クトゥルー・オペラ 邪神降臨 新装版 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)
- 創土社 (2015年3月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784798830247
作品紹介・あらすじ
太古の昔、地球を支配していたのは異形のものたちであった。宇宙の底、虚無の深淵で長い眠りからアザトートは目覚めた。"旧き神"の手で知性の全てを剥奪されたアザトートの脳裏に浮かんだのは「-その星を、いま一度、この手に」であった。1997年、世界各地では異形のものたちが邪神の復活を前に蠢き始める。邪神たちを迎えうつために選ばれし7組の双子たち。果たして彼らは人類を、地球を、救うことができるのか!
感想・レビュー・書評
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二つの点で画期的な作品だ。
まず第一に、ソノラマ文庫というジュヴナイルのレーベル(当時)で、クトゥルー神話のオリジナル作品を十代の読者に読ませたという点。一般に、創元のラヴクラフト全集などを読むと思われる年齢層よりも、これは若い。読書体験がまだ鮮烈である年代の読者に、クトゥルー神話を紹介したことになる。
しかも、初めてクトゥルー神話に接するであろう読者を想定して、クトゥルー神話をわかりやすく解説している小説でもある。
第二に、スペース・オペラとして描かれている点。これは国際的にみてもかなりユニークだと思う。しかも、スペース・オペラとして非常にオーソドックスな作りになっていて、基本的な科学的要素を解説しながら、うまくエンターテイメントにつなげている。
全体にテンポが良く、大変読みやすい。ご贔屓の邪神があったとして、ほとんどの邪神が登場するので、わくわくしながら登場を待てる。
しかし、欠点もある。それは、どの邪神も、倒される時はかなりあっさり倒されてしまっているというところだ。とくに、人気の高いクトゥルーが真っ先に、ほとんど一瞬で倒されてしまっているのは残念。クトゥルー神話は、本来、「人間が立ち向かうことが不可能な宇宙的恐怖」を主体としているのに。これでは、その宇宙的恐怖という壮大さが感じられない。そこだけが大きな失点と言えるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示