モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方 3歳 〜 12歳 の子ども対象
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2020年4月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
- / ISBN・EAN: 9784799325995
感想・レビュー・書評
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【感想】
本書では、従来の褒めかたや叱りかたである「条件付きの接しかた」をタブーとし、子どもと親が対等で尊重し合いながら言葉を交わす大切さを論じている。
何故家族の間で尊重し合う必要があるのか?
それは、子どもは意外と「大人びている」からだと、私は思っている。
子どもは意外と空気を読む。気まずい空気では黙り、神妙な空気では厳かになり、楽しい空気ではいの一番にはしゃぎだす。先生(偉い人)からのえこひいきが嫌いであり、当たり散らす怒りかたと、自分のためを思った怒りかたの違いを見抜いている。
子どもは行動こそ幼稚だが、行動を引き起こす心理面は、実年齢よりもある程度発達しているといえるだろう。子どもは想像以上に大人なのだ。(逆に言えば、いい大人でも行動原理は子どもと大差ないということだ)
それを前提とすれば、子どもをしかる・ほめるときは、大人相手と近い形で、対等な関係性のもと言葉を選ばなければならない。
ほめる・しかるとは本来、上の立場の者が下の立場の者に評価を下す行為だ。そうした一方的なコミュニケーションを繰りかえしていては、例え投げかける言葉がポジティブであっても、「自分をきちんと見てくれていないな」と感じてしまう。結果、ほめ言葉を安っぽく捉えてしまい、親のご機嫌を取るようになってしまう。
大切なのは愛をもって尊重することだ。言い換えれば、「対等な立場からあなたを尊敬していますよ」と態度で示すことなのだ。
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この本で私が一番気に入っているのは「おわりに」の部分だ。
「おわりに」で書かれているのは、「無理しない子育て」の方法である。
本の中では子どもを正しく褒めて正しく叱る方法が紹介されていたが、それよりも大切な心がけがある。それは、「子どもに対して過度な期待をせずに、親自身の心の満足度を高い状態で維持すること」だ。育児の一丁目一番地とも言える優先事項である。
その言葉は、子どものためを意図して書かれたものではない。むしろ、育児に悩む親に対して向けられた金言であり、抱えきれないほどの子育てに潰されないようにするための予防線である。
自分がせっかく教えたのに、今日も部屋の片づけをしない。せっかく買ってきたおもちゃなのにすぐ飽きて放ってしまう。上手くいかないイライラが余計口を悪くし、子どもにもっともっと強くあたってしまう……。
勉強しろ、早く寝ろ、好き嫌いをするな……。育児にはさまざまな小言がつきものだが、全て子どものためを思って口にしていることだ。しかし、子どもがそれを「愛情の裏返し」と受け取ることはほとんどない。結局のところ、あれこれと口を出したとしても、そのほとんどは徒労に終わることになる。
であれば、親に必要なのはむしろ、子どもに対して「期待していること」と「期待していないこと」を線引きし、その枠内で無理のない育児をする、ということではないだろうか。そして、万事が親の思い通りにならない以上、子どもが言うことを聞かないなんて取るに足らないと割り切り、ストレスとして抱えこまない――それが健全な育児なのではないだろうか。
子育てに見返りを求めてはいけない、まさにこれに尽きるのだ。
本書は一生懸命な子育てを教えているわけではない。むしろ、肩の力を抜いた子育てを教えてくれているのだ。
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【本書のまとめ】
1 従来の褒めかた・叱りかたの罠
日本人に多いとされる「自己肯定感」の低い子どもは、「非効率な褒めかたや叱りかた」が原因かもしれない。
ほめるという行為で褒美を与えることは、罰と同じように、無意識であったとしてもやりかたによっては子どもたちの行動やモチベーションを外的にコントロールし、その子の本当にやりたいことの妨げになる可能性がある。
モンテッソーリ教育などのオルタナティブ教育は、子ども一人ひとりを生まれながらに能力を持ち合わせたパワフルな学習者であるだけでなく、権利をもった一市民としてみなす。
2 無条件の接しかた
子育てにおいては「無条件の接しかた」、つまり行動の良し悪しにかかわらず愛情を注ぎ、子どもの気持ちに寄り添うのが有効である。子どもの考え方や行動の理由をまず考えるやり方だ。
反対に、条件付き、つまり愛情や褒美を餌にする接しかたを繰り返すと、褒められたときに愛されていると感じ、逆にそうでないときには愛されていないと感じてしまう。
一つ大切なことは、無条件子育てとは、子どもに好き放題させることではない。無条件に子どもの言うことを聞くことでもない。具体的には、次の5つの原則に沿って子育てをすることだ。
①ほめかたと叱りかたに気を付ける
②子どもに対するイメージを見直す
③子どもにとって良きリーダーである
④子どもへの要求を考え直してみる
⑤子育ての長期的なゴールを持つ
①ほめかたと叱りかたに気を付ける
→能力や見た目に集中した声かけではなく、努力や経過に言及したり、子どもの行動について具体的に声をかける
②子どもに対するイメージを見直す
→大人は、無意識のうちに大人に「迷惑」をかけない子どもを求めている。大人の勝手な思い込みが、子どもの可能性と経験を狭めることになってしまう。
③子どもにとって良きリーダーである
→子供の自立したい気持ちを尊重し応援しながらも、自由に伴う責任の大きさも提示する。また、子どもを頭ごなしに批判したり、子どもの意見を一蹴したりせず、話し合いをもとに解決策を見出す。
⑤子育ての長期的なゴールを持つ
自分の子どもにどういう人間になってほしいかを考え、普段の自分の接しかたがこの子育ての長期的なゴールの妨げになっていないかを考えてみる。
3 ほめるときのポイント
①成果よりも、プロセスをほめる
②もっと具体的にほめる
③もっと質問する
子どもが本来求めているのは評価ではなく、何かを達成したとき、新しいことを発見したとき、嬉しいことがあったときに、大好きな両親や先生とそれを共有すること。そのために、結果よりも過程、漠然よりも具体、YES/NO質問よりも自由回答形式の質問をする。
(例)才能あるね!→すごく集中して何度もチャレンジしていたね
さすがお兄ちゃんだね!→自分から進んで挑戦してくれたんだね
えらいね!→最後まであきらめないのがよかったね
4 叱るときのポイント
①ダメ!違う!をできるだけ使わない
②結果ではなく努力やプロセスに目を向ける
③好ましくない鼓動の理由を説明する
④親の気持ちを正直に伝える
(例)
・壁に落書きをしたとき
何て悪い子なの!→壁以外にどこに描けるか一緒に考えてみようか
・ジュースをこぼしてしまったとき
なんでそうやっていつもこぼすの!→どうしたらこぼれずに済むかな?
・門限を守らないとき
どうしていつも遅いんだ!→遅くなるとすごく心配だから、時間どおりに帰ってきてくれると嬉しいな
5 子どもと親が対等で両方幸せなとき、子育ては上手くいく。
「子どもを尊重する」というのは、好き放題にやらせ、まったく叱らないということではない。叱る前に、自分の期待が子どもの発達にふさわしいものか?大人にとって不都合だから叱っていないか?をもう一度問い直してみる。
ポイントは、「無理しない子育て」をすること。
現代の親にとって、社会が期待する「完璧な母親像」というのは大きなプレッシャー。そのため、理想の母親像に到達していないと自分で感じている場合、強く罪悪感を覚えてしまう。
大切なのは親自身が幸せであること。仕事と子育ての両立で焦ったり罪悪感を感じたり、あるいはストレスを感じている母親と一緒に時間を過ごすほうが、子どもの心にネガティブな影響があることがわかっている。
親自身が幸せであれば、子どもに与えられることも増える。
全部やろうとしなくていい。ときには大げさに褒めたりイライラして叱ったりしてもいい。反省・成長を繰り返しながら、自分にできることをできる範囲でやる、そんな子育てでいいのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全パパママが読んで子どもへの声かけについて考えてほしい一冊。最近息子がとても扱いにくいため、今までの子供への声かけが良くなかったかなと思い読んでみました。この本で出てくるよくない例で声かけしていることが多いと気づかされました。声かけの視点を変えても翌日から子供の態度が変わるわけではないのでできているか心配になりますが少しずつ変わりたいと思わされました。
そして、褒め方叱り方は自分で学ばないと身に付かないないことに気が付きました。全ての親が子供に対して行うことなので全パパママに読んでほしいです。
自己啓発本の定番のフレーズですが「人を変えるにはまず自分から変わること」を実践するきっかけになります。
●声かけ例がたくさん書いており参考になる
本書でも書いてありますが正しい声かけをしても思ったような反応がないかもしれません。私も読んでいてここは息子だったら「知らない」で終わるなと感じた部分もありました。それは今まで親である私たちが正しくない声かけをして子供の自己肯定感を低くしてしまっていたかもしれません。
●パパにも読んでほしい
会社で部下に指示するように子供をコントロールしようとあれこれしていませんか?子どもは自立した個人なんだから子供の意見があって当たり前です。子供が言うことを聞かなかった時にどう対応するか?言うことを聞かなすぎたり、時間がなかったりしてイライラして本書で出てくるよくない例の声がけをやってしまう気持ちはよくわかります。そのような声かけが正しくないと知っているだけでも、普段の声がけを改善できるきっかけになると思います。
●褒めればいいってもんじゃない
とりあえず「すごい」って言ってませんか?プロセス褒めを意識するには子供の何が凄いかを親が見なくてはいけません。親が特にすごくないなと感じてもそれでもいいところを探して褒めないと子どもの自己肯定感は正しく伸びて行かないと理解しました。
●おわりに にジーン
他のかたも書かれていますが「おわりに」で言われていることはママを取り巻くリアルな実態が書かれており共感しかありませんでした。 -
子どもとの関わり方を見直すのにとても良い本。
3歳(年少)5歳(年中)の育児に苦戦していて、感情的に怒ってばかりいたので読んでみた。
著者は「一個人の研究の結果を書いたまで」と書いているけれど的を得ていて、どれも私にはできていないことでとても参考になる。また会話の具体例が多く分かりやすい。
自分が改めなきゃなと落ち込んだ最後に『おわりに』を読むとちゃんと母親の気持ちに寄り添ってくれてフォローしてくれていて泣けてくる。そんな疲れたママにオススメ。
以下は記録として...
*できなかったことばかりに目を向けて叱るのではなく、できた時に子供がそれを言ってこなくても成長に気付いて褒めてあげること、それが次のやる気につながる
*褒め方の改善はポジティブなので簡単
叱り方は自分の感情をコントロールしなきゃで難しい
*子どもが1日中喋っているのを聞くのがしんどくてうるさいと感じていたけれど、注意深く聞く“アクティブリスニング”を心掛けたい(話に余計な口出しをしない)
*子どもは自分に関心を向けて欲しい、褒めて欲しいと思っている。家事に追われていても帰宅したら一瞬手を止めて1回満足のいくまで幼稚園での出来事を聞いてあげたい
*一緒に過ごす時間の長さよりも、いかに質の高い時間を確保して中身のある時間を一緒に過ごすかということが大事 -
ほめれば子どもは育つと勘違いしていた。子どもが自立することをイメージしながら受け入れ、共感し、具体的にプロセスをほめ、そして質問する。出来そうでできない。子どもを信頼し、よく話を聴き、言い換え、明確化を繰り返しながらゴールをみせてやる。子どものリーダーとして。なるほど。
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「育児書」というものを読むことに抵抗感はあったが、評価が高かったので、電子版で購入してしまった。
基本的な心構えを「子どもを他者として尊重する」として、具体的なコミュニケーション方法を、想定される子育てでの場面ごとに書かれていた。
基本的は方針も納得できたし、具体例もあったから分かりやすかった。
単純な言葉で褒めたり叱ったりしない。
褒めるとは過程や方法を、
叱るときは理由を説明する。
聴くときは真摯な姿勢で受け止め、容易にジャッジやアドバイスはしない
よきリーダーになる。一緒にルールを決める。
などなど…
コミュニケーションほヒントがたくさんあった。
自分なりの解釈だけど、結局会社とかで後輩指導すれときと同じような心構えですればいいのかななんて思った。
最後に、
・母親自身の心の満足度が高い状態であることが子供にもっても大事。完璧を目指してイライラしない。
・一緒に過ごす時間は長さより質が大事。
ということが念押しで書かれていて、今の時代に即している感じも好感度が高かった。
バタバタした日常の中で、どうせ忘れてしまうのと思うので、また折を見て読み返したい。 -
子供の褒め方叱り方に悩んだときに読みました。
参考になるところもありますが、現実は教科書通りにそううまくいかないところもあります。
ただ実践できなくても知識として知っておくのはいいことだと思いました。
夫婦でこの考えを共有しました!
正解はないけれど、親が子供のことを考えて悩みながら試行錯誤して家族が成長していく過程が大事なのかなぁと思いました。 -
図書館で予約したら、何百人待ちだったので諦めて購入。売れに売れているようだ。内容は納得。シンプルルールだけど実際に毎秒やるのは難しい。あとがきで肩の力を抜いてと書いてあったのでほっとした。
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褒め方や、しかり方の例や、その理由を書いており、
分かりやすく、とても面白かった。
読んだ日から実践してます。
また、最後に「理想の母親像」のプレッシャーと罪悪感と、
親自身が幸せであることが大切について書いてあるので、
子育てに悩んでる人にお勧めです。
【NGな褒め方】
おざなり・人中心
・・「すごいね」などの具体的な理由がない褒め方。
【Goodな褒め方】
プロセス中心
・・「最後まであきらめないのがよかったね」などのプロセスを褒める
【アクティブ・リスニング】
やっぱり、子供を1人の人と認識して話を傾聴する事が大事 -
タイトルだけで64文字もある、とにかく買わせたい系の中身のない本かと思いましたが、なかなか濃い内容でした。「わたしメッセージ」ひとつをとっても、これを正しく実践するのは困難だろうと思います。
子供との関係が悪化する7つの習慣、すなわち批判する、責める、文句を言う、脅す、罰する、目先の褒美で行動をコントロールする、がみがみ小言を言う、というのは特に参考になりました。「批判すると子供との関係は悪化する」などとひとつずつ書いていけば、確かにそうだと納得します。
いま上記を並べて思いましたが、例えば会社の上司に対してこれらの行動をとる人は居ないはずです。その理由の一つには、上司に対する敬意があります。子供に対してこれらの態度を取りそうになった時、「上司に対しても同様にするのか」と我が身を振り返れば、上手くいくこともあるのかもしれません。-
子どもとの関係が悪化する7つの習慣というのは、(グラッサー博士の)「選択理論心理学」で、言われていることなのですね。
切り出して記載してくだ...子どもとの関係が悪化する7つの習慣というのは、(グラッサー博士の)「選択理論心理学」で、言われていることなのですね。
切り出して記載してくださっているのを見て、気付きました。
もう一度読み返してみようと思います。2023/09/20
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