バブル (宝島SUGOI文庫 A た 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796667104

感想・レビュー・書評

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  •  田中森一(もりかず)・夏原武著『バブル』(宝島SUGOI文庫/520円)を読了。ライターの夏原が聞き手になってのインタビュー形式(実質的には対談)なので、サラッと読める本。

     特捜検事から「ヤメ検」弁護士となり、バブル期に暴力団幹部や仕手筋など、裏社会の人間たちと密接なつながりをもった田中は、「闇社会の守護神」とも称された。
     その後、許永中とともに石橋産業事件で逮捕され、現在も服役中である。

     本書は、収監前の田中へのインタビューをまとめたもの。おもにバブル期のすさまじい日々を振り返った内容となっており、田中のベストセラー『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』のスピンオフ本といった趣。
     夏原は劇画『クロサギ』の原作者でもあるが、バブル期にヤクザをしていた人でもあるので、本書に最適のインタビュアーといえよう。

     まあ、田中のような人をあまりダーティ・ヒーローとしてもてはやすのもどうかと思うが、内容はメチャメチャ面白い。仰天エピソードの連打である。
     たとえば、田中による「まえがき」にはこんな一節がある。

    《ちょっと契約に立ち会っただけで何千万円の報酬をもらったり、顧問料だけで年間億単位のお金が転がり込んでくると、おかしくなるなというほうが無理である。カネに対する感覚がどんどん変わっていき、当時は一万円を一○○円くらいの感覚で使っていたと思う。
     もちろん、私の周囲にいたバブル紳士たちは、もっとすごかった。許永中や「五えんやグループ」の中岡信栄たちは、一○億円を「一本」と数えていたし、ある人物が選挙資金の支援を頼むのに「五本指」を示したら、五億円もらってしまい、頼んだほうは「五○○○万円のつもりだった」という話もある。》

     もう一つ、本文中の印象的な田中の発言を引く。

    《バブル当時は、担保不足であったとしても、土地の値段が翌日には倍になったりするわけだから。実際に手続きなんて後回しで、担保も付けずに、先にカネを貸すということがあったんだから。ノンバンクなんて、ほとんどそやろ。そういう意味では、手続き的には、みんなが背任みたいなことをやってたのよ。バブル当時の貸付けというのは、ほとんどが実質は背任だから。それでバブルが崩壊して、損害が大きいやつだけを刑事事件として摘発したという、それだけの話であってね。》

     バブル期には、そんなふうに日本中が「狂っていた」のである。そして、その後遺症はいまも日本社会に根深く残っていると思う。
     ことの善悪はさておき、「バブルとはいかなる時代だったのか?」を知るために、一読の価値はある本。

     ちなみに私自身は、バブル期というと駆け出しライターだった時期で、むしろ人生でいちばんビンボーだったころである(笑)。そのため、「バブルの恩恵なんてまったく受けなかった」とずっと思っていたのだが、最近考えが変わった。
     あのころ、駆け出しで未熟なライターだった私にさえ仕事がどんどん入ってきたのは、出版界全体がバブル景気で余力があったからにほかならないのだ。その意味で、私もまた「バブルの恩恵」でライターになれたのだと思う。

  • 歴史、といってもよいでしょう。バブルを知らない私にとっては、総会屋、仕手株集団、地上げ屋、暴力団抗争、派手な夜遊び、派手な金遣い、まるで異国のような話でした。インタビュー形式というのは良いですね、リア

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/4011899.html

    元特捜検事で弁護士の田中森一氏と作家夏原武氏(聞き手)との対談形式で進められている。これまでに感想で書いた『正義の正体』『必要悪』『反転』の内容と重複する部分があるため、内容については詳しく書かない。

    田中氏の話で印象に残っているのは、能力のある人で捜査などで実績をあげた人は堕ち、何もしない人は生き残っているということである。また、バブルと現在の見方がかなり異なっていることに驚かされた。田中氏の扱った事件を振り返る際、現在と事件当時の見方の違いを比較するのはいかがでしょう。

  • 別に何という事もない本でした。バブルの頃を知らない人にとっては面白いエピソードなのかも。景気とか経済なんて、ちょっとした事で簡単に変えられる、って思うております。リーマンショックなんて、要するに、政治家や経済学者まで巻き込んで仕組んだ証券詐欺ですからね。また、その頃にでっち上げられた経済理論を真に受けて、今でも有価証券購入をすすめる自称経済評論家とかいるんだから、馬鹿は死なんと治らない、ですね。
    バブルもアメリカ政府の仕組んだ詐欺だと思います。1番儲けたのはマイケルジャクソンですかね。自分のなかでは、バブルの象徴ですね。

  • バブル景気でおいしい思いを
    した人の話。
    バブル景気のころは一般人は
    「職に対する不安が無かった」という
    恩恵をたっぷりと受けてたんだけど、
    誰もそのことを感謝しないんだね。
    (少なくとも、私の周りで聞いたことは
    無いです。)
    夏原武さんは、漫画「クロサギ」の
    原作者です。

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著者プロフィール

田中森一(たなか・もりかず)

 1943年、長崎県に生まれる。岡山大学法文学部在学中に司法試験に合格。1971年、検事任官。大阪地検特捜部などを経たあと、東京地検特捜部で、撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件、三菱重工CB事件などを担当。その辣腕ぶりが「伝説」となり、名声を博す。1987年、弁護士に転身。2000年、石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴され、無罪を主張するも実刑が確定。4年8ヵ月の獄中生活を経て、2012年11月に出所。
 著書には30万部のベストセラーになった『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』、共著に『検察を支配する「悪魔」』などがある。

「2013年 『塀のなかで悟った論語 現代人を癒す24の答え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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