。そこもまた感動ポイントのひとつ。

    これについて、訳者の末延さんはあとがきで、「生きるために」必要な「自分の物語」だと書かれています。
    そうだ、だからこそわたしはこんなにも感動したのだ。「ダンサーインザダーク」でビョークの演じたセルマが工場の機械音を音楽として感じることで辛い状況を生き、「ライフイズビューティフル」でユダヤ人として迫害を受けるなか、父親が子どもに「これは楽しいゲームなんだよ」を嘘をつき通したように。

    セイの「枕草子」もそうだし、この本も、生きるために必要な自分の物語だった。
    だからこそフィンランドで多くのメディアに取り上げられ、多くの人に勇気を与えたのだろう。書評ブログには、「人生を変える勇気をくれた」「物を書きはじめた」「これまでしようと思っていたことを実行することに決めた」といった感想であふれたそう。

    わたしもまたその一人。
    号泣するほど感動したのはなぜなのか、自分でもよくわからないけど、魂を大きく揺さぶられたことは確か。

    「春はあけぼの…」中学で初めて暗唱したあの文章。美しくて、着眼点が鋭くて、生まれて初めて出会った古文に感動しつつ得意げに暗唱してたっけ。
    それがフィンランドの女性の心に響き、ここまでの物語を書かせた。
    やっぱり涙がこぼれてしまうよ。ミアさん、ありがとう。

  • すごくよくできている。清少納言に関する海外の数少ない研究を、著者自身の京都滞在の経験と突き合わせながら、清少納言の実際の姿を描き出そうとする。しかもそれを、軽やかな京都滞在記に巧みに織り込み、読者を飽きさせない。この本を読むと、枕草子だけでなく源氏物語や徒然草も読んでみたくなるし、京都にもしばらく住んでみたくなる。歌舞伎も見たくなるし、大英図書館にも興味がわくし、プーケットにも行ってみたくなる。何か興味のあることを研究してみたくもなる。この本は、より自由に楽しく生きるための誘いに満ちている。また読むかもしれない。

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著者プロフィール

ミア・カンキマキ(Mia Kankimaki)
1971年、フィンランドのヘルシンキ生まれ。国立ヘルシンキ大学比較文学専攻卒業。編集者、コピーライターとして活動した後、本作でデビュー。日本文化に精通していて、生け花の師範でもある。第二作『夜に私が思う女たち』(未邦訳)。これまでにフィンランド旅行誌「モンド」旅の本賞、ヘルシンキ首都圏図書館文学賞、オタヴァ書籍財団ノンフィクション賞を受賞。

「2021年 『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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