あなたのいない記憶 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800277572

作品紹介・あらすじ

約十年ぶりに再会した優希と淳之介。旧交を温める二人の会話は、二人の憧れの人物「タケシ」の話になった途端、大きく食い違い始める。タケシをバレーボール選手と信じる淳之介と、絵本の登場人物だという優希。記憶に自信が持てなくなり、戸惑う二人は心理学者の晴川を訪ねるが、どちらの記憶も「虚偽記憶」-他人の"明確な意図で"書き換えられた嘘の記憶だと告げられる。記憶をめぐる、恋愛ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーで泣かされました。

    新見優希が東京の大学に入学し、高知の絵画教室で小学生の時一緒だった三年生の岡本淳之介と偶然再会します。
    教室の寿美子先生と息子のタケシのことを話すと、優希はタケシのことをチェスの選手で絵本の主人公のナガサカ・タケシだと思い込んでいて、淳之介はバレーボールの日本代表の小田島健志だと思っていたことがわかります。
    それで二人は教室の生徒で中学生だった、吉江京香を探し出し連絡をとってみました。京香はタケシの幼なじみでタケシは永坂剛と言う名のニートだと答えます。


    以下ネタバレしていますのでお気をつけください。


    京香のカウンセラーの晴川あかりに相談するとそれは虚偽記憶ではないかと言われます。虚偽記憶とは何らかのタイミングで勘違いして、それがそのまま定着してしまったものです。
    晴川先生は「犯人は剛くんでしょう」と言います。
    もしそうだったとしたら、何のために二人の記憶を改ざんしたのか…。

    京香は剛と幼い頃、結婚の約束をした幼なじみでした。京香は絵が上手く、とても大切にしている自分で描いた絵がありました。
    そしてアトリエが火事になり、剛は京香の絵を火の中に飛び込んで取りに行き、しばらく入院したあと、東京で単身赴任をしていた父親の所へ引っ越してしまったのです。

    大人になった京香はプロポーズをしてくれる恋人もいましたが、ニートで引きこもりになってしまった剛が忘れられず、ときどき剛の部屋の窓を覗いたり、メールを送っていました。
    そして優希と淳之介、京香と晴川先生は、剛の謎を知るために寿美子先生の元を訪ねます。
    剛の秘密を寿美子先生から聞いた京香は恋人からのプロポーズを受けいれますが、最後の最後に剛の秘密と二人のとった行動には泣かされました。
    とてもせつない物語でした。

  • よく練られた小説、と言う意味では面白かった。最初に提示される謎が、後半見事に回収される様は、上手い構成。最後は一気読みとなる。しかし、それが仇になって、出来過ぎだ小説感は否めない。正義の味方的な先生の説明が、ロマンティックな恋愛小説感の足をちょっと引っ張るような。
    そして最後少し戻って、最後の最後は、ご想像にお任せ。んー

  • 幼馴染の2人の物語という観点ではとても感動的でよかった。
    そこに虚偽記憶ということが絡んでくるのだが、とても話が長くて、遠回りしながらようやく最初の地点に戻ってくる、といった感じがする。
    そもそもそんなに簡単に他人に虚偽記憶を植え付けることができるのかも疑問。
    それなら逆にトラウマとか嫌な記憶を持っている人に、良い記憶を植え付けることもできるだろう。
    あまりに凝りすぎた話だなと正直思った。

  • いわゆる記憶が書き換えられ、実際に起きたことを探って行く。その根底にあるものは男の意地と愛ですね。めっちゃ良かった。記憶あるいは脳に興味あるからこそ、惹かれた作品でなおかつラブストリーとして見たら泣ける。

  • 悲しい話だった。
    SFでもなく、事件でもないけれど、人の行動ってミステリーなんだよなぁ。なんとなく湊かなえのような。
    主要登場人物の3人より、途中で出てきたあかり先生の存在感がすごい。彼女だけでシリーズ化できそう。
    ここに書かれていないその後はどうなったんだろう?と、想像せずにはいられない。


  • 京香は引っ越しで離れ離れになった幼馴染
    タケシヘの想いをずっと抱えていた
    どうしてタカシは京香に会ってくれないのか?
     
    突然、当時を知る淳之介と優希から
    会いたいと連絡があり
    話は複雑に、、、

    カウンセラーの晴川の元へ訪問をしながら
    それぞれが、各々の記憶の中の
    タカシを知りたいと足跡を辿ってゆく

  • ちょっと難しいストーリーだった。

  • 子供の頃の記憶が他の人と食い違っているお話

    絵本に影響を受けてチェスに傾倒している新見優希は、大学に入学した際に小学生のときに同じ絵画教室に通っていた岡本淳之介に出会う
    旧交を温める中で二人は記憶の食い違いに気づく
    淳之介は絵画教室の先生の息子のタケシにバレーボールを教わった事をきっかけにバレーの道に
    優希は架空の登場人物のタケシがチェスで活躍する絵本を繰り返し読んできた事でチェスに傾倒したが、先生の息子のタケシの記憶はない
    二人は当時の上級生だった吉江京香に連絡を取り、心理学の専門家である晴川あかりの元を訪ねたが、自分たちの記憶が作られた虚偽記憶であると指摘される

    なぜ虚偽記憶が植え付けられたのか?誰がしたのか?なぜそんな事をしたのか?
    その真相に隠された真実とは……


    他の人も指摘してるけど、記憶操作がうまく行き過ぎているかな
    理論上は可能なんだろうけど、偶然うまく行ったにしては出来すぎ

    ただ、謎の真相を知った上でどうするかの選択が描かれてあるのはよい
    新たな課題に対してどう向き合っていくのか、区切りをつけるのか?ってか、剛の最後の行動はどんな意図があったのかね?
    今後の成り行きが気になるなぁ
    ま、多分寄り添う展開になるんだろうけどね

    謎解きそのものではなく、その先の方が大事というお話は好き



    ソースモニタリングエラー(出来事の内容は覚えているが、その出来事をどこで体験したのか特定できなくなる心理学的現象は確かにあるよね
    子供のときの話を親から聞かされた結果、自分でその記憶を補完している面があるからなぁ

  • なんか難しかったなぁ。最後は良かったけど。

  • ミステリィの意外性を,日常生活の曖昧性に溶かし込んだら,どんな作品に仕上がるのか.日常ミステリィを土台にしながらも,日常と非日常の溝を描写する.今回のテーマは心理学.読了感は悪くないが,世界の構築段階に少しばかりの冗長さを感じる.

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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