カスハラの犯罪心理学 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797681239

作品紹介・あらすじ

あの"お客様"は、なぜキレるのか? 犯罪心理学者が読み解く、現代日本の病。

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、従業員への悪質なクレームや物理的・精神的な嫌がらせ全般を指す。「店員にキレる客」を誰しも見たことがあるように、カスハラは日本で大量発生している。さらに、コロナ禍によって拍車がかかり、被害は拡大している。2022年2月には、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が発表され、現代日本において大きな社会問題と化しているのだ。本書では、犯罪心理学者として長年カスハラにかかわってきた桐生正幸が、豊富な調査実績を基にカスハラが生まれる構造を分析し、その対策を提示する。

【目次】
・序章 日本のカスハラ事情
・第1章 キレる"お客様"たち
・第2章 カスハラの心理構造
・第3章 "お客様"の正体
・第4章 カスハラ対策の最前線
・第5章 カスハラ防止法案という希望
・終章 カスハラのない国へ

【著者略歴】
桐生正幸(きりう・まさゆき)
山形県生まれ。東洋大学社会学部社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。山形県警察の科学捜査研究所(科捜研)で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)などがある。

感想・レビュー・書評

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  • ■カスタマーハラスメントの定義
     顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの。
    ■カスハラ加害者の5つのタイプ
    ①思い込み・勘違い
     責任転嫁から引っ込みがつかなくなる
    ②歪んだ正義感
     アドバイスと称したハラスメント
    ③ストレス発散
     個人をターゲットにする
    ④攻撃的
     土下座や謝礼など過剰な要求
    ⑤強い執着
     精神状態からくるハラスメント
    ■攻撃する人の特徴
    ①回避・防衛
     この攻撃行動を取る人は、「自分が危害を加えられている」という被害意識を持つ傾向が強い。心理的側面としては「猜疑心」や「被差別感」といった人格特性があり、負の情動などを持ちやすいことが指摘されている。
    ②影響・強制
     この手の攻撃で典型的なのは、自分の意見を通すために戦略的に攻撃行動を使う人。心理的側面としては「自己主張」「競争心」「支配性」などが強いことが指摘される。自分の利益に拘る人、妥協などを嫌う人が、他人と対立した際、自分の要求を押し通すためにこの攻撃行動を使うことが多いと考えられる。
    ③制裁・報復
     「自分が正義」「責任は相手にある」と信じる傾向の強い人が取る攻撃タイプ。心理的側面としては「偏った信念」「融通性に欠ける」「やられたらやり返す」「執拗に思い続ける」といったことが指摘される。法律や社会的ルールとその人個人のルールがごっちゃになっていて、違反する人を制裁し復習したいという思いから攻撃行動を取る。
    ④同一性・自己提示
     体面やプライドへのこだわりが強い人、たくさん注目されたい人が取る攻撃タイプ。心理的側面としては「名誉や信用を守る」「自分のイメージを良くする」といったことが指摘される。
    ■カスハラ加害者の傾向
    ・感情の傾向
     自尊感情が高い、社会への不満が高い
    ・性格の傾向
     完全主義的な傾向が強い、不寛容性が高い、攻撃性が高い
    ・話し方・言葉遣いの傾向
     大声、話し方が威圧的・一方的、身振り手振りが激しい
    ・女性の傾向
     一方的な話し方、謝罪を求める内容の話
    ・年令による傾向
     50代は大声で攻撃的、40代は揚げ足をとる、30代は淡々と静か
    ■消費者の8つの権利
    ①生活のニーズが保証される権利
    ②安全への権利
    ③情報を与えられる権利
    ④選択をする権利
    ⑤意見を聴かれる権利
    ⑥補償を受ける権利
    ⑦消費者教育を受ける権利
    ⑧健全な環境の中で働き生活する権利
    ■消費者の5つの責任
    ①批判的意識を持つ責任
    ②主張し行動する責任
    ③社会的弱者への配慮責任
    ④環境への配慮責任
    ⑤連帯する責任

  • 予想と違った。

  • 同じ日本に暮らす者同士が、互いを尊敬する気持ちを持って過ごせば、そんなありえないことは起きないと考える。自尊心は、高すぎても低すぎても厄介ではある。

  • 顧客と店員の地位に勾配が発生している時点でおかしいってことなんだよな~結局人と人だからお互い様の気持ちを持たないといけないし、お客様は神様ではないんだよってことをもっと声を大にして言いたい。接客業の人必読。

  • カスハラの犯罪心理学。桐生 正幸先生の著書。カスハラカスタマーハラスメントを放置すると従業員の心が壊れてしまう。カスハラカスタマーハラスメントには対応しない。カスハラカスタマーハラスメントには毅然とした態度で接する。度を過ぎたカスハラカスタマーハラスメントは犯罪。カスハラカスタマーハラスメントを平気でするような人たちはもしかしたらカスハラカスタマーハラスメントがエスカレートして犯罪をするかもしれない。カスハラカスタマーハラスメントを甘くみると被害が拡大する。

  • カスタマーハラスメントとは何か?
    何が問題なのかを理解するために読みました。

    著者のいう通り、根本的な対策は法整備だと思います。
    それまでの間にできることは経営者が、顧客に対して「おたがいさま」の姿勢を貫けるかなのだと感じました。

    主に流通系の事例が多いなぁと思いました。
    IT(SI)系のカスハラ事案も深堀してくれると嬉しいです。
    こちらの業界もなかなかひどいものなので…

  •  結局は個々の対人関係上の上下意識からカスハラが生じてきているということである。それを防ぐにはこの上下意識を失くして、対等な「おたがい様」意識を作り出すことに尽きるとする。と同時に「カスハラ・プロファイリング・メソッド」を提唱している。やはり、顧客側に問題があるとするものであれば、問題の解決からは程遠いように感じる。法整備しかないのであろうか。

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著者プロフィール

桐生 正幸(きりう まさゆき)

山形県生まれ
文教大学人間科学部人間科学科心理学専修退学
学位授与機構より「学士(文学)」,東亜大学大学院より「博士(学術)」を取得
山形県警察本部科学捜査研究所主任研究官,関西国際大学教授を経て,
現 在 東洋大学社会学部社会心理学科教授
主 著 ウソ発見(共編著) 北大路書房 2000年
    幼い子どもを犯罪から守る(共編著) 北大路書房 2006年
    嘘とだましの心理学(共著) 有斐閣 2006年
    犯罪者プロファイリング入門(共編著) 北大路書房 2006年
    性犯罪の行動科学(共編著) 北大路書房 2010年
    犯罪者プロファイリングは犯人をどう追いつめるか 河出書房新社 2011年

「2017年 『テキスト 司法・犯罪心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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