検事の死命 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800232069

作品紹介・あらすじ

郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う「心を掬う」。獄死した佐方父の謎の核心が明かされる、感涙必至の帰郷小説「業をおろす」。大物国会議員、地検トップまで敵に回して検事の矜持を貫く「死命を賭ける」。検察側と弁護側双方の、絶対に負けられない裁判の火蓋が切られる「死命を決する」。全4話を収録した、佐方貞人シリーズ最新刊。圧巻の人間ドラマが、胸を打つ!

感想・レビュー・書評

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  • 佐方シリーズ第3巻。

    何故実刑をすすんで受けたのか、前巻の続編でもある獄死した父の核心を描いた「業をおろす」含めた全4話を収録。

    面白いのに共感、推したい人物がいないのは何故だろう?

    そろそろ短編ではなく長編を読んでみたい。

  • 短編ですが、本懐の続きの話があって面白かったです。

  • 佐方貞人シリーズ第三弾。主人公の父親の話しである「業をおろす」は泣けてきます。

  • 佐方貞人シリーズ3作目

    前作の「検事の本懐」は陰鬱な短編が多かった印象だが、
    今作「検事の死命」はスカッとする内容だった

    佐方陽世の罪について、真相が明らかになる流れはシリーズ物の面白さが際立っていた

    法廷物としてのヒリヒリするやりとりは緊張感があるなかで、
    事務官増田の視点で事件の真相が徐々に見えてくるあたりは最高でした

    「罪はまっとうに裁くもの」だがあまりに無茶をして権力に楯突くのも
    読んでいて折れない姿勢は憧れるが・・・
    1作目で組織不正が許せず検事を辞めて弁護士になっているので
    ほどほどにしてもらいたい(^_^;)

  • 佐方シリーズますます好きになる

  • すごい検事、佐方貞人シリーズの短編集。
    木村拓哉主演のテレビドラマHEROのような話。
    ストーリーも面白く、すぐに入り込んで一気に読み終わってしまった。
    こんな主人公のような検事ばかりだと日本は平和になるのにと思った。
    この手の話は出世ばかり考える検事と金儲けのためになんでもやる弁護士が必ずといっていいほど出てくるが、そんなにひどい世界なのかと悲しくなる。

  • いやはやこれはすごかった。(毎回言ってるな)
    『検事の本懐』の続編だが、前回以上にパワーアップしている!
    めっちゃ好き。
    佐方貞人シリーズの中で一番好きかも。


    『検事の死命』 柚月裕子 (宝島社文庫)


    面白かったなぁ。
    振り返ってみれば、シリーズ一作目の『最後の証人』は、もっとジタバタした感じだった。
    それが回を重ねるにつれどんどん無駄が削られすっきりと洗練されて、いい意味での安定感が出てきたような気がする。

    読了後の充実感は爽快。
    ひと仕事終えたあとにキュッと一杯やる熱燗のごとく、五臓六腑に沁みわたるよ。
    いや、だってね、ここの男の人たちって、それはそれは美味しそうに日本酒を飲むものだから。
    行きつけの飲み屋が「ふくろう」という名前だというのも、今回初めてわかるしね。
    止まり木のいちばん端っこでいいから、飲み会に参加させてほしいなぁ。


    郵便物の紛失という一見小さな事件を、トイレの浄化槽をさらってまで、佐方が執念で解決に導く「心を掬う」。

    佐方陽世のストーリーの完結編、陽世の幼なじみが仕掛けた壮大なセレモニーに涙する「業をおろす」。

    電車内での痴漢、罪名は県の迷惑防止条例違反。
    しかし、なんと本の半分以上がこの事件に費やされ、逮捕、起訴から裁判までの表と裏が、巧みな筆致でじっくり描かれた連作「死命を賭ける『死命』刑事部編」と、「死命を決する『死命』公判部編」。


    「業をおろす」では、佐方の父、佐方陽世弁護士の隠された真実が明らかになる。

    すべてを背負い、自分だけが罪をかぶって死んでいった陽世。
    しかし実際は、年老いた両親や息子、清水親子、小田嶋家の人々の心に澱を残し、今も恨みや悲しみを生んでいる。

    陽世の幼なじみで龍円寺の僧侶・英心は、そんな仏教で言う“業”を背負ったままの陽世を救うのだ。

    「事のすべてを知り陽世の真情を知ったわしとしては、あいつが現世で誤解されたままでいるのが苦しゅうて苦しゅうて、かなわんかったのです」

    この英心の言葉は、前作から陽世の話を読んできた私たちの気持ちを代弁してくれているかのようだった。
    前作に登場した週刊誌記者の兼先も参列できたらよかったのにな。
    第三者として、陽世と佐方のことを見届けてほしかった。(記事にはしない前提でね)


    さてさて、一番すごかったのは何と言ってもやっぱり「死命」二連作ですね。

    四か月にわたる男たちの闘いは圧巻だった。


    被疑者の名前は武本弘敏。
    痴漢の現行犯逮捕であったが、武本は容疑を否認していた。
    さらに、武本の後ろに強力なバックがついていたことで、話は一層ややこしくなる。

    武本の義母の実家は県内有数の資産家で、政、官に太いパイプがあり、義母の兄が後援会長を務める大河内定和代議士の家系は、三代にわたる法曹界の重鎮だという。
    当然、佐方に検察上層部から圧力がかかる。

    ……が、ほんとにまったくこの人は……
    実にバカ正直に、罪をまっとうに裁かせることが自分の仕事だと、検事正に言い返しちゃうのだ。


    かなり危険で強引なやり方で、筒井と佐方、二人の検事の検事生命を賭けて、武本を起訴に持ち込む場面は手に汗握る。
    しかし、まだまだ問題はこれからで……

    続く公判部編では、検事・佐方の手腕が光る。

    春に、筒井と佐方は刑事部から公判部に異動になった。
    刑事部で佐方が起訴した案件が、公判部で佐方へ配点される。
    やり手だが、勝つためには手段を選ばない井原弁護士に佐方は勝てるのか?


    物語中、井原弁護士が、「そんな青い考えでは、君はいずれその使命感とやらで、自分の首を絞めることになる」と言う場面がある。
    不吉な予言はまあ当たったわけで、佐方はのちに検察を辞めることになるのだが、今、ここまで読んできて、一作目『最後の証人』の、佐方が検察を辞めた理由がちょっと弱いような気がしてきた。

    検事時代にこれほどのこと(上層部との軋轢、例えば特捜を外されたことや、大物からの圧力)を経験しておきながら、あの神田検事の件だけであっさりバッジ叩きつけて辞めるかな。
    筒井さんのキャラもあの頃は安定していなかったし、やっぱりまだまだ深められるエピソードがたくさんあると思うなぁ。


    ワトソン役の増田さんが、結構いい味を出している。
    検察事務官なのに、意外と読者に近い立ち位置で物事を見ているのがいい。

    「この人たちは、いったいなんなんだ」

    ほんとだね増田さん。
    きっと私が彼らのそばにいたら、同じこと思うよ。


    「秋霜烈日の白バッジを与えられている俺たちが権力に屈したらどうなる。世の中はいったい何を信じればいい。」

    こんなことをさらりと言う人がいるから、私はこの物語が好きなのだ!


    「ふくろう」で、臥龍梅を美味そうに飲む三人が目に浮かぶようで、私も心が温まった。

  • 面白かった
    佐方貞人シリーズ第三弾。前作同様、短編連作。
    そして、本作は、前作の続編が含まれますので、「刑事の本懐」読んでから読みましょう。

    ■心を掬う
    郵便物の紛失事件。これを郵政監察官と追いますが、この仕事に対する取り組み方がすごい。
    自ら汚れ仕事も厭わず証拠集めを行います。
    そして、きっちり落とし込みます。
    自分ならできない(笑)

    ■業をおろす
    これが「検事の本懐」の「本懐を知る」の続編。
    なので、前作読んでから、これ読みましょう。

    十三回忌で明らかになる父親が刑に服した理由。
    弁護士の職業倫理と正義の問題に悩んでいた父親。
    まさに業をおろすことが出来ました。

    ■死命を賭ける
    ■死命を決する
    「罪はまっとうに裁かれなければならない」
    その信念が浮き彫りになります。

    混雑した電車内で痴漢行為で女子高生に取り押さえられた中年男性。
    しかし、頑なにその容疑を否定。
    さらに、痴漢された女子高生から「金を払えば示談に応じる」と囁かれたと主張。
    女子高生による冤罪なのか?
    被疑者はその地方の資産家で名門一家
    一方女子高生は過去恐喝容疑で補導された前歴あり
    どちらかが嘘をついていることになります。

    そんな事件を佐方が、様々な圧力にも屈せず、(たかだか、痴漢の事件にもかかわらず)、検事生命を賭けて弁護人と戦います。

    裁判はどうなる?
    という展開です。

    佐方の信念が読み取れる物語。
    まっすぐな生き方に心打たれます。

    とってもお勧め!

  • 佐方貞人シリーズ3作目。「死命を賭ける」と「死命を決する」だけで一冊の本ができるくらい重厚かつ読み応えがあるのに読後感が半端なく軽い。文量の短さが原因でなく、すーっと胸を抜けていくような爽快感が何より心まで軽くしてくれる。佐方のクールに仕事をこなしつつも正義を追い求める心の芯の熱い部分に触れるとこっちまで熱くなる。佐方ではなく増田目線で語られるので自己投影もしやすい。自分が感じた「忸怩たる思い」を佐方が代わりに覆してくれる。そんな気がするからこの本にのめりこんでしまうのかもしれない。

  • 面白かった〜。読み終わるのが寂しくなるくらい面白かった。

    佐方と伊原の裁判でのやり取りは、ヒリヒリした。佐方の冷静沈着な感じは、「罪はまっとうに裁かれなければならない」が根底にあるから些末なことでは揺さぶられない…ということなのか。

    業をおろす…は前作、前々作から寂しく引きずってきたモノに終止符が打たれたようで ホロッとした。

    佐方貞人シリーズ最高です。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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