ラッキーマン

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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797321227

感想・レビュー・書評

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  • Amazonのprime videoで『摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に』を鑑賞した。批評家の評価はともかく、このベタなサクセスストーリーが好きで、昔はビデオに録画して何度も観たものだ。20年ぶり、いやもっとだろうか、久しぶりに観たマイケルは躍動し、輝いていた。

    マイケル・J・フォックスと言えば、私たち世代にすれば大スターである。小学生だった私は、当然ながら、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズにも大興奮した。そのマイケルが1998年にパーキンソン病であることを公表した際の驚きはよく覚えている。その後、しばらくして本書を発表し、非常に評判になったことも。

    ずっと気にはなっていたが、手に取るまでには至らなかった。そもそも闘病記が苦手なのである。下手をすると数日は影響を引きずることもある。マイケルは純粋にスターであってほしいと思っていたのかもしれない。ただ、2020年にマイケルが俳優業を引退し、新たに著書を発表とニュースが続き、先日『摩天楼』を観たことで、ぐわわっと読書欲が高まってしまった。結論から言うならば…とても素晴らしかった!

    本書はマイケルの自伝である。ある日、彼は自分の左の小指が、自分の意志とは関係なく、ぴくぴくと動き続けて止めることができないことに気がつく。そこから遡って、彼のカナダでの幼少時代、高校を中退し俳優業に、さらに渡米しハリウッドで成功するまでが怒涛のように語られる。決して読みやすい構成ではないのだが、彼のユーモアや独特の言い回しが楽しく、読者を飽きさせない。

    そして、30歳で発症。公表まで7年間、ひた隠しにしつつ、大変なストレスでスターを演じ続けていた日々が語られる。病名を告知された日を思い起こし、彼は、その医師が教えてくれなかったことがある、と語る。うわー何だろう、これからのつらい闘病生活とかかなと思いながら読み続けると、それは意外なことだった。「病気を受け入れて、なんとかやってきたこの十年が、ぼくの人生における最高の十年になるだろうということだ」と。「ぼくは病気にならなければ、これほど深く豊かな気持ちにもなれなかった。だから、ぼくは自分を幸運な男(ラッキーマン)だと思うのだ」と。

    もちろん、その境地に至るまで、マイケルは非常に苦しむ。だが、この発言が決して強がりではないことは、本書を読むとよくわかる。一人でもがき苦しんでいたマイケルは、自分が殻に閉じこもることで家族を拒絶していたこと、最愛の妻トレーシーもまたそのことで苦しんでいたことに気がつく。彼は、自分は自分のままであり、そこにパーキンソン病がプラスされただけなんだと病気を受け入れていく。彼が心の安定を取り戻していく過程での家族との交流が感動的で、何度も読み返した。

    パーキンソン病の公表、上院でのスピーチ、財団の設立と、まるで新たに人生の目標を見つけたかのように、彼は一歩一歩、踏み出していく。潤沢な資金援助さえあれば、あと10年でパーキンソン病は克服できるとし、本書ではES細胞に大きな期待をしているが、残念ながら20年後の現在もその願いは叶えられていない。その後のiPS細胞の臨床研究も道半ばである。しかし、コロナワクチンの迅速な開発をみるまでもなく、医療の進歩は目覚ましい。マイケル・J・フォックス財団も精力的に活動している。いつかは、きっと克服されるだろう。その日のマイケルの笑顔を見たい。

  • この題名どおり、病気をとてもポジティブに考えられる珍しい人。
    映画も知ってるだけに、興味深い。
    読み終わったあともう一度読んだ。

  • 若年性パーキンソン病を患ったマイケル・J・フォックスが、生い立ちから俳優としての成功と病気発症からそれに向かい合い精神的に成長する姿を描いた自著。
    マイケルの家族愛と病気に真摯に向き合う姿勢に感動する。

  • バック・トゥ・ザ・フューチャーで有名な、マイケル・J・フォックスの自叙伝。彼がこの当たり役をつかむまでの苦労話や、成功を手にした途端のパーキンソン病発症、そしてそれからの闘いの日々がつづられる。

    当時芸能にあまり詳しくなく、この本が話題になるまで彼がそのような難病を患っているとは知らずに、あまり見ないなあくらいにしか思っていなかった。バック~の陽気な好青年のイメージの裏にこういう来歴があり、そして未来があったと知り、衝撃を受けた覚えがある。

    闘病に苦しみ、周囲との関係に悩みながらも、前に進むことを選んだ彼の思いが伝わってくる一冊。

  • 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でくらいしか観たことがなかったので、彼がパーキンソン病を告白した時に、その年齢を見て混乱した。
    てっきりその映画の時、彼はティーンエイジャーだと思っていたから。

    実は苦労人で、結構な年齢で高校生役をやっていたということをこの本で知った。
    童顔で背が低いという、彼のコンプレックスが、彼をスターに押し上げたのだ。
    けれどスターの生活は、思うほど素晴らしいものではなく…。

    著者はスターだったときの自分をラッキーマンと言っているわけではなく、不治の病を得た自分をラッキーマンという。
    確かに彼は人に恵まれている。
    落ち着きがなく、人と同じことをするのが苦手な彼を、最後まで絶対的に信じてくれていた祖母。
    著者と真逆の生き方をしてきたのに、最後は息子の生き方を認めてくれた父。
    そして、アルコールに溺れ、自分と向き合うことから逃げ続けた著者を、最後まで見すてずに支えていた妻・トレイシー。
    特に、女優として舞台に立ちながらも子育てと夫育てを両立させたトレイシーには頭が下がる。
    私ならさっさと夫を見捨てるが。(だって自分に甘くてだらしなくて飲んだくれだったんだよ)

    若年性パーキンソン病に罹り、最初は病気を隠すため無理に無理を重ねていたが、隠しきれなくなり公表してからが多分彼のラッキーマン人生が始まる。
    全力で走れなくなったことで、ゆっくり周りを(そして自分を)見渡す余裕ができ、つまり自分は多くの人に支えられていることを知り、できないことをくよくよするのではなく、まだできることを喜べる人間になった。

    そりゃあ病気になるよりならない方がいいよ。
    でも、張りぼての世界でスターになるより、地に足の着いたありのままの自分でいた方が幸せっていうのはわかる。
    スターはスターであるだけで、世の中のルールを免除され、おいしい思いを向こうから提供されるんだって。
    持てる者こそ使わずにすむから余計に持てるシステム。
    だからアメリカのセレブって、若くても成金生活が送れるんだと思った。

    思うように体を動かせなくなってしまう。
    思ってもいないのに、身体が勝手に動いてしまう。
    これがパーキンソン病の特徴だそうですが、脳が身体を支配できなくなるということではアルツハイマーも同じ。
    母のことを時折思い浮かべながら読んだ。

  • 著名人、パーキンソン病、それぞれの視点から自分の知らない世界を垣間見えました。

  • 高校のとき、この本が友だちの家にあったのでぱらぱらめくったことがあった(たぶん彼は最後まで読んでいない)。図書館でこの本を見つけて何かの縁かと思い、読んでみた。BTTF大好きだし。

    ハリウッドスターの生活って想像してたとおり豪奢。

    BTTF2のときには無自覚だがパーキンソン病の症状がでていた。

    仕事関係の人物がたくさん出てきて覚えられないのでそこはなんとなく読み進めた。

    最近、新たな病気のことを明かして俳優業は終わりになりそう(本書で医者に告げられたと書いていた10年よりはかなり長く働けている)なマイケル・J・フォックスだが、今後はどうなっていくのか。

    20年近く前の本だがこの中でES細胞について述べられていて驚いた。
    日本では、この本が出てから数年後の、山中さんがiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞してから注目されるようになったのではないか?

    マイケル・J・フォックスの努力が報われて、人類がパーキンソン病を克服するときは近いのだろうか?

  • 映画「バック トゥ ザ フューチャー」の主役を務めた俳優のマイケル・J・フォックスの自叙伝です。

    生い立ち、渡米(彼はカナダ出身)、下積み、TVドラマシリーズと映画「バック トゥ ザ フューチャー」シリーズの大ヒットからスターダムに駆け上がった様子、出演依頼が殺到するハリウッド俳優としての忙しい日々、そして、若手俳優として高みを目指している頃(三部作の後くらい)に発症した若年性パーキンソン病のこと、7年ほど病気を隠し苦しみながら俳優業を続けた末に病気を公表した経緯などを、自身の言葉で綴っています。

    これからも難なく活躍し続けると思っていた彼がパーキンソン病だとのニュースを見たときは、あんなに元気な人が…とショックを受けたものです。
    それ以降、大きな映画で見ることもないし、海外の著名人が活動する啓蒙活動や政治活動に接する機会も少ないので、昔の映画での姿を見るたびに、「どうしてるのかなぁ」とぼんやり思い出すくらいでした。

    マイケルは、この本の中で、不治の病を得て、エリザベス・キューラー・ロスがいうところの「衝撃」「怒り」「取引」「落胆」「受容」の段階を踏みながら、病とともにある自らの生き方、すなわち、家族との時間を大事にし、本当に好きなことを仕事にする、地に足の着いた生き方へとシフトチェンジしてきたと言っています。病気を得たからこそ、自分にとって本当に大切なものが何なのか気づけた。そういう意味で僕はこの病気に罹ってラッキーだ、と。
    そして、パーキンソン病の難しさも記されていました。特に若年性パーキンソン病の患者は、職場や周囲にり患していることをひた隠しにしていることが多いとのこと。外見上現れる症状も、ある程度薬で抑えられるために隠せてしまうし、社会で病気への理解が進んでおらず、り患すると分かれば職場を追われるのではという不安があるから。マイケル自身も同じです。こうした患者たちの振る舞いが、実は、病気の研究者のアプローチを阻んだり、行政の支援を届きにくくすることにもつながっているのだそう。最終的に公表ということにたどり着いたマイケルは、有名人である自分が公表したことの意味を冷静に見出し、病気への理解や支援を求める活動にも取り組んでいるようです。

    あらすじだけ見てしまうと、特別な人の感動秘話!のように思えるけれど、格好よく見せるように繕っていたようなことも、苦しみ抜いたことも赤裸々に記してあり、誰にでも起こりうることと受け止められる説得力がありました。生きるということについて見つめる時間になったように思います。

  • マイケル・J・フォックスが半生を綴った本。
    表紙もイケメンだが、裏表紙もイケメンすぎます。

    映画俳優として有頂天になっている時の話や、
    兄弟とのすれ違いの話、
    奥さんとのすれ違いの話、
    そしてパーキンソン病との隠れた闘い…。

    出演作はバックトゥザフューチャーしか見たことないが、それなりに楽しめた。

    10年後を目標に、財団を設立したけれど
    20年経った今も治療法は確立していないんですね。

  • ハリウッド映画好きなら知ってるであろう
    マイケル・J・フォックスの
    自伝+闘病記

    難病なのでタイトルのように
    治るってことは現代医学じゃ無理だが
    俳優として復活できているところは
    タイトル通りかもしれない

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