がん検診を信じるな ~「早期発見・早期治療」のウソ (宝島社新書)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800264206

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  • 覚え書き

    がん検診でがんを見つけても、リスクのあるがんなのかそうでないかまではわからない

    がん検診を受けるデメリット(偽陽性、それに伴う検査、その結果の体調不良。陰性と診断されるまでのメンタル)がメリットを上回る

    がん検診により寿命が伸びたと言う有意な実験結果は存在しない

    がん検診で有効と考えられるのは大腸がん検査のみ(それでも1000人に一人が健診によりがんで死なない。死亡率は健診有無に関わらず変わらない!)
    日本ではランダム検証がされておらず、バイアスがかかり有効とは言えない検証法で検証されたデータに基づき検診の是非に言及している

    がんには種類があり、すぐに進行するがん、ゆっくり進行するがん、非常にゆっくり進行するがん、進行しないがんがある

    すぐに進行するがんは、発見したところですでに転移している可能性が高く、検診による早期発見も困難であり、検診を受けることを推奨する理由にはならない

    非常にゆっくりや進行しないがんは、見つけたら過剰診断となる。不必要な治療を受け、心身ともに害を受ける可能性あり

    がん検診を受けてメリットがある可能性がたとえ1000人に一人でも、受けたいというのであれば受ければ良いが、偽陽性や過剰診断のリスクについて理解したうえで受けるべき

    ★監視療法:がん発見後すぐに治療せず、3ヶ月に一度ほどの頻度でがんを監視し続け、進行した時点で治療を開始する方法。前立腺がん発見された人たちのうち半数が監視療法の元では10年間治療なく監視のみで終わった。
    ⇒前立腺がんの場合は監視療法も重要な選択肢!!!

    ★PET検査、腫瘍マーカー検査:がん検診としての有効性は証明されていない!!

    ●乳がん:乳がん医学会の理事長が乳がん検診にいくべきという考えは捨てるようコメント。発症リスクがある人がその人にあった検診方法をとってほしいとのこと
    特定遺伝子に変異がある人がなるリスクあり。親族で罹患者がいれば要注意。遺伝だけでなく、初潮が早い人、閉経が遅い人、出産しなかった人、肥満の人、ホルモン補充治療を5年以上受けた人。
    若い世代はマンモグラフィは不向き(発見しづらい。被曝のリスクもあり)。乳腺専門医療機関でエコー検査が良い。

    ●子宮頸がん:ヒトパピローマウィルスの中でも高リスクのタイプに感染している人は注意。HPV感染の検査は実費(4〜5000円)で受けれる。高リスクHPVに感染していない人は5年間は細胞診を受ける必要なしと、米国ではされている。

    ●食道がん、胃がん、大腸がん:内視鏡治療は手術不要。早期発見の際は内視鏡治療できるので、これらのがんは検診が有効と考えられる。

    ●胃がん:ピロリ菌に感染していない人はなる可能性が非常に低い。まずはピロリ菌感染及び胃粘膜萎縮の検査をする。ピロリ菌感染なしなら胃カメラ一度して異常なしなら症状でるまでなんもせんでおけ。ピロリ菌は人から人へは感染せず、5歳以上の人には感染しない。感染していたら抗生物質で除菌する。
    ×→バリウム検診。被曝する。誤嚥や腸閉塞のリスク。海外ではほぼしていない。
    ◯→内視鏡検査。ただし技術がないと穿穴や出血リスクあり。医師の選別が大事

    ●食道がん:喫煙、飲酒(特に飲んだら顔が赤くなるタイプ)はハイリスク。胃がんの内視鏡検査の時に一緒に診てもらえる。食道がんの人は咽頭がんにも注意。

    ●肺がん:喫煙で高リスクに。x線検査よりct検査が良いか?ただし過剰診断(すりガラス状結節)に注意。x線検査は海外ではほとんどしていない。

    ●大腸がん:ポリープが沢山見つかった人、大腸が炎症を起こす持病がある人→リスクあり、内視鏡検査を受けた方が良い。大腸がん検診=便潜血検査が推奨→異常があれば内視鏡検査

    ●前立腺がん:過剰診断が多い!ゆっくりがん。PSA検診は過剰診断となる可能性あり、おすすめしない。

    ★がん予防のために
    ・喫煙しない。副流煙も避ける
    ・節度ある飲酒
    ・バランスの良い食事
    ・活動的に過ごし適正体型を保つ
    ・肝炎ウィルス感染検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌検査も。

    ★がんの三大要因
    ・喫煙
    ・感染:肝炎ウィルス(保健所で無料検査)
       ピロリ菌
       ヒトパピローマウィルス
    ・飲酒:アルコール量で一日23g

  •  仕事をしてる時、60歳前でしたか、会社の健診で肺に影があるとのこと、国立がんセンターに再診に行くと、「これは、めずらしい。だいたい即入院なんですが、影が消えてます」と言われました。嬉しい気持ちと「?」が交錯しました。鳥集徹「がん検診を信じるな 早期発見・早期治療のウソ」、2017.3発行。近藤誠先生ほど明確(過激?)ではなく、かといって「がん検診」が決していいとは仰ってません。がんになった場合、がんとどう向き合うか、一筋縄ではいかないようですが、参考にしたいと思いました。

  • 読んでいて繰り返しが多いのが気になったが、その分筆者の主張は痛いくらい伝わった。過剰診断の弊害について医療側もメディア(週刊誌などを例外として)もほぼ無言を貫いているのは、やはり由々しき問題だろう。

  • ざっと読むと、近藤誠さんの理論に近い。つまり、ガンには急性のもの以外にゆっくりとしか進行しなかったり、ほとんど進行しないもの(近藤さんのいう「がんもどき」)がある。だから、早期発見、早期治療は余分な負担を患者に与えるだけで意味がないからやめろというものである。少し違うのは、発達するガンのうち、ゆっくりだが大きくなっていくものもあり、それは治療した方がいいと言うが、これとて、がんもどきとどうやって区別するか難しい。前立腺ガンなどは、これによる死亡率はほとんど増えていないが、罹る人の数は7倍にもなったという。それは早期発見を奨励した結果で、この人たちの多くはやらなくてもいい(過剰)治療、生検をして体を傷つけることになるのである(ぼくも7年前にあやうくやらされそうになった)。欧米では、検査を受けた人と受けてない人でどのくらい差があるかの調査を大量に長期にしている。その結果から言っても、日本での検査奨励はあまり意味がないのだが、日本でこのような調査ができないのは、最初に検査を大がかりに提唱したからだそうである。鳥越さんが都知事選に出たときに、自分のガンのことを話題に、早期検査を公約にかかげた。ぼくはくだらないと思ったが、鳥集さんも同意見だった。鳥集さんは医療ジャーナリストでとして多くの医者に取材し、たくさんの欧米文献を読んで本書を書いた。イギリスの権威ある医学雑誌にガン検診の意味がないという論文を書いたプラサッド医師は「私たちは医療従事者に、ガン検診には限界があること、すなわち検診による害は確実だが、総死亡率を減らす効果はないという事実を認めるよう奨励したい。ガン検診を拒否することは、多くの人にとって合理的で賢明な選択であるかも知れない」と述べている。しかし、にも関わらず日本の企業、学校等では、法律によって、検査を受けものは罰則既定が適用されるそうだ。いったい、誰のための検査なのだろう。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2017年 『ワクチンで子どもは守れるか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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