死因の人類史

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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226945

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    ── ドイグ/秋山 勝・訳《死因の人類史 20240227 草思社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4794226942
     
     Doig, Andrew 19‥‥‥ America /
    https://www.goodreads.com/book/show/60125059-this-mortal-coil
     
     現代人の「死に方」は昔よりマシなのか…じつは「この20年」でも
    大きく変わっている「人が死ぬ原因」ジョン・スノウ
     飯田 一史 によるストーリー • 13 時間 • 読み終わるまで 6 分
     
    https://www.msn.com/ja-jp/health/other/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E4%BA%BA%E3%81%AE-%E6%AD%BB%E3%81%AB%E6%96%B9-%E3%81%AF%E6%98%94%E3%82%88%E3%82%8A%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%81%98%E3%81%A4%E3%81%AF-%E3%81%93%E3%81%AE20%E5%B9%B4-%E3%81%A7%E3%82%82%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%8F%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B-%E4%BA%BA%E3%81%8C%E6%AD%BB%E3%81%AC%E5%8E%9F%E5%9B%A0/ar-BB1lFAAA?ocid=msedgdhp&pc=ENTPSP&cvid=b92f0bd4b1274179c7f9b30c123cd926&ei=13
     
     厚生労働省の人口動態統計によると日本人の死因のトップはがん、心
    疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎だそうだが、アンドリュー・ドイグ『死
    因の人類史』は「人間の死因は過去1万年で大きく変化してきた」と言
    う。人はどんな理由で死んできたのか。今の死に方は昔よりマシなのか。
     
     圧縮して死因の変遷をまとめると……『死因の人類史』の議論を整理
    すると、こうだ。
     
    解剖学的に今の人類と同じ骨格を持つ最古の人間が出現したのは約20万
    年前。そのうち少なくとも 95%の時間を人類は狩猟採集民として生き、
    大勢の人間が大型獣やほかの人間の手によって死に、事故死も絶えなかっ
    た。しかしたとえば麻疹(はしか)や天然痘、ペストや腸チフスのよう
    な感染症はほとんど発生していなかったようだ。
    定住と引き換えに移動生活を捨て、作物を植え、家畜を飼うようになる
    と、それまでより多くの食料が得られるようになった。ただし主食がか
    ぎられた数種の作物になって栄養失調に陥り、凶作による飢饉のリスク
    にも直面した。
     
    Fullscreen button PHOTO by iStock © 現代ビジネス
     
     大規模集落での生活は、その地域固有の感染症の蓄積も引き起こす。
    家畜や汚れた水を媒介に、特に都市部で水痘、風疹などが流行し、感染
    症が死因トップになる。なかでもペストは何度も流行し、そのたびに人
    口が大幅に減少した。
     
     感染症を克服するための発想として重要だったのは「データの収集と
    分析」だ。
     
     1600年頃のロンドンで作成された「死亡表」がその始まりのひとつだっ
    た。ジョン・スノウはロンドンでこれらに感染した家庭を調べ上げ、そ
    れらの家が共同給水場に置かれたポンプを使っていたことを突き止め、
    これらは感染した水によって発生した事実を立証した。
     
     衛生対策の確立
     肉眼では見えない微生物が病気の主因だとする「細菌論」によって、
    医学には大きな変革がもたらされた。原因菌の生物が特定されると、そ
    の病原菌を死滅させる方法、またはワクチンを製造する方法があらわれ
    る。
     
    ・医師は手洗いと患者を診るたびごとに清潔な衣服に着替えるよう努め、
    細菌を媒介してはならない。感染者や死体に触れたばかりの手で治療す
    るのは避けなければならない。
     
    ・病院の寝具に乾いた血液や膿を残してはならない。
    ・衣服や寝具は定期的に洗濯する。
    ・人間の排泄物や体液には触れないようにする。
    ・定期的に体を洗う。
     
    ――このような基本的な衛生対策が一般的になったのは、ようやく19世
    紀になってからである。それまでは少なくない医療関係者が「医者や看
    護師が感染源になっている」という説に猛反発し、多くの命を奪ってき
    た。
     
     たとえば出産時やその直後に産婦が細菌に感染して起こる「産褥熱」
    がそうだ。17世紀のヨーロッパでは女性の「主たる死因」ですらあった。
    なぜならこのころ産院での出産が始まったものの、当時の病院には細菌
    が蔓延していたからだ。
     
     産褥熱は、19世紀の半ばにハンガリー人の産科医センメルヴェイス・
    イグナーツが感染を防ぐ方法を明らかにし、清潔さの重要性を示したこ
    とで、医師が別の患者の感染症を産婦にうつすことが避けられるように
    なった。
     
     19世紀後半には「微生物病原説」が受け入れられ、外科手術における
    感染予防技術の価値が認められ、帝王切開が当たり前の分娩方法となる。
    1902年に英国で可決された「産師法」によって1910年以降、助産師は正
    規の講義を受け、口頭試験と筆記試験に合格し、必要な件数の出産に立
    ち会ったことが証明されないかぎり、分娩に立ち会ってはならないこと
    になった。乳児死亡率は1840年には1000人当たり39人だったが、1903年
    には1000人当たり12人にまで減った。現在では出産で命を落とすことは
    非常にまれになっている。
     
     また、いまでは「五大栄養素」として小学生でも知っている炭水化物、
    脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンが人間が生きていくうえで欠か
    せないものだということは、ひとつひとつわかっていった――その過程
    でも、多くの犠牲を出した。
     
     このようにして人類は暴力、飢餓、栄養失調、感染症に打ち勝っていっ
    た。19世紀後半以降には平均寿命が一気に伸び、そこからガンや糖尿病、
    脳卒中、心疾患が主な死因として登場する。肥満、喫煙、アルコール、
    運動不足がこれらを悪化させることも知れ渡るようになった。
     
     死因は大きく変化してきたのである。たとえば2000年に最大の死因だっ
    た心臓病と脳卒中による死亡率は、予防や治療などの大幅な改善の結果、
    およそ半減した。ガンの多くも死亡率が後退している。代わって認知症
    による死亡率が目に見えて増えた。駆け足で『死因の人類史』をまとめ
    ればこうなる。
     
     長生きという「ぜいたく」
     最近では「人生100年時代」と言われる。実際には世界の平均寿命は
    長い国でも80年代前半どまりだ。しかし世界平均で70歳を超えている。
    これは人類史を振り返ると驚異的に長い。
     
    『死因の人類史』ではフランスの過去の平均寿命と、現在の世界各国の
    平均寿命を比べている。
     
     この本が書かれた当時に世界でもっとも平均寿命が低い国のひとつだっ
    た西アフリカのシエラレオネ共和国の平均寿命50.1歳にフランスが達し
    たのは1910年(なお2023年のWHO発表では最短は南アフリカの国レソト
    で50.7歳)。
     
     内戦やテロ、旧ソ連とアメリカの侵攻で負ったダメージによって政府
    が機能不全に陥り、失敗国家と見なされているアフガニスタンの60.5歳
    と同じ水準にフランスが達したのは1946年。
     
     イラクの68.9歳の水準には1958年、北朝鮮の70.6歳には1961年、イラ
    ンの75.5歳には1986年に到達していた。世界最貧国でも現在の平均寿命
    では、近年豊かになった国々とそれほど見劣りせず、19世紀のどの国よ
    りも健康面では上回っている。
     
     Fullscreen button PHOTO by iStock © 現代ビジネス
     
     さらに私たちが健康なまま長生きするにはどうしたらいいのかといえ
    ば、結局、バランスの良い食事を心がけ、食べ過ぎを避け、適度な運動
    を心がけ、生活環境や身体を清潔にし、孤独を避け、よく笑い、よく寝
    る――といった、ほとんど誰でも知っている以上のことは今のところな
    い(知ってはいても実行できない人が多いが)。
     
    『死因の人類史』を読んでいると、人類が寿命を伸ばすためにできる限
    界まで来ているような気すらしてくる。だが一方で、つい最近まで「酒
    は百薬の長」と言われていたが今では「一滴も呑まないのが健康上は一
    番良い」ことが常識に変わったこと、自動車へのシートベルトやエアバッ
    グの義務づけなどの安全対策がここ半世紀で劇的に変化した(昔は技術
    的には可能なのに実装されていなくて人が死にまくっていた)ことなど
     
    もわかる。ということは、今はまだ「常識」になっていないだけで、世
    の中の死の原因になっている何かがこれからも発見されては対策されて
    いき、人の寿命は生物学的な限界にまで少しずつ近づいていくのかもし
    れない。
     
    「良い死に方をしたい」?
    人類の栄養源の調達方法・状況、生活スタイル、衛生環境、医学の発展
    度合いによって死因は大きく変わってきた。私たちひとりひとりはこう
    したマクロトレンドから逃れることはできない。今や先進国ではコレラ
    やペストで死ぬことはたとえ望んだとしても難しい。逆に中世に肥満が
    原因で動脈硬化を起こして心臓病や脳卒中で亡くなることは庶民には難
    しかった。「どうせ死ぬなら、良い死に方をしたい」あるいは家族や親
    しい人には「良い死に方をしてほしい」と思う人が多いだろうが、そこ
    で想定される「良い死に方」のイメージも実際の死に方も、時代の制約
    を負っている。著者のドイグが問いかけているわけではないが、私たち
    はこのことから自分や身近な人間の死について改めて考えてみるべきで
    はないだろうか?
     
    『死因の人類史』を読んでわかるのは、人類は死に方も寿命も自ら決め
    ることなど大抵の場合は不可能だし、これからもできないということだ。
    ある死因を克服しても違う死因が上位に来るだけで、死の恐怖や死別の
    悲しみからは逃れられない。
     
     たとえ良い死に方をしても100年後には99.9%以上の人間は忘れ去ら
    れ、誰かに回顧されることもない。逆に言えば「悪い死に方」をしても
    同じだ。死因や寿命(死期)についてこだわっても後悔したとしても、
    どうせみんな死ぬ。その身も蓋もない事実が救いになる人もいれば「結
    局、自己満なら、むしろこだわりたい」という人もいるだろう。ただい
    ずれにしても『死因の人類史』は現代的な死生観、健康観を相対化して
    顧みるために読んでおいて損は無い。
     
    (20240416)

  • これは面白かった…

    感染症、飢餓、肥満、遺伝疾患、自殺、酒や薬物、タバコ、そして自動車にまで至る、人間の死因

    これを乗り越えてきた歴史は、「現状維持バイアス」との闘いにも思えた

    歴史本、自然科学本、そして医学本としても興味深かった

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