発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797398328

作品紹介・あらすじ

「無理に治さなくていいのか! 」「目からウロコが落ちた! 」と大反響

「こだわりが強い」「うっかり屋」「気が散りやすい」……発達障害は、疾患モデルではなく、マイノリティモデル!

精神科医として30年あまり。乳幼児から成人まで、さまざまなライフステージにいる発達障害の方たちによりそい、世界的にもまれにみる豊富な臨床経験を積んだ著者が送る「発達障害」解説の決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 「やりたいことを優先する」まずはこれができているか、確認することから始めます。

  • 重複する発達障害の特徴とその対処法について分かりやすくまとめられている。
    ちなみにASDやADHDの最後のDは障害という意味であり、本書では特性の程度という概念を重視するため初めにAS、ADHについての考え方を紹介していた。

    発達障害が重複することでそれぞれの特性が弱くなることがあり、それによって発達障害の診断がつけられないケースが少なくない。しかし当人は生きづらさを抱えているにも関わらず環境調整されないまま過ごしているうちに、うつや不安障害などの二次障害を引き起こされる。そのため、診断にとらわれず個々の特性の程度に合わせて生きづらさを予防していくことが重要となる。

    また、発達の特性を「 ~が苦手」という形で、なんらかの機能の欠損としてとらえるのではなく、「 ~よりも ~を優先する」という「選好性の偏り」としてとらえる方が好ましい。そしてそれが少数派の選好性であるが故に生きづらさを感じるわけだが、ふつう(多数派)との間に優劣の差はなく、お互いがお互いの生きやすいようにやっていけば良いのである。

    自分はADHDの不注意、ASDのこだわりの強さがあると思っている。(一つの物事に過集中するのはADHDの特性だと思っていたが、本書によるとADHDのみの場合興味のある物事に対しても注意散漫になることが多く、ADHDの過集中とされているのはASDのこだわりの強さによるものではないか、とのことだった。興味のある場面では落ち着いてるのに興味が無くなった途端ソワソワするのもASDの特徴とのことで、これも当てはまっている気がする)
    不注意によって落ち込んだりすることもあるけれど、こうした本に救われるのも事実で、児童精神科医によって心が救われる人は世の中に絶対いるんだと思う。

    たまにSNSで発達障害と診断された人が"本当の発達障害は自分で気づけません。気づいてる時点で発達障害ではありません"と言っているのを見るけど、医者でもないのにその発言をするのはは随分と傲慢だよね。生きづらさを身をもって知っているのにどうして他人の生きづらさを無い物にしたがるのだろう。

    ところで本書ではDCD(発達性協調運動障害)も取り上げられてたけど、走る姿がぎごちない、逆上がりができない、球技が極端に苦手、歩いたり作業してるときに体の一部をよくぶつけるなど、出てきた特性にほとんど当てはまっててびっくりした。まあ生活する上で困ってないから良いのだけど…。とはいえ学生時代に体育で皆と同じことを強要されるのは正直辛かったなあ。

    ✏研究によって「この支援法がよい」というふうに書かれたことは、だいたい、 ASDやADHDなどいずれかの障害に特化した内容になっています。

    ✏ASの特性がある人は、こだわりと対人関係を天秤にかけたとき、こだわりを優先する。

    ✏内容が変わることはあっても、こだわる対象がどんどん増えていくわけではなく、こだわりの総量は変わらない。

    ✏LDの特性があるのか、それとも学ぶ機会が少なかったのか判断が難しい。

    ✏発達の特性がある人(とくに自閉スペクトラムの特性がある人)は、基本的には自分のやりたいことを大事にする人たちです。自分のやりたいことに「これ以上は減らせない」という最低ラインがあります。

    ✏発達の特性がある人は、一般の人とは違って、仕事が忙しい時期でも、やりたいことへの情熱がおさえられなくなることがよくあります。食事や入浴、睡眠の時間を削ってでも、やりたいことをしたくなり、しかも、ストレスがたまればたまるほど、そういう思いが爆発しやすくなります。それが、発達の特性がある人の特徴です。

    • ちゃたさん
      ナマケモノさん

      はじめまして。ちゃたと申します。私も発達障害のあるお子さんと関わることの多い仕事をしているもので思わずコメントしてしまいま...
      ナマケモノさん

      はじめまして。ちゃたと申します。私も発達障害のあるお子さんと関わることの多い仕事をしているもので思わずコメントしてしまいました。
      現場にいると障害の有無関わらず様々な生きづらさを抱えた子達が増えていることを実感します。いつだかナマケモノさんのレビューにあった発達障害にかすらない人っているのだろうか?ということにとても共感し心に刺さりました。
      児童精神科医さんの力はとても大きなものがあります。連携によって足りない部分は補い、できることを増やすと環境に適応し立派に自立していく子達をたくさん見てきました。
      長くなりました。これからもレビュー楽しみにしていますね。今後ともよろしくお願いします。(^.^)(-.-)(__)
      2022/11/30
  • 微妙なケースを多く挙げているので、これは、、どうなんだ? 特別に支援が必要なのか? と考えさせられる。「ふつう」に合わせるんじゃなくて、行動の原因を探って、その人ごとに支援のあり方を考えよう、という話。理屈はわかるがなかなか大変。様々な特性と環境調整の考え方、例は参考になる。
    個人的に、不注意な人は失敗にめげない(なので不注意がなくならないともぃえる)がツボ。

  • 発達障害に関わる記事は、連日ウェブにも複数掲載され、図書館では新刊関連本が予約待ちが多数の日々。20年ほど前であれば、白か黒の二元論だったが、研究も啓蒙も少しずつ進み、今では本当に身近にある「発達障害」。

    我が家も御多分に漏れず、それも全員何某かの本人、或いは周囲の困りごとを抱えながらの毎日。手に取った発達障害本は、数知れず。本著は、医療の専門家からの解説本で、新たな支えになりうる心強さを感じられた一冊だった。

    この中では、得意や困難の濃淡や、その組み合わせの例が分かり易く解説され、できないことにスポットライトを当てるよりはむしろ、嗜好性や選好性の強い事柄を優先して、営みにする方法を提示している。
    この発達障害の傾向は、頑張ってもできないことは本当に困難である為、自己否定を積み重ねがちだ。

    むしろ罪悪感を抱かずに、やり過ごせること、手放せることを割り切る知識や方策が大切。特性による苦手な部分を致命傷にせず、生活環境を見直し、時にはパラダイムシフトを図ってみることにより、満足感や達成感がより多く得られそうだ。

    程度にもよるとは思うが、発達障害は、今はブロガー借金玉さんが著作で説明されるように、人それぞれの具体的なライフハックにより日常がより営みやすくなることもある。また精神科医である福西勇夫氏の著作にあるように、グレーも含めた発達障害の困りごとは環境や理解・支援者の有無によって、困りごとの程度が異なるとのことはすでに心得ている。

    「人並み」「普通」という言葉の力に押しつぶされないよう、折角だもの、日々を愉しく送っていきたい。そんなことを感じられる一冊だった。

  • 発達障害関連の本をいろいろ新書でよみましたが
    内容としては、一番かもしれません。
    途中までは、内容的にもそんなに新しいことや、発見や
    納得などもなかったのですが、後半からどんどん引き込まれるように有用な内容が書かれてあると思いました。
    第4章の『やりたいことを優先する!』からどんどん
    引き込まれました。
    環境調整を有用に実施すること。
    やりたいこととやるべきことの図
    それぞれの特性ごとの調整方法
    など。特に著者が書いた独自の各種図表が非常にわかりやすく、前記のやりたいこととやるべきことのバランスの図は
    非常にわかりやすいものでした。
    さらに5章の”自分が『発達障害かもしれない』と思ったらとあとがきは非常にいい内容だと思いました。感動すらするような内容だと思います。
    そういう特性を持っている息子にも読んでほしいとおもいました。

  • 毎年毎年いやになるほどたくさん出版される発達障害関連書籍で食傷ぎみだったのですがこの本はいいですね。これまでたくさんの人に読んでもらいたいなと思う本は佐々木正美先生の本だけだったのですがこの本もリストに加えたい、おすすめの本にしたいと思います。内容・記述的に読みやすいのと自分自身の臨床的な印象とほぼマッチしていることもそうですが、著者の発達障害のある人に対する暖かい視線が感じられる点を特筆したいと思います。ある意味関連書籍の決定版じゃないかな。

  • これこそ、いわゆるグレーゾーンにいる人たちに読んだらためになりそうな内容でしたね。
    わかっちゃいるけどのことから、そしてその先どうしたらいいかまでの内容もきちんとありました。

  • 読前は、発達障害(ADHD注意欠陥多動性障害)(ASD自閉症スペクラム障害)という文字通りの意味を知識として知っているだけでした。
    また「人間はどちらかの傾向がある」ぐらいの浅い知識で、「自分はADHD傾向だから!」深く考えず、30年以上過ごして来ました。
    しかし読後は、「発達の特性を〇〇が苦手、という形で、機能の欠損として捉えるのでなく、〇〇よりも〇〇を優先する、という生来の志向性の偏りと捉える」という筆者の主張が、実際に困った時に役立つ知恵なのだと気がつきました。
    まさに「白か黒かではなく、グレー」で、グレーの色も濃いグレーか、薄いグレーか、どちらかの傾向ではなく、両方「重複」しているのか?どの程度ななか?の視点が重要だと、目から鱗でした。
    自分の特性に照らし合わせて考えると、例えば、雑談が苦手で、自然に相手の話を聞き出すのが苦手でも自分と相手の興味のある話題に絞って、話をするなど、無理の無い範囲内で調整をする事が出来ると感じました。少しでも、生きづらさを抱えている方は、オススメです。

  • この書籍も発達障害グレーゾーンから派生して読み始めた1冊。
    発刊当時(2018年)から考えると、グレーゾーンの概念を理解したうえで読み進めた方が理解しやすいように思えた。

    また、著者自らがうまく図解として落とし込んで説明しているため、どこに自分自身が当てはまるか?とイメージしながら読みす進めることも出来る。

    定型発達かそうでないか。
    でも、ここまで疲弊するのはどうしてだったのか?
    そういったもどかしい部分の回答なども、本書に提示されていたので(発達の特性がある人が社会規範に適応しようと無理をして「過剰適応」する形になってしまう p178)、グレーゾーンに当てはまる自分自身としては、この1冊も思いのほか読了して良かった内容だった。

  • みんな何かしら発達障害なのではないかと思った。

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著者プロフィール

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。東京大学医学部医学科、東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院、横浜市総合リハビリテーションセンター、山梨県立こころの発達総合支援センター所長、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を経て、2018年より現職。博士(医学)

「2020年 『障害者・障害児心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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