読む文化をハックする: 読むことを嫌いにする国語の授業に意味があるのか?

  • 新評論
4.40
  • (5)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 86
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794811714

作品紹介・あらすじ

 いますべての教室が読むことが好きな生徒で満たされているなら本書の存在理由はありません。しかし、残念なことに読むことが好きな生徒だけで満たされた教室を見出すのはとても難しいのです。これは日本でも米国でも同じです。
本書原著の副題を直訳すれば「教室を読書家の文化(a culture of readers)に変える五つの方法」となります。教室が「読書家の文化」となるのを阻んでいるのは何か。著者のドーソンさんは、①教師が教科書をカバーすることばかり気にかけていること、②教師が文章に対する生徒一人ひとりの反応に目を向けていないこと、③教室での話し合いや様々な情報源から集めた事実や考えをコピーする力ばかりを重視していること、をあげています。本書は、教師がこのような事態を「ハックする」(修繕する)ことによって教室が、読むことの好きな生徒に満ちた「読む文化」になると主張しています。
 生徒たちが自分の好きなことに熱中するのは「当たり前」ですが、教科書教材に読むことは生徒の皆にとって「当たり前」ではありません。皆が読むことを好きになるには、つまり教室を読むことが当たり前の文化にするにはどうすればよいか。どのようにして自分がひたすら読み浸ることのできる本を見つけることができるようにしていくか。ひたすら読み浸り続けることのできる環境をどのようにつくっていけばいいのか(アナログでもディジタルでも)。そして生徒が読書家になる道を歩むのに私たちはどのように伴走していけばいいのか。本書はこうした問いに正面から取り組み、教室を読むことが当たり前になる「読む文化」とするための五つの取り組みやすい方法を示した本です。
 一人でも多く読むことが好きな生徒を育てていくことが国語教育の多くの問題(ひいては、学校教育全体)を解決するという著者の強い信念には、一人の読者としてこころ打たれるものがあります。(山元隆春)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やはり読む時間を授業内に作ることは大事だ。読書家を増やすにはカンファランスが重要だ。実行するのみだ。

  • 原題 Hacking Literacy by Gerard Dawson
    本書の副題(原題)は、直訳すれば「どんな教室も読書家の文化(a culture of readers)に染める5つの方法」

    ハックする=巧妙に改造する、改善策

    「生徒が読みたい!」と思えるような環境をつくる

    *人間の行動に影響を及ぼす方法は、操作する(マニュピュレイト)、鼓舞する(インスパイア)かだ。サイモン・シネック


    ハック1 読書家に焦点を当てる
    「ひたすら読む時間」をつくる
    できること:
    ①どこで補を見つければよいかを示す
    ②自分の読んでいる本を示し、その本について話す
    どんなきっかけでその本を読んでいるのか
    ③「読む」アンケート
    「読む」という言葉を聞いたとき、思い浮かんだのはなにか?
    自分の読むレベルは?
    ④読みたい本のリストをつくる
    ⑤クラスでの読書記録をつくる
    ☆ナンシー・アトウェル『イン・ザ・ミドル』の著者
    ペニー・キトゥル
    <読書記録(スプレッドシート)>
    ジャンル
    読んでいるページ
    現在の状況についてのコメント(例、シリーズ2作目、興味を失いかけてる、家でたくさん読んでいる)
    読んでる本は、学級文庫、図書館、自分の

    記録をもとにカンファレンス
    ★『イン・ザ・ミドル』P87~92参照

    完全実施に向けての青写真
    ①ブックトークや読み聞かせをする
    「タイトルは、「   」で、著者は「   」で、この本は「   」にあります。」

    ②ブックパスで選書をする
    ブックパス
    ★『読む力はこうしてつける』P195~196参照(『みんなで楽しく本選びと同じ)
    ミニレッスン(5~10分)

    ③デジタルを使った「読みたい本探し」
    ③-1ブクログや読書メーターのような書評
    ③-2オンライン上にある魅力的なブックリストを探す
    例)「オンライン高校生新聞」「
    ③-3アマゾンを開く、試し読み、一緒に購入されている商品を見る
    ③-4学校図書館蔵書検索システムにサインインする
    ③-5Feedly

    ④ルーティンをつくってそれを頑張って続ける
    ・デジタル利用、
    ・読むことの重要性についての統計を見つける
    ・隣の子とカバーを見せ合う

    ⑤生徒の前で持続的に読むモデルを示す

    ⑥リーディング・カンファレンスをする
    「ひたすら読む時間」を少しづつ増やす

    課題を乗り越える
    ①読む気になれない生徒は
    強制的に読ませるようなことはしない
    うまくいかないと思っているので、その理由を探る
    時間をかけて、興味、情熱がどのようなものなのか探る

    読むことと見ることを結びつける

    ②授業時間は貴重


    グラフィックノベル=文学的コミック


    ギヴァーの会
    http://thegiverisreborn.blogspot.com/


    ハック4
    3つの文のブックトーク
    ①この本のあらすじ
    ②この本を好きな理由、嫌いな理由
    ③この本を誰にすすめたいか?


    YA向き
    https://yaloveblog.com/
    小学生向き
    https://www.spaghettibookclub.org/
    子どもの本棚(朝日)
    https://book.asahi.com/series/11013792

    文学分析
    フィクションの場合
    題名
    設定
    人物
    冒頭と結末の関係
    場面構成
    語り手
    視点
    説明
    描写
    会話
    伏線
    色彩
    比喩
    象徴
    物語の構造

    ノンフィクションの場合
    文章の主旨
    事実と意見
    予測する
    比べて読む

    『10の観点で読むアニマシオンゲーム』2003所蔵なし

    場所
    登場人物
    中心人物
    語り手
    事件
    大きく変わったこと
    3部構成
    おはなしの図、
    人物関係図
    一文で書く
    面白さ

    理解のための仕方
    ①関連づける
    ②質問する
    ③イメージする
    ④推測する
    ⑤何が重要か見極める
    ⑥解釈する
    ⑦読みながら理解を修正する

    本)『理解するってどういうこと?』2014 中野区のみ
    書いてあることが「わかる」から人生を「わかる」まで…。子どもたちが理解するために大切なことは何か、優れた読み手・書き手になるためにはどうしたらよいのかについて、元小学校教師である著者が実践に基づいて述べる。


    本)『「読む力」はこうしてうつける』2017
    「イメージを描き出す」「質問をする」「著者が書いていないことを考える(行間を読む)」など、優れた読み手が使っている7つの方法を紹介し、読む力の身につけ方を指南する。「「読み書き」はなぜ重要なのか」を増補。

  • 「教師がモデルとして読むことを示すためには、まず教師自身が本を読まなければなりません。」
    「なかには、ブックトークについて二つのことを恐れている生徒がいるものです。すなわち、読むことと人前で話すことです。本について話すのが当たり前だという感覚を生徒がもっていると、私は思っていません。なぜなら、彼らの多くは、教養の高い大人が自分の読んだ本や経験について話している様子を見たことがないからです。」

    教師が本を読み読書家となることが何よりも大事だと感じた。
    生徒にとっての身近な大人が教師なのだから、読書家のモデルとして、今、何の本を読んでいるのか、何の本を読み終えたのか、何の本を読むのを途中で止めたのか。そういうことを授業の5分や朝のSLRの5分でも使って、生徒に伝えることで、読む文化を醸成するための土壌をつくることに繋がるんじゃないだろうか。
    仕事をしながら読んでいけるかな……

  • 「本書原著の副題を直訳すれば「教室を読書家の文化(a culture of readers)に変える五つの方法」となります。教室が「読書家の文化」となるのを阻んでいるのは何か。著者のドーソンさんは、①教師が教科書をカバーすることばかり気にかけていること、②教師が文章に対する生徒一人ひとりの反応に目を向けていないこと、③教室での話し合いや様々な情報源から集めた事実や考えをコピーする力ばかりを重視していること、をあげています。本書は、教師がこのような事態を「ハックする」(修繕する)ことによって教室が、読むことの好きな生徒に満ちた「読む文化」になると主張しています。
     生徒たちが自分の好きなことに熱中するのは「当たり前」ですが、教科書教材に読むことは生徒の皆にとって「当たり前」ではありません。皆が読むことを好きになるには、つまり教室を読むことが当たり前の文化にするにはどうすればよいか。どのようにして自分がひたすら読み浸ることのできる本を見つけることができるようにしていくか。ひたすら読み浸り続けることのできる環境をどのようにつくっていけばいいのか(アナログでもディジタルでも)。そして生徒が読書家になる道を歩むのに私たちはどのように伴走していけばいいのか。本書はこうした問いに正面から取り組み、教室を読むことが当たり前になる「読む文化」とするための五つの取り組みやすい方法を示した本です。」

  •  良い読書家になれば、すべての教科で成績が向上する。

     本を自立して読む子どもを育てるには。

  • 読書家を育てるための方法。

    学校が舞台で、どう子どもたちを本好きにするか、読む習慣を身につけさせるか、読書家にするかということが書かれていますが、家庭でも参考にできることがたくさんありました。

    本を読む習慣、文化を身につけるには、環境を整えることが大切。
    本を読みなさいと言うだけで、子どもが本を読むようにはならない。
    そして、大人も読むことが大切。
    という部分に、なるほどと思うと同時に共感。

    読書の枠から外されがちな、コミックやファンタジー小説についても寛容で、そこから読書の世界が広がる可能性を示してくれていることが個人的に嬉しかったです。

  • 読む力ではなく、読む文化をつくる!
    つい読解力に目がいくけれど、やはり環境かー。
    目から鱗だった。

  •  教育者の第一目標は「読むことが好きになる気持ちを育てていくこと」。
     つまり、生徒を「読書家」にすることである。
     そのための教師の役目は、生徒が読書家としての自己イメージを形成できるようにすることである。

     これらが本書のメインテーマであるが、その機軸となるものは、授業では生徒はそれぞれ自分の読みたい本を持ち寄り、「ひたすら読む時間」を設けるというもの。
     これを実現するためには、今の授業に対する考え方を根本から変えなくてはならない。つまり授業の概念を「ハック」する必要がある。

     本書は具体的な方法をいくつも提示してくれる。
     その中で印象に残っているものが「ラウンドテーブル」と、本書で紹介されているオープンエンドの評価方法。

     一つ目の「ラウンドテーブル」とは、生徒たちはある一つのテーマに関する別々の本を読み、その後テーマについて話し合うというもの。
     二つ目は「週に一回、読んだ本いついて理解したことを示す何かを提示しなさい」という評価方法。

     いずれも取り入れたら、生徒は目を輝かせて授業に取り組むだろう。
     学習指導要領の国語科目標なんて、主体的な読書なしでは絶対に到達し得ない。その意味では、最も現実的で合理的な教育方法だ。

     国語の授業を「ハック」する。その手立てと勇気を本書から与えてもらった。

  • 東2法経図・6F開架:019.2A/D47y//K

  • タイトル:読むことを嫌いにする国語の授業に意味があるのか?
    ジェラルド・ドーソン
    山本隆春・中井悠加・吉田新一郎
    発行年月日:2021年 1月
    定価:1,980円
    ISBN:978-4-7948-1171-4 
    判型:四六判並製
    頁数:192
    著者 Gerard DAWSON(ジェラルド・ドーソン)
    アメリカ・ニュージャージー州ハイツタウンの高等学校で国語とジャーナリズムを教える。学びに革命を起こすテクノロジーの力を信じ、教師向けにオンライン講座を提供する他、YouTubeやTwitter( @gerarddawson3)でも積極的に情報を発信している。
    https://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-1171-4.html

    【簡易目次】
    1 読書家に焦点を当てる
    (問題―読む文化をつくることは難しすぎる;ハック―読書家に焦点を当てる ほか)
    2 読む文化とカリキュラムのつながりをつくる
    (問題―既存のカリキュラムに一人読みをうまく位置づける;ハック―読む文化とカリキュラムのつながりをつくる ほか)
    3 教室の図書コーナーを充実させる
    (問題―生徒は本が容易に入手できる環境をもっていない;ハック―教室の図書コーナーを充実させる ほか)
    4 読むコミュニティーを築くために評価する(問題―評価が読む気を失わせてしまう;ハック―読むコミュニティーを築くために評価する ほか)
    5 読むことを学校の中心に据える
    (問題―読むこととほかのことが関連していない;ハック―読むことを学校の中心に据える ほか)

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

Gerard DAWSON アメリカ・ニュージャージー州ハイツタウンの高等学校で国語とジャーナリズムを教える。学びに革命を起こすテクノロジーの力を信じ、教師向けにオンライン講座を提供する他、YouTube(Gerard Dawsonで検索)やTwitter(@gerarddawson3)でも積極的に情報配信を行う。共著書にThe Best Lesson Series(『最高の授業シリーズ』)など。

「2021年 『読む文化をハックする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山元隆春の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×