本書は、販売管理システムの構築に必要な“業務知識”と“データベース設計”を基礎から学べる解説書である。受注、出荷/売上、請求、発注/仕入、在庫管理などの各業務について、設計時に考慮すべき事例をつぶさに挙げ、それに対応する最適なデータベースをER(Entity‐Relationship)図で示している。巻末には業務とシステム両方の用語集を掲載。
【1】業務の裏には会計あり。業務データは必ず仕訳データに連携される。
販売業務では、受注→出荷→売上→請求→入金のような業務フローがある。
業務データの裏には、仕訳データと連動している。
普通はお金のやり取りが発生したタイミングで仕訳が発生するから、
売上処理で「売掛金//売上」、
入金処理で「当座預金//売掛金」という仕訳が発生しているだろう。
業務SEは、この流れを理解しているから、業務分析ができる
仕訳の知識が必要な理由は、業務には例外処理や訂正処理が非常に多いから
ERPでは、会計システム連動の機能は、普通は、自動仕訳と言う仕組みでIT化されているのが普通
【2】赤黒伝票という訂正仕訳。逆仕訳。
日本特有(?)の会計処理として、売上や入金などに関する仕訳データを修正する場合、赤黒処理を行う。
つまり、直接データを修正するのではなく、黒伝票を赤伝票で相殺して、正しい仕訳を追加する方法を指す。
簿記3級では、訂正仕訳とも呼ばれていて、「まず正しい仕訳をメモしておき、誤った仕訳の次に逆仕訳、その次に正しい仕訳を書く」(正誤逆正)
【3】締め処理という考え方。支払いサイト、月次締めの違い。
日本特有の請求処理として締め処理という概念がある。
例えば「月末締め翌月末払い」とは、毎月末に売上や仕入の請求を締めて、翌月末に入金や出金を行うことを指す。
つまり、掛取引を締め日と言うタイミングで一括処理するのが日本の商習慣。
日本の会社は基本的に、5日、10日、20日、30日のように5の倍数の日に締め日を指定しているから、銀行は5の倍数の日は非常に忙しい。
給与振込も普通は5の倍数の日が多いだろう。
支払い方法は銀行振込以外にも日本特有の手形取引という手法もあり、手形の振出日から期日までの期間を支払いサイトという。
「月末締め翌月末払い」の例では、支払いサイトは「月末の振出日から30日サイト」になる。
「20日締め翌月末払い」の例は、支払いサイトは「振出日20日から40日サイト」になる。
【4】残管理を業務システムがサポートする。
受注残(受注したが未計上)、未請求残(売り上げたが未請求)、売掛残(請求したが未入金)などの例がある。
つまり、残管理を徹底して、出荷漏れ、請求漏れの防止や未入金顧客への督促などを支援したいのだ。
昨今のように会社倒産が多い場合、売掛残の管理がしっかりしていないと、せっかく売上があっても入金されないと言う悲しい事態が起きやすい。
【5】株式会社が必要とする会計帳票。主要簿と補助簿。
株式会社が必要とする会計帳票には簿記3級では主要簿と補助簿に分かれる。
主要簿は仕訳帳と総勘定元帳。
仕訳帳は日々の仕訳を日別に記録した帳簿。
日次で出力する時が多いが、量が膨大なので本当にチェックしているのか、と思いたくもなる。
総勘定元帳は、仕訳帳から勘定科目ごとに転記した帳簿。
いわゆるT字形勘定に相当する。
総勘定元帳は月次で出力する時が多い。
総勘定元帳は、国税局や経営者へ提出する会計帳票の元ネタとなる帳簿であり、とても重要。
補助簿は、買掛金元帳、売掛金元帳、商品有高帳は既に上げたが、他に重要な帳簿として、現金出納帳や当座預金出納帳がある。
【6】業務の裏に法律あり。
最近は、J-SOX、個人情報保護法、コンプライアンス、CSRなど会社を縛る色んな法律や概念がある。
業務システムの仕様が複雑になるのは、それらの法律を反映させる必要があるからだ。
■目次
1 業務システムの概要とマスタの設計(販売管理システムの全体像
基幹業務システム構築のポイント
部門/社員/商品マスタの設計 ほか)
2 販売システムのDB設計(受注業務のDB設計
出荷/売上業務のDB設計
請求業務のDB設計 ほか)
3 仕入/在庫システムのDB設計(発注/仕入業務のDB設計
入庫/倉庫移動業務のDB設計
在庫管理業務のDB設計 ほか)