- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794972644
作品紹介・あらすじ
プラトン、アリストテレス、孔子、デカルト、ルソー、カント、サルトル……
では、女性哲学者の名前を言えますか?
男性の名前ばかりがずらりと並ぶ、古今東西の哲学の歴史。
しかしその陰には、知的活動に一生をかけた数多くの有能な女性哲学者たちがいた。
ハンナ・アーレントやボーヴォワールから、中国初の女性歴史家やイスラム法学者まで。
知の歴史に大きなインパクトを与えながらも、見落とされてきた20名の思想家たち。
もう知らないとは言わせない、新しい哲学史へのはじめの一書。
【目次より】
◆ディオティマ Diotima(紀元前400年ごろ)
◆班昭 Ban Zhao(西暦45~120年)
◆ヒュパティア Hypatia(西暦350年ごろ~415年)
◆ララ Lalla(1320~1392年)
◆メアリー・アステル Mary Astell(1666~1731年)
◆メアリ・ウルストンクラフト Mary Wollstonecraft(1759~1797年)
◆ハリエット・テイラー・ミル Harriet Taylor Mill(1807~1858年)
◆ジョージ・エリオット(メアリー・アン・エヴァンズ) George Eliot (Mary Anne Evans)(1819~1880年)
◆エーディト・シュタイン Edith Stein(1891年~1942年)
◆ハンナ・アーレント Hannah Arendt(1906~1975年)
◆シモーヌ・ド・ボーヴォワール Simone de Beauvoir(1908~1986年)
◆アイリス・マードック Iris Murdoch(1919~1999年)
◆メアリー・ミッジリー Mary Midgley(1919~2018年)
◆エリザベス・アンスコム Elizabeth Anscombe(1919~2001年)
◆メアリー・ウォーノック Mary Warnock(1924~2019年)
◆ソフィー・ボセデ・オルウォレ Sophie Bosede Oluwole(1935~2018年)
◆アンジェラ・デイヴィス Angela Davis(1944年~)
◆アイリス・マリオン・ヤング Iris Marion Young(1949~2006年)
◆アニタ・L・アレン Anita L. Allen(1953年~)
◆アジザ・イ・アルヒブリ Azizah Y. al-Hibri(1943年~)
明晰な思考、大胆な発想、透徹したまなざしで思想の世界に生きた、
20の知られざる哲学の女王たち(フィロソファー・クイーンズ)。
知の歴史をひっくり返す、新しい見取り図。
「……人々は相変わらずこう思っている。プラトンの時代から
思想の分野を担ってきたのはほとんどが男性だろうと。
まるで、女性も偉大な哲学者になれるというプラトンの予言を、
これまでだれも実現してこなかったかのように。」
(本書「はじめに」より)
感想・レビュー・書評
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20名の女性哲学者を紹介した本書は、まずこうして出版できたことに大きな価値があると思います。
なぜなら、そうすることで、ここに書かれているような、男性しか哲学者がいなかったかのような思い込みを無くし、たとえ少数派の中であっても、栄誉ある社会貢献をされた女性哲学者たちがいたことを、知ることができたからです。
イギリスで大学教育が女性に許可されるようになったのは、19世紀もだいぶ遅くなってからのことで、要するに、どれだけ才能や知性があろうとも、大学で学ぶことを許されなかったということです。
その影響もあり、もし女性が書いたと知られたら、哲学的小説とは認めてもらえまいと思った、「ジョージ・エリオット(メアリー・アン・エヴァンズ)」は、1850年代に男性名のペンネームを使ったそうです。
他にも、初めて男性優位の学問の領域に堂々と踏み込んで、悲劇的な結末を遂げた「ヒュパティア」や、フッサールとハイデッガーが功績を認めようとさえしなかった「エーディト・シュタイン」等、悲しい歴史もあるが、「シモーヌ・ド・ボーヴォワール」の、『女性の状況を改善するには、男も女も共犯関係にあることを自覚し、変わらなければならず、女性を客体としてではなく主体として見ることを、どちらも学ばなければならない』という言葉に肯けるものも感じられました。
また、女性が置かれた状況以外については、「ハンナ・アーレント」の『内側からの支配』も興味深く、その内容は『全体主義があらわれるのは、人々が互いに接触を断たれたときであり、そこへ政治のムーブメントが起こり、なぜ国民は不幸なのかという物語を差しだしてみせる。やがてこれが大きな力を持ちはじめ、人を圧倒する語り口に誰も反対できなくなっていく』で、なぜ政治に無関心な人々が多いのかを考えるヒントにもなりそうです。
また、国籍のない状態が長く続いたアーレントは、「難民危機」についても考察しており、『前代未聞なのは、故郷を失ったことではなく、新たな故郷を見つけられないこと』や、『敵の手で強制収容所に入れられ、味方の手で難民収容所に入れられた人たち』の言葉には、今現在でも通用するように思われました。
更に、「エリザベス・アンスコム」が、広島と長崎に原爆を投下する決断を下した、当時のアメリカ大統領「ハリー・トルーマン」を支持する人たちに当惑したのがきっかけで書いた、著作『インテンション』は、日本人としても心に響くものを感じ、女性は支配される人生を送らざるをえないという問題に目を向けた「メアリ・ウルストンクラフト」の次女、「メアリー」が書いた小説が、『フランケンシュタイン』だというのも、何か宿命めいたものを感じさせられました。 -
これまで、いったいどれだけの才能が台所の流し台に、あるいは洗濯の水とともに流れていったことだろう。
訳者あとがきに本書を端的に表す1番のパンチラインが。 -
哲学史って、プラトンやソクラテスを始め、本当に男性の名前ばかりだよね。ここでは20人の女性哲学者が取り上げられている。”名前を知っている”レベルまで広げても、私が知っているのは5人かな?6人かな?そのうち2人は小説家としてしか知らず、哲学の功績に思い至らず。
アンスコムに興味が湧いた。 -
2021年6月18日図書館から借り出し。
女性として哲学を語り・書いた20人を10頁ほどの長さで各人が簡潔に紹介したのをまとめたもの。
名のみ知る人、初めて知った人が多数で、実に多士済々の女性たちが短い量の中で活写されている。
日本語訳もこなれており、適宜訳者による説明が付け加えられていて読みやすいので、知的好奇心を掻き立てられる。
原著がクラウドファンディングにより出版されたとあとがき(謝辞)に記されていたのには驚きと同時に、こういう方法があるのかと感心した。
アーレントが人種差別的言辞を弄していたとは知らなかったし、J.S.ミルの奥さんが共同作業者に近い存在というのも初めて知った。
小説家と認識していたマードックが哲学の著作があることも知らず、「鐘」を収録した集英社版世界文学全集の丸谷才一による解説を読み直したが、「一種の実存主義小説」と書かれているくらいで、哲学者の側面は一切触れていなかった。
興味が湧いたのは、初めて名を見るメアリー・ミッジリーで、動物界で唯一知性を持つのは人間だけという「神話」に異を唱えたと書かれているところ。残念ながら巻末の参考資料では邦訳文献はなかった。
ディティマ(ゾイ・アリオジ)
班昭(エヴァ・キット・ワー・マン)
ヒュパティア(リサ・ホワイティング)
ララ(シャリニ・シンハ)
メアリー・アステル(シモーヌ・ウェブ)
メアリ・ウルストンクラフト(サンドリーヌ・ベルジュ)
ジョージ・エリオット(クレア・カーライル)
エーディト・シュタイン(ジェー・ヘタリー)
ハンナ・アーレント(レベッカ・バクストン)
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(ケイト・カークパトリック)
アイリス・マードック(フェイ・ナイカー)
メアリー・ミッジリー(エリー・ロブソン)
エリザベス・アンスコム(ハンナ・カーネギー・アーバスノット)
メアリー・ウォーノック(グルザー・バーン)
ソフィー・ボセデ・オルウォレ(ミンナ・サラミ)
アンジェラ・デイヴィス(アニタ・L・アレン)
アイリス・マリオン・ヤング(デズリ・リム)
アニタ・L・アレン(イルハン・ダヒル)
アジザ・イ・アル=ヒブリ(ニマ・ダヒル)l -
知らない人の方が断然多かった。哲学の世界でさえも、女性の扱いはひどいものだったということがよくわかった。そして、男性の作った歴史で勉強してきているから、こんなにも同性の著者たちについて知らないのかと妙に納得。たくさんの人を取り上げている関係で、1人ひとりの紹介は短い。もうちょっと深く知りたいなと思った。
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狭義の哲学ではなく、広く哲学を捉えた場合の女性哲学者の思想と行動。
無視、抑圧の歴史と真正面から戦いを挑む姿も胸を打つが、その思想が性別を問わず、示唆に富んでいることが大きな収穫だった。哲学だけでなく、様々な分野でこのような本が生まれることを願う。 -
「女性哲学者の名前を言えますか?」と問われたら、1人も名前が出てこない。そういう人は結構いるのでは?哲学者という言葉は広い意味で使われているが、この本に出てくる女性哲学者の生き方には考えさせられる。女性の立場を考える上で、今読まれるべき本だろう。
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2021.08.14 図書館