四苦八苦の哲学──生老病死を考える

著者 :
  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794970558

作品紹介・あらすじ

人生は思いのままにならないことばかり。世の中は苦に満ちている。あーあ、いやんなっちゃった、どうしよう……こうした気持ちと、人はどう折り合いをつけていったらいいのだろう? プラトン、ハイデガーから、フーコー、ボーヴォワール、レヴィナス、バタイユまで、さまざまな哲学者たちのことばを補助線にしながら、仏教で言うところの「四苦八苦」について考える、哲学の自習帖。まず手始めは「生老病死」の四つの苦から。

感想・レビュー・書評

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  • 19/11/28。

  • ◆避けられぬ苦悩 巧みに言語化
     仏教が説く四苦(生・老・病・死)というテーマを哲学で読み解こうとする著者の営みをまとめた一冊。もともとは「哲学自習帖(ちょう)」との仮タイトルで綴(つづ)られたものらしい。
     四苦は仏教の中心的テーマである。生まれた以上避けることができない根本的な苦悩であり、この四苦とどのように向き合うのか、四苦をどう解体するのか、四苦をどう引き受けていくのか、そこに仏道がある(この四苦に、求不得苦(ぐふとくく)・愛別離苦(あいべつりく)・怨憎会苦(おんぞうえく)・五陰盛苦(ごおんじょうく)を加えて八苦と呼ぶ)死苦・病苦・老苦・生苦の順に論考することで、読者を最後まで引っ張る構成となる。
     中でも「老いについて」の論考は読み応えがある。ボーヴォワールの『老い』を手がかりに、老いの苦悩に肉迫していく。この章に「ゴム紐(ひも)に印をつけて伸ばしたような感覚とでもいえばいいか。老齢期のはじまりが遅くなっただけでなく(中略)青春・朱夏・白秋・玄冬。すべてが長くなり、そのぶん、白秋も玄冬もはじまりが遅くなった」とある。以前からこの印象をもっていたのだが、「ゴム紐に印をつけて伸ばしたような感覚」との表現に出会えてよかった。うまい言い方がないものかと思っていたのだ。確かに現代人の人生は、全般的に薄く延ばされた感じである。長く生きることによって、深まっているわけでも、進化しているわけでもない。
     生老病死について、自分の思いがあるのだが、なんだかうまく言語化できない。そんな人には本書をお薦め。きっとぴったりの表現に出会うに違いない。言語化する。物語化する。それだけでも、生老病死の苦悩をほんの少し手元に引き寄せたことになる。

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著者プロフィール

1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90~93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業。「アサヒ芸能」「週刊朝日」「週刊エコノミスト」などで連載をもつ。ラジオ「ナルミッツ!!! 永江朗ニューブックワールド」(HBC)、「ラジオ深夜便 やっぱり本が好き」(NHK第一)に出演。
おもな著書に『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『本を読むということ』(河出文庫)、『筑摩書房 それからの40年』(筑摩選書)、『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)、『小さな出版社のつくり方』(猿江商会)など。

「2019年 『私は本屋が好きでした』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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