フクシマ・ノート: 忘れない、災禍の物語

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794809506

作品紹介・あらすじ

3・11から二年半近くが過ぎました。この間、私たちは災禍からどのような教訓を引き出し、未来への貴重な手がかりとして、自らの「生」の中に刻みこんできたのでしょうか。
一万キロ離れたフランスに住む私は、震災から一年後、日本在住のあるフランス人文学者が本国で出版し大きな反響を呼んだ一冊の本に出会いました。この災禍は私たちの「生」に何をもたらしたのか。それを綴った本書を、私は日本の読者にも是非届けたいと思いました。
 本書の著者フェリエ氏は、20年にわたり日本の大学で教鞭をとってこられました。災禍に際して氏は日本に残り、救援物資を持って東北を回りながらメモをとりました。それは、人間と災害についての、そして、原子力という現代文明がもたらした「ハーフライフ(半減の生)」と呼ぶべき状況についての生きた記録です。「ハーフライフ」とは、放射性物質の半減期を意味すると同時に、放射能汚染により切断された日常の生(自然の恵みを食し、自然の風を浴びるシンプルな喜びを切断された不完全な生活)を表現した言葉です。
 本書はスローガンやヒーローの物語ではありません。未曾有の災禍に動揺する一市民―たまたま、ものを書く外国人であった市民―が、何を感じ、手探りし、見聞きし、理解したかを綴った「ノート」です。自然の威力、現代文明の装置、人間の悲しみや喜び、時代を越えた先人の思索。「ノート」にはこれらについての記録が、ゆっくりとした「生」のスピードの中で縦横に展開していきます。
 3・11は私たちに、「生」についての根本的な問いかけを突きつけました。私たちの課題は、現代文明につきまとうリスクに目を開いたうえで、タブーと幻想を乗り越え、可能な限り賢明な「生」のための選択を共に確認していくことにあると考えます。本書が、「ハーフライフ」に馴致されることのない、人間としての明晰さを保つための手がかりとして読み継がれていくことを願ってやみません。(よしえ・まきこ 仏語翻訳家)

感想・レビュー・書評

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  • この本を評価する為の指標が自分の中にないので星付けはやめます。何と言ったらいいかな、、外からの視点みたいなものであの震災をみるとまた違うなぁというか〜 
    平家物語や谷崎や芥川を引用する所に教養を感じた。うへーわかんねー。平家物語は中学?高校?で冒頭暗記したけどストーリー知らない。日本のつめこみ型暗記型教育の薄っぺらさなのか 教育について考えてしまった。

  • ふむ

  •  国土の面積に対する原子力発電所の密度で、地球上で最も原発化された国であるという「悲しい特権」を日本と共有しているフランスに国籍を持ち、長く日本に住む作家である著者が、あの日の激しい揺れとそれに続く東京での日々、そして小型トラックに支援物資を積んで被災地を巡った旅程を綴った一冊。
     地震による惨事とそれに続く原子力発電所の事故。帰国することなく、それらの日々を見続けた著者は、「フランスと日本を見渡せるいわば国境線上に身を置く人間として」、「3年を経ずしてフクシマはすでに忘れられた」と本書の冒頭で語気を震わせる。そして「本は、僕たちの内部の凍結した海を砕く斧でなければならない(カフカ)」という言葉を引用して、「僕は、この本を、僕たちの内部に形成されつつある石と氷を斧で割るために、わずかでも光が射しこみ、記憶が動き出し、空気が循環することを願って書きました」と、本書を上梓した動機を明示する。
     本書は、フランスで東日本大震災の一周忌に合わせて刊行されて話題となり、エドゥアール・グリッサン賞を受賞した。

  • 覚えておきたい「ハーフライフ」と言う言葉、、、

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    「ハーフライフ(半減の生)の現実の中で、人間としての明晰さを保ち続けていくために。震災を生きたあるフランス人文学者の手記。

    「3・11から二年半近くが過ぎました。この間、私たちは災禍からどのような教訓を引き出し、未来への貴重な手がかりとして、自らの「生」の中に刻みこんできたのでしょうか。
    一万キロ離れたフランスに住む私は、震災から一年後、日本在住のあるフランス人文学者が本国で出版し大きな反響を呼んだ一冊の本に出会いました。この災禍は私たちの「生」に何をもたらしたのか。それを綴った本書を、私は日本の読者にも是非届けたいと思いました。
    本書の著者フェリエ氏は、20年にわたり日本の大学で教鞭をとってこられました。災禍に際して氏は日本に残り、救援物資を持って東北を回りながらメモをとりました。それは、人間と災害についての、そして、原子力という現代文明がもたらした「ハーフライフ(半減の生)」と呼ぶべき状況についての生きた記録です。「ハーフライフ」とは、放射性物質の半減期を意味すると同時に、放射能汚染により切断された日常の生(自然の恵みを食し、自然の風を浴びるシンプルな喜びを切断された不完全な生活)を表現した言葉です。
    本書はスローガンやヒーローの物語ではありません。未曾有の災禍に動揺する一市民―たまたま、ものを書く外国人であった市民―が、何を感じ、手探りし、見聞きし、理解したかを綴った「ノート」です。自然の威力、現代文明の装置、人間の悲しみや喜び、時代を越えた先人の思索。「ノート」にはこれらについての記録が、ゆっくりとした「生」のスピードの中で縦横に展開していきます。
    3・11は私たちに、「生」についての根本的な問いかけを突きつけました。私たちの課題は、現代文明につきまとうリスクに目を開いたうえで、タブーと幻想を乗り越え、可能な限り賢明な「生」のための選択を共に確認していくことにあると考えます。本書が、「ハーフライフ」に馴致されることのない、人間としての明晰さを保つための手がかりとして読み継がれていくことを願ってやみません。(よしえ・まきこ 仏語翻訳家) 」」

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著者プロフィール

Micha?l FERRIER 作家、中央大学教授。NHK教育テレビ「フランス語会話」元講師。フランス語の著作に『キズ』(2004年)、『東京、夜明けの小さなポートレート』(2005年、アジア文学賞)、『幽霊を憐れむ歌』(2011年、ポルト・ドレ賞)など。本書は2012年のエドゥアール・グリッサン賞受賞。

「2013年 『フクシマ・ノート 忘れない、災禍の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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