異端の刻印 (ガッシュ文庫)

著者 :
  • 海王社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796400282

感想・レビュー・書評

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  • 回送先:町田市立金森図書館

    一見すると『イノセントブラッド』で登場した司祭マクシミリアンが主人公を張っているのかと思えてならないが(時代背景・所属する教会名が全く同一)どのような連結があるのかについてのコメントがないので今は詮索するのを止めておこう。

    吸血鬼という異界の存在と出会うということについての引き裂かれた感情の葛藤はそれこそ何度も出している『イノセントブラッド』以上であり、非恋というものを求めるのであるならば、まだ本書の方をオススメしようかと思う(とはいえ、他者との共生という観点が抜けきらない筆者はその解消の方法が若干強引な部分がありそれによる不満があることは否定しない)。

    それは教会というストイックな環境だから、というよりかは他者との接点をどのようにとりなすかという個々人の心理的背景の方が大きい。ネタバレになるが、主人公マクシミリアンは義理の兄からの性のはけ口にされているが、それによって生まれた接点の作り方のいびつさが作品をうまい方向へと誘っていく。
    しかし考えてみれば、異界との接点ないしは接触というのはわれわれも普段何気ないところで行っているともいえる。マクシミリアンの場合は心的外傷というマイナスの部分から接触したのだ。通常プラスの部分からスタートする読者が実は見透かされている視線を感じなくはない(ならばそれは華藤にも言えるだろうという批判が出るのはやむをえないとしても)。お相手であるオズワルドもまたダムピールとして排除され、ホモサピエンスとの接触がなかったというマイナスからのスタートである。マイナス同士のすれ違いながらもコミュニケートを構築しようとする道筋を追う、というのが本書の正しい読み方であるのかもしれない。

    そうだとするならばやはり華藤の作品展開の自然さと気だるさの向こう側に広がる「歴史への真摯さ」というものを感じずにはいられない。評者は悔やむ。なぜ彼女にもっと早く出会わなかったのだと。

  • 吸血鬼もの。作者さんがウィーンや19世紀の時代に多少明るいのか、なかなかいい設定で始まります。少なくとも設定の不自然さで気を削がれる事はない。話は、なんだろう。面白くなくはないんだけど、先が大体読めるので、そこがちょっとあれかな。主人公だけでなく、オズワルドのダンピールとしての懊悩とか葛藤をもう少し突っ込んで書いた方が感情移入しやすいのかも。あと、前編でせっかく主人公が異端審問に挑むつもりでいたのにそれをさくっとなかった事にしちゃったのも肩透かし感を食らった。あそこから話を続けてもよかったのでは?と思う。若干悲恋よりにする方が話として引き締まったのかも。もうちょっと、という感じがします。

  • 異端の刻印(幻冬舎コミックス 小説リンクスvol.3 掲載作品を改稿)
    異端の刻印Ⅱ(書き下ろし)

  • 華籐さんの美しい文章で綴られる異国モノ。
    しかも19世紀後半のウィーンが舞台というのは
    華籐さんらしさが溢れててとても素敵でした。
    お話は悲しく切ない愛の話です。

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