てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800270252

作品紹介・あらすじ

世界初の女性エベレスト登頂者、故・田部井淳子の夫が初めて綴る、登頂秘話、家族の物語、ガンとの闘病。

感想・レビュー・書評

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  • 女性初のエベレスト登頂を果たした登山家、田部井淳子さんの生涯を、パートナーの政伸さんの目線でつづったエッセイ。
    政伸さん自身の生い立ち、淳子さんとの出会いと結婚から、淳子さんのエベレスト初登頂やさまざまな活動、病を得てからのことなど、当時の日記や書簡などをはさみながら家族でないと知りえない淳子さんの素顔を紹介している。

    先日淳子さんの『それでもわたしは山に登る』を読んだとき、驚いたのが、淳子さんにお子さんがいることだった。
    以前、女性の宇宙飛行士が初飛行から戻ってきたとき、夫がテレビの前で、自分がどれだけ我慢してきたかをぶちまけていたのが忘れられない。その夫婦がどのような生活を送ってこられたのかはともかく、家庭を持つ女性が第一線で活躍するときのハードルの高さをつきつけられた一件だった。

    淳子さんが活躍した時代、女性が子供を置いて長期間家を空けることは、その女性飛行士の時代より逆風がすごかっただろう、と想像できるし、同じく登山をする政伸さん自身が不満を持ったりしなかったのだろうか、ということも読む前の懸念だった。
    けれど、政伸さんの文章からは、淳子さんへの尊敬と誇り、愛情が感じられ、ああ、淳子さんはベストパートナーに恵まれたのだな、と勝手に胸が熱くなった。

    淳子さんと政伸さんは本当に平等なパートナーだったようだ。子どもがいて自分の時間が多くない二人は、カレンダーで先に書いた方の予定を優先する、というルールをとっていた。
    淳子さんが女性だけの登山を目指すようになってからは、淳子さんの予定が先に入ることが多くなっていたようだが、政伸さんは政伸さんで、淳子さんの意思を尊重しながらも、趣味のバイクなどを楽しんでいたようだ。
    若い頃、凍傷で足の指を切断した政伸さんは、自身の嗜好もあり、高山の登頂を目指すような登山からは一線を引いていたこともうまくいった理由の一つかもしれない。しかし何よりも、政伸さんが人間として淳子さんを尊敬していたことが大きいと感じる。
    エベレスト登頂の際の二人の往復書簡は、登頂直前の臨場感だけでなく、二人の家族に対する思いがあふれており、なんだかほほえましい。

    自分のやりたいことは決してあきらめず、意志の力をもって不可能を可能にしてきた淳子さん。そんな淳子さんを見守りながらも、自分が犠牲になるわけではなく、分担して家庭と仕事を両立してきた政伸さん。淳子さんの判断力を評価し、淳子さんがリーダーとなった登山の登頂率の高さを誇りに思う政伸さんがすてきだ。

    淳子さんが亡くなった後、哀しいというより、まだいるような気がする、という政伸さん。淳子さんの人間性あってこそだと思うが、自立したいい関係を続けられるこんなパートナーに出会えた淳子さんがうらやましい限りである。

  • 田部井淳子さんの『私には山がある』に続いてご主人の田部井政伸さんが書かれた『てっぺん』を読了。
    亡くなった田部井淳子さんの生き方についてこちらの方が詳細に書かれており愉しめました。
    クライミングで知合い結婚した当初は、ご主人の方が新婚時3ヶ月も家を空けてヨーロッパの2大北壁を完登したりでその筋では有名だったり。帰国後凍傷により両足の指を失ったにもかかわらず、また山に登ろうねって励ましてる淳子さんには寒心する。本当に山好きじゃなければ理解しえない感覚だと思いました。
    家のカレンダーにお互いの山行予定を書き入れて早い者勝ちでダブらないように、片方が山行っている時は、片方が家を守るようにしてたそうですが次第に奥様の予定が増えていきます。詳細な予定はお互いあまり聞かなかった様子ですがご主人は理解があり、予定をみて頑張ってるなっと応援してたそうで、そこに、エベレスト女子登山隊と書かれる日が来るとは想像もしていなかったそうです。

    お二人のエベレスト往復書簡とかも興味深く拝見しました。
    二人とも筆まめなんですよね。

    女性だけの登山隊でエベレストに挑むこと、これは凄いアイデアだと思うし女性が社会に進出する気運にも重大な意味があった訳だけど、本人はそんなこと考えていたのかと思うとそんな気がしなったりなんですよね。女同士で登れば体格も同じでペースもあうし気兼ねなくトイレもできるしとそんな感じだった様子なんです。
    女性15人の海外遠征となると当時のお金で4000万程かかったそうですがスポンサー集めとか実際の登山以上に大変だったんじゃないかと思います。
    マネージメント能力にも長けていた様子が伺われます。これも山に登りたい一心で得た能力かもっw
    山頂に立ったらそれで終わりではなく、さあ次は何処に登ろうかとゆう夢が膨らんで遂には7大陸最高峰登頂とかも女性初でやってしまうのだから。
    今では女性が活躍できる場が増えてますが田部井さんはその先駆けであり希望であり憧れのおばちゃんだったわけなんですね。
    そして、好きなことはなんでもしたいって結構欲張りで家事も、育児も、山登りも、諦める事なくこなしていたから凄い人だったんだ。楽しむことを最優先で行動してたんだっw

    様々な記録が更新されていく中で『女性初』とゆう記録は未来永劫彼女のもので墓場まで持って行ってしまったのだから楽しんだもの勝ちでズルいですよねw

  • 「淳子のてっぺん」に感動し、ご主人の著作があることを知りました。
    淳子さんの凄さをあらためて確認しました。特に晩年、病気と付き合いながらの活躍は凄すぎです。それも、支えあっていた政伸さんあってのものでしたね。お互いを尊敬し、思いやっている感じがすごく伝わりました。簡単なようでなかなか難しいこと。

    ちょっと、山登り、いや、ハイキングからかな。計画してみようかな。日和田山~物見山コース!

  • 唯川恵『淳子のてっぺん』つながりで読む。一時代をリードした稀有なアルパインクライマーである夫婦とも、登山家ではなく“登山愛好家”“山屋”と称しているところが謙虚で好感が持てる。田部井淳子さんが生涯を山屋であり続けた裏には著者の献身的な支えがあったことに、たぐいまれな夫婦愛を見た思いでした。 運もありますが、私の知ってる限りでも登山史に残る実績を残した山屋で還暦を過ぎて死ぬ間際まで山を登り続けた人はそんなにはいないです。困難なルートに挑み続けた登山家たちのほとんどが山に逝っていますね。

  • おもしろかった。
    田部井女史の本を読んだことのある人はぜひこの本も読んでほしい

  • 田部井淳子さんはとても良い人と結婚したのだなぁと思った

  • てっぺん
    我が妻・田部井淳子の生き方
    田部井政伸

    ∞----------------------∞

    唯川恵さんの小説や田部井淳子さんの著書を読んでいるので、ほとんどの内容を知ってるつもりだったけど、それだけじゃなかった。

    エベレストにいる妻との手紙のやり取りがすごく良かった。「妻がすごく筆まめ」と言いつつ、政伸さん自身もかなり手紙を書いてらっしゃる。

    また、エベレスト登頂以降の話や山以外のことも多く書かれてた。
    南極とか行きたいところ、やりたいことは、実現の可能性を大きくするためにも人に伝えた方がいい、とかはためになる。縁って大事だよね。
    妻がインドで登山、娘はアラスカにホームステイ、自分と息子はバイクでアメリカ大陸横断。家に誰もいない。
    田部井さん(夫)はきっと仕事ができる人だけど、多く休むので会社は評価に困ってた。
    素人だらけのシャンソンリサイタル。

    未来永劫、破られることの無い記録っていうのもすごいな。それを聞いて「妻」や「お母さん」ではなく「淳子」と呼んであげれば良かったっていうのが切ない。淳子さんには充分伝わってるはず!

    2023/04/21 読了 (図書館)

  • 夫婦で登山家というものが、どういう事か。こんな出会い。ありそうで、なさそうで。子供ができると、段々山から遠ざかる。でも、この夫婦は、極めていく。

  • 真に山を愛している、素敵なご夫妻。
    こんな夫婦に憧れる。

  • 文書はイマイチだか、よくまとまっており、読後感は良い

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