デルモンテ平山の「ゴミビデオ大全」 (映画秘宝セレクション)

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800311405

作品紹介・あらすじ

珍作、迷作、そしてその存在すら定かではない幻の作品の数々!1980年代のビデオ・バブル期にリリースされ、そして人知れず消えていった"ゴミビデオ"の数々!

感想・レビュー・書評

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  • 小説家平山夢明が無名時代に「デルモンテ平山」名義で1980年代に雑誌に書き散らしていたスカムビデオ紹介文をまとめた本。紹介されているビデオは確かに「ゴミ」だが、平山の紹介文も「ゴミ」(ホメ言葉です)。
    でも、不思議と読んでるうちに紹介された作品を観たくなる。DVD化されているのであれば、友人を集めて鑑賞会を開いて突っ込みを入れながら観るのもまた一興である。

  • 若き日の平山夢明氏の苦闘に涙して笑え!

    日本推理作家協会賞短編賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞などを受賞、今や人気作家の平山夢明さんが、まだ20代だった1980年代に『週刊プレイボーイ』誌でやっていたお仕事。世に氾濫するゴミみたいなビデオというかもろゴミと言い切っちゃって問題一切ないようなビデオをはちゃめちゃにレビューするというコーナー。登場するのは『セックス発電 男女100人絶頂物語』『ハッピー・キョンシー女子高生てんこもり』『彼女がトカゲに喰われたら』『死刑執行ウルトラクイズ おだぶつTV』『必殺ムーンウォーク拳キョンシーマン』『ジェイソン地獄の綱渡り』『快楽美女集団 ボイ~ンってやっちゃうよ』『グルメホラー 血まみれ海岸・人喰いクラブ 地獄のシオマネキ・カニ味噌のしたたり』などなど、タイトルを目にしただけで都会生活の空しさを感じ、田舎に帰りたくなる映画ばっかりです。ごくごくまれに、『地球防衛少女イコちゃん 大江戸大作戦』とか『バカルー・バンザイ/8次元ギャラクシー』とか『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』みたいな<b>メジャー映画</b>が混じってるとびっくりします。
     それにしてもまあ、世の中には信じられない映画があるものです。オカマのゾンビが新婚の夫の下半身を狙う『ゾンビ・ハネムーン』とか、殺された妊婦がゾンビになってツワリに苦しみながら人を喰う『妊婦ゾンビ』とか、動物園の飼育係が美女を次々にカバに喰わせる『カバチョンパ 食人カバの恐怖』とか、インポになったプレイボーイが電気治療を受けて電気人間になってしまいセックスしようとしたら相手の女が感電する『安全失禁電撃ボビー!』とか、思いついちゃった人、人生でどれほどつらいことがあったのかなー、と心配になります。
     それらを紹介する平山さんの筆致が素晴らしい。もうはじけまくり、走りまくり! この本に関しては「のんびり熟読する」なんておすすめしません。全盛期の古舘伊知郎のように、とにかくハイテンションの早口で読み上げてゴミビデオのワンダーランドに耽溺するのが正解! 

    > (前略)主演があの『卒業』のキャサリン・ロスと聞いて買ったはいいが、単なるスペル違いの赤の他人と判明、いまさら返品もできずに全員の血がそこですでに凍りついたといういわくつきの究極ホラーだ!
    > ──『殺人豚』

    >  大ヒット作『ロボコップ』そのまんまの設定に、自国の人気者キョンシーを、こともあろうに麻薬密輸団が霊幻道士を雇って闘わせるという東大理Ⅲ青年が二日酔いしながら考えたようなゴリ押しの話もさることながら、キョンシーの手から発射される花火ロケット弾や、ただの防火服を着ただけの“ロボコップ”には感動脱帽雨アラレ、しかも唐突に登場する、逃げるオッパイプリプリ女とくれば、もう製作者は“大阪商人+リクルート+トロマ”魂に燃える香港一のプロデューサーにちがいありません。まさに国境を超えた矛盾の嵐。
    > ──『ロボハンター 霊幻暗黒団大戦争』

    >  なにしろ東芝のパルックがUFOとして堂々と胸を張って登場するのですから、せっかくの休みをなにか面白い物でも観ようと500円玉のひとつでも放り出して借りたのがこの映画だったという方は前世で誘拐殺人でもした報いを受けたのだと諦めましょう。
    > ──『オレだって侵略者だぜ!!』

    >  やはりだんだん寒くなってくると、“鍋の食いちらかし”みたいなこの手の作品が懐かしい季節になってきましたね。
    > ──『ベイビー・ブラッド』

    > (前略)同じ役者が何度も出てきて殺されるのが『仁義なき戦い』のようで好感が持てます。
    > ──『悪魔の毒々ゾンビーズ』

    >  居間を築地の魚市場に変えるのが趣味という“変態よいこ団”。まことちゃんもビチグソチビル面々が繰り広げる健康リョーキの殺人パレード。“全裸ワーキャー女頭蓋骨粉砕ノーミソ啜り”や“目玉くり抜きおてだま”“ストローチュルチュル延髄食い”“あかんぼ暖炉投げ込み”などがこれまでかと走馬灯のように画面に現れ、“よいこ団”のしたたり度を見せつけてくれます。
    > ──『悪魔のしたたり』

     どうですか、この豊富なボキャブラリーとユニークな比喩表現の数々! ちょくちょく意味が分かんなかったり、「それ、何かちょっとおかしいんじゃ?」と首を傾げてしまうところもあるんですが、考えてはいけません。考えるな、感じろ! どっちみちこんな映画作ってる人たちだって、何も考えてませんから!
     この本は二度、楽しめます。一度目はストレートに読んで平山さんの絶妙の文章で素直に大笑いしましょう。二度目はこんなビデオを観ながら原稿を書いていた20代の平山さんの、「ちっくしょー、またこんなゴミを観ちまったぜ! こんなのどうやって紹介すりゃいいんだよ!? いやいやめげるな自分! これは仕事だ! 何としてでも面白い文章に仕立て上げて読者の笑いを取るのが、俺に課された使命じゃないか!」と、七転八倒、血の汗流し涙を拭きながらまだ見ぬ明日に向かって奮戦する姿を思い浮かべながら読みましょう。きっと希望が湧いてきます。
     ところで関係ないけど、『猟獣人ヒューモンガス』(1981)と『獣人ヒューアニマ』(1989)って、あらすじ読む限りでは同じ話のように見えるんですが、原題も監督も公開年も違うんですよねえ。リメイク? それともパクリ? でもこんなのわざわざリメイクする必要あんの? 謎です。
     まあ、こんな謎を解いても友野詳ぐらいしか感心してくれやしないだろうからやりませんけど。

  • 10年に渡る”ゴミビデオ”レビューは圧巻。よくぞこんなモノを10年も。。。独特の語り口と、予想を裏切るレビューが可笑しくてたまらない。観てみたいなという気にさせられるものもチラホラと。面白かったです。

  • マイナーで今や見ることはほぼ不可能なバカ映画ばかりかと思えばそうでもなく、東宝怪獣映画なども出てくる。平山夢明の文才でとんでもない映画に見えてくる。

  • 2018/3/18購入
    2022/11/23読了

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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