贅沢な戦争: イスラエルのレバノン侵攻

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794961433

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  • 1987年に書かれ、93年に邦訳されたもの。30年以上前、まだPLOのアラファト議長がいた頃の話だ。レバノン侵攻時に著者が地元の新聞に寄稿したものが土台になっているが、著者の考え方自体は、現代のイスラエルとアラブの関係や、別の地域での紛争や戦争にもそのまま引き写して議論できる厚みのある土台を作っているように思う。
    イスラエルでは平和運動ピース・ナウの主唱者だが、どこまでも厳しい現状認識を持ち続け、楽観せず、妥協点を探る。つくづく島国の日本は地政学的に、生まれながらにして幸せなのだと思わざるを得ない。アラブと何とか領土を平和的に分け合えないかと模索しながらも、辛酸をなめたという言い方ではとても甘すぎるほどの歴史を抱えるユダヤ人の「国土」への悲壮な思いが伝わってくる。オズは第3,4次中東戦争で陸軍の一員として戦っている。銃を取る動機は二つ。自分自身や家族、国民の生命が脅かされた時、もう一つは自由が危うくなった時。資源獲得や”もう一つ寝室を増やすため”には一インチも動かない、と断言する。ふと、ウクライナに侵攻したロシアを思い浮かべる。
    映画「ショア」を取り上げ、ユダヤの悲惨な歴史を踏まえつつ、イスラエル占領地域での、パレスチナ難民キャンプでの虐殺は何だったのかと問うている。悲惨な過去を持つから優しい、正しい人間だというのはナイーブだ、と。どこまでも公平な視点が印象的だ。
    むやみに「愛」を語るのではなく、「愛の代わりに平和を育てよう」という言葉に、彼の地に生きる厳しさがにじみ出ていた。

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