スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む: 日本の大学生は何を感じたのか
- 新評論 (2016年12月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794810564
作品紹介・あらすじ
2016年7月の参議院議員選挙は、投票年齢が18歳に引き下げられた初の国政選挙ということで、若者の政治意識に大きな社会的関心が寄せられました。その結果、10代の投票率は46.8%と、全体の投票率(54.7%)に比べてもまずまずと言えますが、騒がれたわりには低い投票率であったことに危機感を覚えた人も多いことでしょう。
かたや北欧のスウェーデンの選挙においては、全体の投票率は85.8%、若者(30歳未満)の投票率も81.3%に達しています。この彼我の差はいったい何なのでしょうか。スウェーデンの小学校で使われている社会科の教科書には、それを考えるヒントがたくさん書かれています。
例えば、「社会には法律や規則があって、私たちはそれに従わなければならない」という当たり前のことに続いて、「しかし、すべての社会は変化するので、法律や規則は変わるものであり、自分がそれを変えたいと思えば、そのように努力すべきである」と書かれているのです。
また「メディア」の章では、メディアは他人の情報を得るための道具としてよりも、人々が自らの情報を発信するための道具、すなわち「民主制の道具」であると述べます。一例を挙げると、学校のカフェや遊び場が閉鎖されそうになれば、メディアを利用して賛同者を集め、地元新聞に投書し、政治家に会い、デモによって意思表示をするように促しているのです。
こうした内容について、「それはすごい!」とか「いや、行き過ぎでしょう」と、様々な意見が出てくることでしょう。それでは、日本の若者たちはこれを読んだ時、どのように思うのでしょうか? 本書では、編訳者が所属している明治大学のゼミ生たちの感想も紹介しています。スウェーデンの教科書に対する彼らのコメントから、今を生きる日本の若者の政治や社会に対する意識が垣間見えてきます。さて、あなたは……。
感想・レビュー・書評
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「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」の参考図書としてリストアップされていたので、気になって読んでみた。
内容は非常に平易。タイトルの通り、スウェーデンの小学生が利用している教科書を読み解くというもの。大学の教授がゼミ生たちとわいわい言いながら、内容を追っていくスタイル。
ゼミ生の発言からはとても純粋なものを感じてしまうし、脈絡なく挿入されるゼミ生の写真はどこかシュールだった…笑
それでも、内容はよかった。当たり前だけど、自分は日本の教科書しか読んだことがない。外国の教科書を、日本語でよむというのは案外貴重な機会だったかもしれない。
小学校の教科書というのは、社会の鏡でもあると思う。スウェーデンでは、子どもをすでに社会の構成員と捉えており、現実に即した内容を教えているのが印象的だった。SNSの負の面や、税制についてなど、大人が読んでも面白く思える内容だった。
(書評ブログもよろしくお願いします)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/11/03/%E3%80%90%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%80%91%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A7%91%E3%81%AE%E6%95%99詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先日読んだ「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた」の中で、小川淳也さんが、今の問題は何なのか?それがわかる本だということで課題図書の中にあった本。
小学校の教科書とは思えないレベルで、社会や政治、経済、法律や権利について、考える基となるものを学ぶことができる。
スウェーデンでは、子供でも小さな大人として扱う。一人一人が意見を持ち、それを尊重される権利もあるし、相手を尊重することが必要である。という。
日本では、子供は守られてる、ということと引き換えに、現実を見せてもらえない。隠されることが多いと感じる。全てを知った上で、判断したいという気持ちは大人も子供も同じだろう。もっと子供を信じてもいいんじゃないか、とスウェーデンの子供を羨ましく感じた。
民主制ってこうだよね、ということを改めて勉強した気がする。子供にももちろん勉強して欲しいけど、改めて大人が読むのもおもしろい。わかったつもりになっていたことがたくさんあると思った。ここに書かれていることは、とても当たり前なんだけど、同調圧なんかで言い出しにくいことだったりもするかもしれない。 -
2021年イチバンの1冊。
子どもは自分で考えられる。
どう問いかけるかに重点を置いている。 -
スウェーデンは投票率が高いらしい。若年層でも、なんと80%超え。
本書の冒頭に興味深いデータが載っている。
若者に対しての「政治に関心があるかどうか」というアンケート結果は日本と大差がない。どちらかといえば日本の方が関心は高い。…ことになっている。
けれど、「個人の力が政府の決定に影響を与えると思うかどうか」についてははっきりと違いがでている。
著者も大学生たちも感じているのは、スェーデンでは子供を「小さなオトナ」として考えているということ。
スウェーデンの若者が特に意識高い系というわけではないのだと思う。ただ、世の中の仕組みについて小さな頃から深く考える機会があり、自分も社会の一員であるという意識が子供のころから自然と身についているのだ。その結果が投票率につながっているのだろう。
本書は、スウェーデンの小学校社会科の教科書を抜粋して翻訳したものと、そのことについてゼミで感想を述べあっている大学生の会話を掲載している。
もしあなたがゼミ生なら、どんな発言をするだろうか。
図書館スタッフ(学園前):ノビコ
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帝塚山大学図書館OPAC
https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/848521 -
スウェーデンの教科書の翻訳と訳者あとがきは良かったが、大学生のディスカッションはもっと踏み込んで欲しかったし、大学生の写真はいるか?と思ってしまった。写真を載せるスペースに文字数を増やして欲しかった。
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EU企画展2023「EUの北と南スウェーデンとマルタにフォーカス!」 で展示していた図書です。
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB22721073 -
外国の教科書は面白いので手に取ってみたものの、副題の日本の大学生~のところを読み落としていたので、読み始めてからの求めていたのはこれじゃない感が激しかった。
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税金や労働、法律など社会を回すうえでの構成要素をきっちり説明することで、何を変えれば社会を変えられるのかを教えている。
全体的な仕組みを教えたうえで、きみならどうしたいかを考えさせる。
部分をフォーカスして暗記させる日本の教育との大きな違いをそこに感じた。
自分の意思決定が社会にどう影響を与えるかが想像できるから選挙の投票などにも積極的になるんだろうな。
日本人に積極性がない、考えられないが問題ではなく、その前提となる知識を与えられていないことが政治に無関心な原因なのではないかと感じた。 -
子どもは保護する対象だけど、守り方がちがうな~って感じた。
日本は危険なものには近づけない、触らせない。
スウェーデンは、どこが危険なのか、どうすれば身を守れるのかを教える。
小学6年生まで成績をつけないのも大きいと思う。だからこそ、○✕にとらわれない、答えのない自由な議論ができる。自分の意見が世の中に影響を与えることができることが前提になっていて、そのためにまずは自分の意見をもつ、発信することに重きが置かれている印象。
日本の受動的な国民性は教育方法が大きく関わっていそうだな~。
・スウェーデンと日本が大きく個となる点は、自分の行動が政府の決定に影響を与えることができるという可能性に対する期待感だと言える。
・根本的なレベルの認識から違う。端的に言ってしまえば、スウェーデンでは、とくに政治に関心を持っていなくても選挙には行くということ。
・日本人は、学校で教わっていることが一般の生活の役立つ知識であるという意識が高くない。学校で教わるのは高校や大学の入試に出る内容であって、勉強する理由は、いい高校や大学に入るためになってしまっている。
・スウェーデンの教科書では、今ある決まりは絶対ではない、古い考えに縛られることはない、ということが強調されている。
・スウェーデンの教科書のなかで、とくに重視されていることが「メディアは発信するためのもの」という点。ソーシャルメディアが国をより民主的にするのに役立つと説明している。
・小学校6年生まで成績表がない。
・日本の教育は、危ないことには近寄らせない、触れさせないということが基本的な立場になっている。子どもを保護すべき対象と捉えている。一方、スウェーデンでは、自分で自分の身を守る方法を身につけさせるのとに主眼が置かれているように見える。その根底にあるのは、子どもを大人と同じ一つの人格として信頼しているという姿勢。