棋士とAIはどう戦ってきたか~人間vs.人工知能の激闘の歴史 (新書y 310)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800311719

作品紹介・あらすじ

二〇一七年四月一日、現役タイトル保持者が、はじめてコンピュータ将棋ソフトに敗れた。AI(人工知能)が、ついに人間の王者を上回ったのだ。それは予想だにしない奇跡だったのか、それとも必然だったのか?コンピュータ将棋の開発が始まってから四十年あまり、当初、「人間に勝てるはずがない」ともいわれたコンピュータ将棋は、驚異的な進化を遂げて、いま、人間の前に立ちはだかる。この間、棋士は、そしてソフト開発者は何を考え、何をめざしてきたのか?そして、人間とAIは、どのような関係へと向かうのか?将棋界の最前線を十数年取材してきた将棋記者の、渾身のルポルタージュ!

感想・レビュー・書評

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  • 昨今はとりわけAI関連のニュースが世間を賑わせていますが、将棋の世界でも藤井四段の活躍と並び、棋士と将棋ソフト(AIです)の対決や不正疑惑など大いに耳目を集めているかと思います。
    私は自分で将棋を指すのはからきし弱く、もっぱら観戦の方が好きでして、スマホで毎日将棋ソフト(たぶん全然強くないソフト)を相手にゲームを楽しんではいるものの、一向に自分が強くなる気配はありません。(>_<)
    ですので、将棋ソフトが強くなった、棋士の実力を大きく引き離したと言われても、もともと自分が弱いので実感はできないのですが(笑)、棋士をばったばったと負かしたという話を聞く毎にすっげなー!と感心することだけはしきりです。
    棋界は天才の中の天才たちが集い、将棋という一点だけで誰が一番強いかと勝負を繰り広げている世界なので、その棋士たちをばったばったと負かすなんて尋常な棋力ではないわけですよね。

    今年(2017年)4月には、世界コンピュータ選手権で優勝したponanzaと叡王戦で優勝した佐藤天彦名人との間の電王戦で、事実上の将棋ソフトV.S.人間棋士の頂上決戦が行われましたが、将棋ソフト側が完勝の2連勝という結果となり、その実力の開きは歴然となってしまいました。
    もはや、将棋ソフトが指す手は人間の棋士には理解できなくなっているといい、以前だとソフトのバグにつけ込んだ「はめ手」や角不成といった奇手でようやく勝てるといった状態だったのも、そうしたバグはすぐさま改修されるため、最早、人間には手の届かない実力になっているといっていいでしょう。
    おそらく棋界の至宝である羽生善治三冠や渡辺明竜王といった棋士の最頂点でも将棋ソフトには一蹴されてしまうのが現実なのではないでしょうか。
    AIの中でもそうした将棋ソフトに使われる技術として、ディープラーニングの自己学習を重ねることでソフトを強くしているということですが、その材料となる教師データは将棋ソフト自身の対局を重ねることで、既に人間の棋士同士が行う2千年分の知識データを蓄えているとNHKの羽生善治三冠も出ていた番組で言っていました。
    囲碁においても昨年(2016年)、割とあっさりとGoogleのAlphaGOが、囲碁世界の最頂点の棋士をばったばったと負かしているので、こうしたゲームにおいては人間など現在のAI技術の足元にも及ばない存在になってしまいました。

    さて本書では、その将棋ソフト以前の機械V.S.人間の話から紐を解き、コンピュータ将棋がゲームを通じて進化し続けて次第に実力をつけ、将棋ソフトBonanzaが登場するに及びプロ棋士にも勝てるようになり、電王戦というイベントを毎年繰り返すことで、ついには人間棋士など及びもつかなくなったという歴史を綴ったものとなっています。
    とりわけ興味深いのは、そうした将棋ソフトを作成している技術者たちの取り組みと態度でして、もともと科学者や技術者が主体となっているためか、学術的向上心と勝負に対する清々しさが印象的でした。
    そしてそうであればこそ、将棋ソフトとの戦いをイベントにまで仕立てた当時の日本将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖との対決など、勝負の世界に生きる海千山千のプロの勝負師たちとの盤外戦も含めた対決はなかなかの見(読)応えがあったと思います。
    特に米長邦雄永世棋聖の策士ぶり、エンターテイナーぶりには大いに笑わせてもらいました。
    しかし、プロ棋士たちのそうした勝負の駆け引きや小細工(?)等をものともせずに、圧倒的な実力を持ってしまった将棋ソフト。
    これから棋界との関係はどうなっていくんでしょうね?
    もちろん棋士はソフトを研究に使い、ますます将棋界での技術革新は進んでいくとは思いますが、もはや将棋ソフトV.S.人間の図式が成り立たなくなってしまった以上、最強者を決めるという図式自体はお互いの領域に二分化されてしまうのでしょうか。
    羽生善治三冠が将棋ソフトと戦う図なんて、たぶん涙もので見ていられないのに違いなく、例えていえば白色彗星の超巨大戦艦にヤマトが突っ込んでいくようなものでしょうか。(←例えが古っ!)
    棋界においては人類に先駆けて、そのようなコンピュータとどう付き合っていくのか新たな模索が始まっています・・・。

  • もう少し、AIの技術や指し手の解説もして欲しかった。

  • 1

  • 僕はiPhone相手でも勝てないもんなぁ。コンピュータが強くなったわ。

  • 796||Ma

  • ダイヤモンド・オンライン

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    2017年8月14日 鈴木貴博 :百年コンサルティング代表


    この夏読みたい「仕事に役立たないが人生に役立つ」名著




    夏休みは読書をしたいというビジネスパーソンに、「ナナメ目線」で選んだ何冊かの本を推薦。ビジネススキルの向上には役立たないが、人生を見直すための参考になるはずだ

    夏休みと言えば「読書」
    ナナメ目線で選んだ必読書3冊+1冊

     夏休みといえば読書である。お盆で連休中の方の中には、この機にゆっくり本を読みたいと考える人もいるだろう。書店の店内を散歩しながら、この夏、読むべき本を探したいところである。そんなビジネスパーソンに向けて、私から「ナナメ目線」で選んだ何冊かの本を推薦したい。

     今回紹介するのは、直接ビジネススキルに役立つ本ではない。しかし、夏休みにじっくりとビジネスライフを考えるためにプラスになるものという観点から、ビジネス本ではない本を3冊、そしてビジネス本ではあるが決して短期間のビジネススキルには役に立たないであろうお薦めの本を1冊、紹介してみたい。

     ビジネスパーソンの中でも、たとえば「自分を少し見直してみたい」と考えている大企業の男性管理職に、この夏ぜひ読んでいただきたい本が『半径5メートルの野望 完全版』(講談社文庫、はあちゅう著)だ。なりたい自分と思い通りの生活を手に入れるために、自分の「半径5メートル」を探して見つけた小さい野望を少しずつ育てていくための指南書である。

     著者は、今日本の20代の若者から圧倒的な支持を集めているインフルエンサーの1人、はあちゅうさん(31歳)だ。

     基本的に多くの読者に推奨したい本なのだが、特に前述の推奨条件に該当する読者は、読む際にまず「ふたまわりも年下の女子から学ぶことなど何もないはずだ」と口に出してから読むことをお勧めしたい。

     念のために言っておくと、この呪文を唱えずに読んでしまうと、この本はただ読み切って終わりになってしまう。それほど読みやすいし、面白い。しかし呪文抜きだと、この本から学べる無数の「気づき」に気づかずに終わるだろう。

     はあちゅうさんのツイートを読めば、いかに多くの人が彼女の考え方に共感しているかがわかる。本書の中では共感できる話をそこかしこに見つけることができる。そしてその多くが、若者だけでなくおじさん世代のビジネスパーソンにも共感できる学びが多い。

     たとえば「感情も筋肉」というメッセージがある。筋肉は使わないと衰えるのと同じで、感情も日ごろから使っていかないと衰えてしまう。こういう話を聞いて「どきっ」としない中年読者は、ちょっとマズいかもしれない。

     ビジネスシーンの中では、感情を飲みこんで行動しなければいけないことが多々ある。対外的な場面だけでなく、職場の同期のような本来フラットであるべき仲間内ですら、本音を吐露できない場面は多い。組織ピラミッドの上に行けば行くほど、感情をコントロールする技術が大事だと言われるくらいだ。

     しかし、そうやって感情をコントロールしているうちに、感情の筋肉は衰えてしまうのだ。それはそのように著者に言われなければ、気づかないところではないだろうか。現代のビジネスパーソンは、自分の感情を吐露する力を気づかないうちに衰えさせているかもしれないのだ。

    「仕事は裏切らない実績です」
    心に響くはあちゅうさんの言葉

     また、著者は実に多くの場で、世の中に影響を与える言葉を発信していることで知られている。その1つのエピソードを紹介しよう。

     ある講演で会場から「あなたにとって仕事って何ですか」という質問が来たという。瞬間、彼女の脳裏には「夢」「責任」「人生の軸」「社会に還元できること」「生きている意味を与えてくれるもの」といった、色々なフレーズが浮かんだという。ここまでは私もよく体験することだ。

     しかし、そのとき彼女が瞬間的に選んで口に出したのが、「仕事というのは、裏切らない実績です」という言葉だったという。その上で彼女が発見したことは、「無意識に一瞬で選んだ言葉が、実は自分の感覚に一番近い」ということだそうだ。

     振り返って自分のことを反省すれば、同じように情報を発信する仕事を生業としていても、私はそこまで自分の発言を振り返ったり、そこから学んだりはしていないことに気づかされる。はあちゅうさんに影響力があるという事実は、そこまでの努力に裏打ちされているのだということに、改めて気づかされる一節である。

     著者であるはあちゅうさんの本質は「もがくひと」だと私は思う。少なくともこの本の中で著者が語っていることは、スマホとネットの社会の中でいかに著者がもがいてきたのかという話ばかりだ。そして、これほどもがいて行動して、初めて何かを動かせるようになるのが現代社会なのだと思う。

     インターネット以降の社会は、おじさんにとっては住みづらい社会だ。なぜなら、ビジネスの古い常識が通用しなくなっていくからだ。しかし、この世界で一見うまくやっているように見える若い人でも、ここまでもがいているのだということを、この本から理解することができる。それを学ぶだけでも、本書から得られることは十分に大きいのではないだろうか。

    何をしていいかわからない人は
    ぶらぶら歩きで生き方を見つめ直せ

     さて、1冊目の本が結局、ビジネススキルを振り返るための厳しい本だということでがっかりされた方のために、別の切り口のもっとゆるいナナメの本を紹介しよう。散歩の達人POCKETシリーズの『ほじくりストリートビュー』(交通新聞社、能町みね子著)である。地図で見つけた変な境目、細すぎる道、傾斜、行き止まりなど、街の「気になる風景」をほじくりまくるという内容だ。

     この本は「夏休みがやってきたのに、夏休みの過ごし方がわからない」ビジネスパーソンにぜひ読んでほしい。「そんなことはない。家族につきあって買い物や外食で毎日忙しく休日が充実している」という人にも、実は読んでほしい。なぜなら、夏休みの過ごし方がわからない人も、一見忙しいけれど自分らしい夏休みを過ごしていない人も、みな同じ「休みに何をしたらいいかわからない病」にかかっている恐れがあるからだ。

     人生90年時代だからこそ、人生の後半戦には長い長い「自分の時間」が待っている。そこで何をしたいのかを考えるには、夏休みはいい機会だ。本書の著者の能町みね子さんは、タモリと同じくぶらぶら街を歩く天才である。その能町さんが妙に気にかかって出かけてみた場所についてのエッセイが、この1冊である。

     本書は私の事務所がある百人町や新宿駅、かつて住んでいた市ヶ谷の大日本村(大日本印刷の社屋や工場が密集している一角)など、たまたま私が土地勘のある場所から始まるのだが、彼女の散歩における目の付けどころは常人とは違う。普段通り慣れていると思える街の中の異次元観、異世界を見つけるのが、能町みね子という人物なのだ。

     散歩という行為は、街を歩くことで過去に起きてきた様々な出来事に気づく行為である。それは、史跡・名勝のようなわかりやすい場所の歴史の話ではない。一見何も気づかずに通り過ぎてしまうような場所にこそ、埋もれてしまい、忘れ去られそうな市井の歴史が息づいている。

     この夏にそのことに気づかないと、数年後、その風景はすべて失われてしまう可能性もある。今学べる「街の歩き方」に気づかせてもらいながら、実際に同じ街を歩いてみることで、この夏、人生について何かに気づくことができるのではないかと私は思う。

     そして3冊目の本だが、今年最大の話題でありブームでもあるのが「将棋界」だ。藤井聡太四段の活躍や加藤一二三元名人の引退もそうだが、忘れていけないのは人工知能(AI)が棋士を凌駕したことである。その人工知能の黎明期からずっと棋士との戦いを見守ってきた著者が著した1冊が『棋士とAIはどう戦ってきたか~人間 vs.人工知能の激闘の歴史』(洋泉社、松本博文著)である。

     著者はある一件から、日本将棋連盟と距離を置かざるを得なくなった将棋記者である。その制約を逆手にとって、「人工知能の将棋プログラムと棋士との橋渡し役」という、一風変わった立ち位置を得ることができた。

     本書はコンピュータが弱過ぎて話にならなかった時代から、プロ棋士の方が逆に弱くなってしまった時代までの歴史を通じて、ソフト開発者と棋士がそれぞれ何を考えてきたのかをまとめたルポルタージュである。

     たぶんこの1冊を読むだけで、人工知能というものがなぜ今、世界で話題になっているのかが理解できるはずだ。そして、将棋でここまでできるということは、人工知能にはもっと先の世界があるということでもある。

    そのうち仕事自体がなくなる?
    夏休みに「今後の人生」を考える

     この夏読むべき本を3冊紹介したが、前述した『棋士とAIはどう戦ってきたか』とのつながりで、もう1冊お勧めしたい本がある。8月18日に発売になる『仕事消滅』(講談社+α新書、鈴木貴博著)である。

     人工知能がディープラーニングという50年来のブレークスルーを実現した結果、10年前にはあり得ないと思われていた人知の領域を人工知能が侵し始めた。その結果何が起きるかというと、人類が想定しなかったペースで我々の仕事は消滅するかもしれない。

     棋士を超えることができた人工知能は、業種が変われば、ファンドマネジャーを超えることも、数学者を超えることも、弁護士を超えることも可能になる。さらにその先には、「課長の仕事」のような一般的な管理職の仕事すら、汎用的人工知能という現在は存在しないAIが登場して、人間よりも有能に仕事をこなすという未来が見えている。

     実際、20年後には人類の49%の仕事が消滅するというレポートがある。もし現実にそのような時代になったら、自分はどう生き残ればいいのか。そのような未来を経営の専門家の観点から描いたのが本書である。

     すでにお気づきかと思うが、その経営の専門家とは私だ。本連載『今週もナナメに考えた』の読者の皆さんは、夏休みにはぜひ人類の未来をナナメに考えるために『仕事消滅』に興味を持っていただければと思う。以上が、「夏休みに読むべき3冊+1冊」である。

    (百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

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著者プロフィール

1973年、山口県生まれ。将棋観戦記者。東京大学将棋部OB。在学中より将棋書籍の編集に従事。同大学法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力し、「青葉」の名で中継記者を務める。日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継にも携わる。著書に『ルポ電王戦 人間 vs. コンピュータの真実』(NHK出版)。

「2015年 『ドキュメント コンピュータ将棋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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